豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

赤外線カメラで遭難者を発見

2009年05月18日 | 山を飛ぶヘリコプター
先日、静岡県内の山で行方不明になった人が、静岡県警ヘリに搭載されている赤外線カメラによって発見され、無事救助されたようです。

赤外線カメラ:昼も力発揮 県警ヘリ遭難者救助 体温感知、画面に姿くっきり /静岡
毎日新聞 2009年5月14日


昼間とはいえ、樹林帯の中にいる遭難者を発見するのは容易ではありません。今回の救出劇では、わずかに見えた遭難者の衣服を肉眼で発見した後、赤外線カメラによって遭難者であると確認できたようですね。


この装備があれば昼間でも夜間でも遭難者の発見に役立つと思うのですが、実際の運用はどうなんでしょうね。赤外線カメラとかナイトビジョンがあれば夜でも自由に飛び回れる印象がありますけど、それなりに苦労はあるようです。以下参考URL

夜間暗視装置/SKY MONOLOGUE
ジャーナリストによるナイトビジョンのインプレ

消防・防災・ドクターヘリを紹介するコーナー
埼玉の防災ヘリ「あらかわ」について。赤外線カメラとナイトビジョンを装備している。

ヘリコプター墜落…雲霧竜門山で山が見えなかった可能性②
ナイトビジョンを装備したヘリコプターが夜間飛行中、山に激突した事故



赤外線カメラには画角がありますから、視野はそれほど広くないはずです。また人間は体温があるのでくっきりわかるでしょうが、山の地形までくっきりわかるわけではないので、夜間飛行が楽勝になるとまでは言えないでしょう。

夜間の捜索はできても、その場でピックアップというわけにはいかないでしょうね。進歩は著しいと思いますが、過剰な期待をするのはいけません。例えば私が経験した(たぶん)50回弱のレスキューのうち、ヘリコプターによるレスキューができなかったケースはほとんどありません。が、フライト1発で遭難者を運んでいってくれたこともそれほど多くないです。急変する気象条件や風、地形など、昼間であっても山岳フライトには難しさがあります。それが夜間であれば、なおさら難しいでしょう。

※もっと細かく書きますと、山岳救助の場合、山の斜面や狭い谷間に接近しなければならないケースが多くなります。パイロットはヘリのローターが斜面や樹林にヒットしないかどうかを常に心配せねばならず、同時に下方も注意するわけですから、海面だけ心配すればいい海難救助とはかなり違うと思います。ですから、夜間に山岳救助をしようとしても、よほど条件に恵まれていないと危険な気がします。






ところで、上記の報道では「警察庁が静岡県警を含む全国10の警察本部に配備した」となっていますが、いったい、お値段はナンボなのでしょうか。静岡県議のブログに、気になるお値段が書いてありました。

県内視察2日目/中谷たかじどっと混む


機体が5億6000万円なのに、カメラだけで1億2000万円ですか。いいお値段ですなあ・・・・・・・
全国すべての県警ヘリに導入できない理由がわかりました。

5 コメント

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Unknown (やな)
2009-05-18 16:52:03
ま、現実的な話、安全な高度から赤外線で(遭難者の)存在を探知し、翌朝ピックアップ、ってとこでじゃないでしょうかね。。

軍隊ならなりそうですが@夜間救助
Unknown (ons)
2009-05-18 17:11:51
ナイトビジョンはヘリパイ専用のものじゃないですからねぇ

気流などの点では山岳は困難な空域ですが、波に揺られる船舶への接近というのは山岳と同等な困難さがあると思いますよ。
イカ釣り漁船のように多数の投光器を使えばなんとかなるかもですけど 夜間の巡航が大変でしょうね。

赤外線カメラのお値段、県警ヘリの場合は赤外線・ノーマルの切り替えができ 高望遠レンズと取り付け費用も込みでは?
追記 (ons)
2009-05-18 17:28:02
今の機材水準だとピックアップより 夜間巡航の方が困難でしょう。
ローターにあたる程近いものは照明の増強で視認性があがりますが、稜線やらを越えながら現場まで飛ぶと引用記事みたいな危険が。
のんびり飛べば大丈夫なんでしょうが…

ちなみに、以前触ったNVGは茂みにいる人間がよく見えましたが、ヘリから行方不明者を探せるほどの見え具合ではなかったです。
やっぱり上等な赤外線カメラが有効でしょうね。
お久し振りです (山歩き初級者)
2009-05-19 02:31:22
自分は若き日に国防を担う某特別国家公務員でしたが、

10年以上前に個人装備用の赤外線スコープで、夜間でも昼間のように見えました。


体温等までは判別は出来ませんが、夜間や暗い場所での捜索では効果を発揮しそうです。
ただお値段は一台で200万円ほどです。でも、ヘリ用に較べるとかなりオトク?ですね。
Unknown (bongo-pete)
2009-05-19 11:44:27
やな様

夜間の捜索ができるようになっただけでも、かなりの進歩でしょうね。とはいえ、昼も夜も飛ぶとなると、パイロットにかなり負担がありそうで・・・・・

ons様

海難救助のヘリについては加藤寛一郎氏の著作で読んでおりますので、だいたいのことはわかります。誤解しないでいただきたいのですが、別に海難救助は楽、と言っているわけではありません。ただ海難では夜間の悪天候時にレスキューができて山岳だと難しい理由が、地形などの条件にあるというだけのことです。

山歩き初級者様

ずーっと昔、サ○イバルゲーマーだった頃ですけど、個人用の赤外線スコープとかナイトビジョンがめちゃ高額なお値段で売られているのをコン○ットマガジンで見た記憶があります。