2017年7月29日に、日本児童文学学会7月例会において行われた発表です。
グリム童話、全211話において、貴金属(金、銀)、貨幣表現(財産、交換手段、価格表示などの価値を表す)、通貨(当時のドイツ語圏で使われていたいろいろな種類の通貨そのもの)が、どのくらいの頻度で登場したかを定量的に分析した非常に興味深い内容でした。
貴金属では圧倒的に金(黄金)で、実に約40%のお話に登場して(銀は約13%)、富や美や特殊性を象徴しているそうです。
洋の東西を問わずに、民衆の一番の願いは大金持ちになって(できれば苦労せずに)、今の苦しい生活から抜け出すことです。
その象徴としての黄金は、圧倒的な魅力があるのでしょう。
貨幣表現は、約32%のお話に登場して、一般的な価値を表現しているそうです。
通貨に関しては、約15%のお話で使われていて、そのお話の時代や地域によって違う通貨が使われるので、8種類(その他に貨幣そのものを表す表現も)が登場するそうです。
発表者が紹介してくれたように、貴金属、貨幣通貨に関して、定量的なインパクト(現代のお金に換算したらどのくらいの価値があったか)を読者に提示できたら、グリム童話の読みがかなり変わってくるかもしれません。
発表後に、発表者に手法を尋ねたところ、ドイツ語のテキストファイルを検索ツールにかけて該当する表現をピックアップし、手作業で補正したとのことです。
テキストがディジタル化されている現代では、このような定量的な分析が、昔よりもかなり容易になっています。
発表者は、児童文学ではなく、西洋史(建築や経済など)の研究者とのことですが、児童文学の研究者でも若い世代にはディジタル・リタレシーの達者な人が増えていると思われるので、日本の昔話や民話について同様の分析をしたら、おもしろい結果が得られるかもしれません。
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