現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

少年詩と散文

2021-03-25 15:36:56 | 考察

 他の記事でも繰り返し紹介してきましたが、児童文学研究者の宮川健郎氏のまとめ(その記事を参照してください)によると、現代児童文学の特徴として、「変革の意志」、「子どもへの関心」と並んで、「散文性の獲得」があげられています。
 また、現代児童文学の出発に大きな貢献があったとされる早大童話会の「少年文学宣言(正しくは「少年文学の旗の下に」。その記事を参照してください)」においても、彼らが克服すべき対象はすべて散文系の作品群でした。
 このように、少年詩(ここで使っている少年という用語は、幼年、青年、壮年、老年と同様に、たんに年齢区分を意味しているので特に男の子向きという意味ではありません)は、現代児童文学の出発時から継子扱い(すみません。差別用語ですが、時代性を考慮して使わせてください)でした。
 しかし、1970年代までは、児童文学において確固たる地位を占めていたように記憶しています(1978年には、「少年詩・童謡への招待」という分厚い日本児童文学の別冊が発行されています)が、現代ではごく一部の有名詩人(まどみちお、谷川俊太郎など)を除くと一般にはあまり注目されていません。
 少年詩集の出版の困難さは散文の児童文学の本の比ではなく、ほとんどが自費出版や協力出版(発行する経費の一部(大部分?)を負担する)の形でしか発表されないので、一般読者の目に届くことの困難さは想像に難くないです。
 言うまでもなく、少年詩には散文以上に優れた言語感覚が要求されます。
 そういった意味では、散文よりも書き手の資質に負うところが大きいかもしれません。
 私自身の経験でも、大学の児童文学研究会の一年後輩に高校生の時から少年詩誌に参加していた人がいたのですが、彼の研ぎ澄まされた言語感覚と豊かな感受性には、とても努力だけでは補えないものを感じていました。


日本児童文学 2015年 12 月号 [雑誌]
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