未明のはずの4時は、
雲の厚い夕方くらいのほの明るさ。
こんな時間なのに、道路には
かなりクルマが出ている。
ここいらの地元のドライバーは
ウィンカーの存在には
気づいてないらしい。
思い付いたように、ひゅん、と
曲がったりするので
眠気が一瞬吹き飛ぶ。
前日立ち寄った小高い展望台へ。
茂った木々のあいだから、
赤い光線が漏れている。
眼下の島がやわらかい明かりに
すこしずつ染まる。
展望台を降りた路肩にクルマをとめ
松林の切れ目からおひさまをさがす。
ちいさな丸が水平線に浸かりそうに
浮かんでる。
海は暗く、丸の上に扇のような
赤い光がひろがっている。
カメラを構える。
シャッターを切る。
いろんな設定を変えて
角度も変えて
なんなら散策路を小走りで
撮りまくる。
おひさまはどんどんあがってゆき
海面に細く輝く帯をおとす。
撮っては画像を見る、を繰り返す。
肉眼で見える景色と、画像は
こんなにも違ってしまうものか。
あんなにちいさな丸なのに
ほんのすこし高くなるだけで
あたりがぱあっと明るくなる不思議。
夏の朝の匂いが心地よい。
港に移動し、島や船や桟橋の景色を
撮る。
だんなさまを呼び、ふたりでならんで
桟橋に延びた足長の影を撮る。
仙台へ戻り、ホテルであさごはん。
温野菜、サラダ、具をいれほうだいのおみそしる。
とてもおいしいだしまきたまご。
さんざん食べたあと、ふとみると
ずんだ餅が並んでるではないか。
食べたい。でもおなかいっぱい。
ふたつとって、ひとつはまるまる食べ
もうひとつはだんなさまに半分押し付けた。
ひとねむりしてから、クルマを返し、
広瀬通のカフェへ。
だんなさまがデパートにわたしを
ひっぱってゆき
お財布を買ってくれた。
誕生日プレゼント。
ホワイトハウスコックスの
真っ赤な二つ折り。
嬉しい。
それから、牛タン太助へ。
太助は行列ができていたが
お店のひとはまったく動じず
ゆるゆると働いている。
あんなに並んでるわぁー、なんて
笑ったりして、暢気なものである。
新婚旅行以来の再訪だが
あんまりよく覚えてない。
とろろはなかったんだっけか。
おつけものは白菜じゃなかったんだっけか。。
唯一見覚えあったのは
タンの凍りついたのでできてる
円柱みたいな塊。
そこからいちまいずつはがして
網で焼いていくので
柱がどんどん低くなっていく。
となりでだんなさまが、
うまい。。と唸りながら
わしわし食べている。
これもまあ、見覚えある。
というか、見続けている。
駅にもどり、お土産買って
新幹線に乗り込む。
夫とふたりで行動なんてムリ、と
会社の同僚たちはみんな言う。
わたしはたぶん、恵まれているんだろう、とおもう。
楽しかった非日常は
帰宅して即座に
洗濯物と格闘することで
夢の彼方へ去って行くのだった。