1976年公開のアメリカ映画です。
言わずと知れたシルベスター・スタローンの出世作で、アカデミー作品賞や監督賞を受賞して、惜しくも主演男優賞はノミネートだけでしたが、スタローンを一躍ハリウッドを代表する人気スターにしました。
高利貸しの取り立て屋をやって暮らしている場末の三流ボクサーが、幸運にも世界チャンピオンに挑戦する機会を得て、根本から人生を立て直していくという、いかにもアメリカ人が好きそうなストーリーですが、企画を持ち込んだスタローン自身が売れない役者だったということで、二重のアメリカン・ドリームが描かれることになり、多くの人の共感を得ました。
日本でも大ヒットして、その年のキネマ旬報の外国語映画の1位(ファン投票でも1位)に選ばれました。
今見直してみると、練習シーンや試合のシーンは意外にも短く、人間ドラマがしっかりと描かれているのに感心しました(シリーズ物のパターンで、回を重ねるごとにそうしたシーンが増えたので印象が変わっていたのでしょう)。
主役のロッキーが、生きる目標をなくしたごろつきから、人生から逃げずに戦い続ける男に変身していったように、相手役のエイドリアンも、極端に内気な、自分に自信を持てない女性から、ロッキーを愛することに生きる喜びを見出した力強い女性に変身していき、男性観客だけでなく女性観客にとっても励ましになっています(ジェンダー観はやや古いですが)。
また、エイドリアンの兄のちゃっかりしているが気のいい中年男やロッキーを指導する口うるさい老トレイナーなど、脇役もベタながらしっかり描かれています。
それにしても、当時のスタローンの肉体は、若くて惚れ惚れとするような魅力に溢れ、それも映画の成功の一因だったことでしょう。