赤いトンボは数あれど、その中でもかなり優秀な鮮やかさだと思う。
ネキトンボとは根黄トンボ。
翅の付け根が黄色いトンボ、ということなのだろうが、どう考えても橙色以上にしか見えない。名付け親は未熟な個体しか見たことがなかったのだろうか。
その昔、私がトンボに目覚め始めた頃には比較的珍しいと呼べる種類だった。少なくとも図鑑にはそう書いてあった。
この色鮮やかさとともに地元で見られそうなトンボの中では憧れの一つであった。
ところが、これが個体数こそ多くないものの、意外にあちらこちらで見かけることに気がついた。
もちろん、珍しさが減ったからといってこの色合いが失われるわけでもなんでもないのだが、やっぱり残念に思ってしまったのを記憶している。
かなり移動する習性が強いようで、学校のプールでヤゴがたくさんとれたり、発生可能な水辺などない峠で姿を見かけることもあったりする。
このネキトンボもアカネの仲間なのだが、その昔、アカネ類はすべて卵で越冬すると図鑑に書いてあった。
ところがこのネキトンボは意外に真冬でも幼虫が捕れ、図鑑の記載というのはなかなかすべてに当てはまるものではないのだと、教えられたトンボでもある。