1970年代から1980年代にかけて、圧倒的な人気を誇ったドリフターズについて考察した本です。
特に、最高50パーセント以上の視聴率を誇った「8時だョ!全員集合」の人気の秘密については、舞台美術や公開放送の様子まで含めて、詳しく論じています。
メンバーの中では、特にリーダーのいかりや長介と後期のスターだった志村けんにフォーカスしていて、二人の愛憎の関係を詳しく述べています。
非常に大量の資料を渉猟した労作なのですが、そこから浮かんでくるドリフターズやメンバーの像は、ファンでなかった門外漢(ドリフの番組は自分からは積極的に見たことはなく、家族などが見ているのを横目で眺めた程度)の私が想像していたものから大きく離れたものではなく、わりと平凡な結末でした。
ようは、ドリフターズは、彼らの先輩であるクレイジーキャッツのような個々の才能による成功ではなく、いかりやの強いリーダーシップのもとにつどったメンバーが、音楽のバンド(もともとは彼らはコミック・バンドでした)のようにアンサンブルで笑いを確立したもので、「8時だョ!全員集合」の成功は、コント55号のようなハプニングやアドリブではなく、徹底した稽古や準備で練り上げたもの(毎週三日を費やしていました)でした。
当時のテレビの状況(高い視聴率とそれに伴う潤沢な製作費)が、ドリフターズのスタイルとマッチして、あのような大掛かりなセットを用いた公開生放送のスタイルの成功を生み出したのでした。
ドリフターズは良くも悪くも大衆そのもので、その娯楽の提供に徹していて、大衆を方向づけするようなものではありませんでした。
著者はドリフターズをかなり過大評価しているようで、宝塚や大劇場を生み出した阪急の小林一三をたびたび引き合いに出したり、特に、志村けんを繰り返し「喜劇王」と持ち上げているのには、かなり違和感がありました。