現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

となりのトトロ

2020-08-30 09:47:42 | 映画

1988年公開の、言わずとしれたジブリのヒット作品です。

しかし、公開当時は、中編二本(同時上映は「火垂るの墓」)同時上映で、どちらも娯楽性も乏しいこともあって、興行的には不振だったようです。

 しかし、キネマ旬報の一位を始めとして各種の映画賞を受賞したため評価が定まり、さらにテレビで再三ノーカット放送(上映時間が88分なので、通常の放送枠で可能です)されて毎回高視聴率を獲得して、ジブリの年少者向けアニメの決定版になりました。

 この作品を評するのに、昭和三十年代前半の田園地帯(埼玉県所沢市周辺だと言われています)を舞台に、日本の原風景を描いたとよく言われます。

 たしかに、当時は高度成長時代が始まった頃で、日本人の大半が農民でした。

 一方で、作品が公開された1988年はバブル経済最盛期です。

 このバブル景気を当時支えていた四十代が、この映画のターゲットの観客である子どもたちの親の世代にあたるわけで、彼らの原風景である昭和三十年代前半の田園地帯を、自分の子どもたちと共有する働きをしたかもしれません。

 それから三十年がたち、彼らの多くは七十代になりました。

 私の住んでいる地域は、この映画が公開された頃の新興住宅地なので、ちょうどこの世代の人たち(多くは地方出身者)がたくさん住んでいます。

 会社などをリタイヤした彼らの多くは、近隣に畑や田んぼを借りて、いそいそと農作業に励んでいます。

 一方で、児童文学的な観点で言えば、この映画はすべての「大人」たちの原風景である「子ども」を、鮮やかに描き出しているとも言えます。

 残念ながら男の子の描き方は類型的なのですが、さつきもめいも、典型的なこの時期の少女と幼女を見事に描き出していると言えるでしょう。

 もちろん、トトロを始めとして、マックロクロスケやねこバスなどのキャラクターも、非常に魅力的なのですが。

 

 

 

 


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