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「平成の開国」とは?、その歴史認識を疑う首相の施政方針演説

2011年01月26日 19時08分56秒 | Weblog
「平成の開国」とは?、その歴史認識を疑う首相の施政方針演説(オリーブ・徳山 勝)より

通常国会が開催され、菅首相が施政方針演説を行った。「平成の開国」「最小不幸社会の実現」「不条理をただす政治」の三つが、菅首相の掲げる国づくりの理念だそうである。

国民は、民主党が掲げた「国民の生活が第一」に一票を投じたのだが、その理念とどのように共存するのか分からない。

そもそも、一国の宰相が「最小」であっても「不幸社会」が存在することを認めること自体が解せない。

それはさて措いて、首相の言として新聞にはこう書いてある。(以下引用)

日本は、この150年間に「明治の開国」と「戦後の開国」を成し遂げました。

不安定な国際情勢にあって、政治や社会の構造を大きく変革し、創造性あふれる経済活動で難局を乗り切ったのです。

私は、これらに続く「第3の開国」に挑みます。過去にはない困難を伴います。
(引用終り)

言葉尻を捉える訳ではないが、にわか仕立ての理念だからボロが出る。

一昨年の政権交代を「明治維新」に比し「平成維新」と言ったので、「平成の開国」に比し「明治の開国」と言ったのだろうが、全く歴史知識に欠けている。

幕府が鎖国政策を止め、下田と箱館(現在の函館)を開港したのは、明治ではなく、1854年(嘉永7年)に幕府とアメリカが締結した「日米和親条約」である。

「日米和親条約」の4年後、1858年(安政5年6月)に「日米修好通商条約」が結ばれた。

これが「修好」の文字にはほど遠い不平等条約であった。

定められたのは領事裁判権(=治外法権)と日本の「関税自主権」のアメリカによる剥奪であった。

そして欧州列強とは、この不平等条約に準じて通商条約を結ぶことになり、欧米列強から押し寄せる商品は無関税、逆に輸出する国産品の関税は相手次第となった。

この不平等な日米修好条約を改正したのは1911年。

その後、列強との条約改正を完遂し、関税自主権を日本が手にするまで60年余を要した。

その陰には、多くの日本人が血を流した日露戦争、鹿鳴館での舞踏会など、明治の政治家の涙ぐましい努力があった。

この列強との間の不平等な「第一の開国」を知るなら、「平成の開国」などと軽々しく言えるだろうか。

菅首相の歴史認識を疑うのである。

昨年10月、横浜でのAPEC開催を前にして、菅首相は突如としてTPP(=環太平洋パートナーシップ協定)と言い出した。

TPP加入が「開国」と言うからには、「鎖国」があることになる。

日本は、自由貿易促進を主たる目的として創設された国際機関であるWTO(=世界貿易機構)加盟国である。

日本は、国際通商の面では、既に「開国」状態である。

何をいまさら「平成の開国」なのだ。言葉が違うだろう。

TPPとは、ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイの4カ国間の自由貿易協定。

ここにアメリカが、自国の「国内雇用の創出」と環太平洋諸国への「輸出拡大」という国益を求め、豪州などと共に加入し、アメリカ主導の協定を結ぼうと言うもの。

オバマ大統領はTPPで確か10%程度の雇用創出を期待していると述べた。

このアメリカの通商戦略だと言う認識を菅首相は持っているのか、甚だ疑問である。

TPP参加を言う者は、「TPPに加入しないと日本は世界の孤児になる」など、情緒的発言で、経済的得失・日本の国益を数字で示す者はいない。

それに対して、TPP加入に反対する中野剛志京大准教授は、日本を含むTPP交渉国のGDPシェアを示し、「TPPでは日本の貿易額は増えない」と述べている。

(GDPシェアは、アメリカ7割、日本が2割強、豪州5%、残り7カ国が5%)下記URL参照。

もともと菅首相は市民活動家として、また野党の議員として、自民党と財界の癒着、日米間の問題を攻めることで、その存在感を示してきた。

民主党政権になり、これまで距離のあった財界・米国が近くなった。

副総理として鳩山内閣が、アメリカによって瓦解されたのを見た。

そこで、自己保身のためには、アメリカに抱きつくのがベストだと考えたのだろう。

国益の見えないTPPの発端はそこにあると推測している。

菅首相にはもともと政治理念が無いから、促成栽培の「理念」を語っても、それを突き詰めて行くと、結局、何も残らない。

空き菅の所以である。機会があれば、菅首相が言う「不条理をただす政治」について、菅首相の存在そのものが「不条理」であることについて述べたいと思っている。

中野剛志:「TPPはトロイの木馬-関税自主権を失った日本は内側から崩壊する」
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_5.html

<徳山 勝> 

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