シェパード (角川文庫) | |
篠原 慎 | |
角川書店 |
ご存じのように、作者は、「ジャッカルの日」や「オデッサ・ファイル」などで知られる、犯罪やスパイや戦争など題材にした長大なエンターテインメント作品の大家ですが、この作品のように短編でもなかなかの切れ味を見せています。
ロンドンのシティに勤める小心者の初老の男が、ふと魔がさして売春婦と関係を持って、美人局に引っかかって脅迫される話です。
でも、実はこの小心者は、第二次世界大戦中は、「爆弾の魔術師」と呼ばれた爆弾処理班のヒーローだったのです。
その特技を生かして、ラストでは犯人一味を小包爆弾で吹き飛ばして、ハラハラしていた読者は溜飲を下げることができます。
この作品が書かれた1973年当時のロンドンの性産業がどのような状態だったかは知りませんが、万事に保守的な土地柄ですので、あまりに開放的な現代の日本のそれと比較すればずっと閉鎖的だったでしょうから、このような作品が成立したのかもしれません。