Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2019年 3月号 [ル・コルビュジエと世界遺産] | |
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2019年2月から5月にかけて行われた展覧会です。
タイトルから分かるように、ル・コルビュジエ(本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ)の「絵画から建築へ」移行する過程と、アメデ・オザンファンと共にキュビズム(立体派)を批判してピュリスム(純粋主義)を立ち上げる過程の両方を、混在させながらも要領よくまとめられています。
前者については、もともと建築に携わっていたル・コルビュジエが、絵画を中心としたピュリズムの時代を経て、絵画だけの枠には収まり切らずに、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面にわたった活躍を見せるようになる過程(やがて絵画そのものは発表しなくなりますが、その創作は続けられて、彼のインスピレーションの源になり、それが多方面の分野へ展開されていきます)がよくわかりました。
後者については、、アメデ・オザンファンから油絵の技術を吸収する一方で、建築の要素(作図的な理論)を絵画に持ち込み、ピュリズムの「構築と総合」の芸術を確立していく過程がよくわかりました。
もっとも興味深かったのは、彼が実作だけでなく、自分が編集した雑誌でその創作理論を展開していった点です(ル・コルビジュという名前は、もともとは雑誌に執筆した時のペンネームでした)。
そういった意味では、彼は建築や絵画などの芸術家であるだけでなく、それらの創作理論を展開する学者あるいは研究者でもあったのです。
日本の児童文学の世界でも、かつては安藤美紀夫や古田足日や石井桃子のように実作と評論(研究)の両方で大きな実績を残した児童文学者がいたのですが、現在では全く見当たりません(しいて言えば、村中李衣かな?)。