たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

「能力社会」の誤謬 <暴力、パワハラ続出のスポーツ界 「服従の構図」どう変える?>と<劇団四季 男性俳優が飛び降り重傷>を読んで

2018-09-06 | スポーツ

180906 「能力社会」の誤謬 <暴力、パワハラ続出のスポーツ界 「服従の構図」どう変える?>と<劇団四季 男性俳優が飛び降り重傷>を読んで

 

今日は朝から和歌山に出かけ夕方事務所に帰ってきました。台風の影響か少々混み合っていて渋滞が続き、少々疲れました。裁判自体よりドライブが結構こたえるものです。

 

それでも昨日でなくてよかったと思います。暴風で車が飛ばされるか、あるいは横揺れなどで他の車や物とぶつかるおそれもありましたね。ニュースでは横転している車がいかに多かったか、ほんとにすごい台風でした。

 

昨日関空の被災について書きましたが、今朝の毎日は何面も使ってかなりの情報を提供してくれましたので、補足してもよかったのですが、ま、これから本格的な調査があり、より科学的検証的なものが行われるでしょうから、それを待ちたいと思います。

 

他方で、弱り目に祟り目ではないですが、北海道で震度7の地震、これもまた自然の脅威を見せつけられた思いです。<毎日写真記事>には土砂崩れというか、山体崩壊のような状態の写真がたくさん掲載されています。

 

ところで今日は、昨日の夕刊記事<特集ワイド暴力、パワハラ続出のスポーツ界 「服従の構図」どう変える? どんな人間を育てたいのか?教育の視点が欠落>を踏まえて、少しスポーツ界の「服従の構図」というものを考えてみたいと思います。

 

まず記者の鈴木梢氏は<体操、アメリカンフットボール、レスリング、ボクシング……。暴力やパワハラなどの不祥事が絶えないスポーツ界で浮かび上がっているのは、権力を盾に選手を黙らせる「服従の構図」だ。>として、<このような体質を変革するには、どうしたらよいのか。>と問いかけます。その解について、女三四郎と言われた山口香氏と、組織から一歩離れたアウトサイダーのような立場から為末大氏の意見を採り上げています。

 

山口氏は、まず暴力を強く否定しています。<「いくらコーチに熱意があっても、暴力は許されるものではありません。今のスポーツ界のスタンダードでは、だれが通報しようと、利害関係者がどう感じていようと、殴るという行為はアウトです」>

 

それ自体は正論でしょう。ただ、暴力といってもいろいろありますし、暴力以上に被害者側に甚大な心的被害を与える行為もあります。それはたとえば高齢者や障害者に対する虐待行為の多様な例があるとおり、スポーツ界でも暴力の問題性を強調することで、他の問題行為を見過ごしにするのであればかえって問題の本質を見失うことになりかねないと思います。

 

むろん山口氏が取り上げた宮川選手の記者会見の内容については、同選手の意見の詳細は知りませんが、多少問題があったと思います。ただ、山口氏は、同選手がコーチの暴力を認めつつ、パワハラとの認識を否定し、他方で、協会幹部のパワハラを主張したことを問題にしているようです。同氏は、<スポーツ界における暴力をいかなる理由があっても認めない。>立場で、<児童虐待と根が同じと考えているからだ。>というようですが、疑問です。同氏は、親が子に暴力を振るい、しつけと主張した例を取り上げています。しかし、問題の類似性は認めますが、競技スポーツという組織構造とは別次元の話ではないでしょうか。

 

そもそも児童虐待にいう「虐待」は、多様な形態があり、むろん暴力も含まれますが、より深刻なのは食事を与えないとか、監禁するとか、差別的・侮蔑的な言動などいくつもあります。暴力は見えやすいですが(第三者に知られないところでの暴力もありますね)、残らない・見えにくい言動こそ注意する必要があるように思うのです。しつけと言ってどんな言動をとってもいいとしたら、それこそ問題ではないでしょうか。暴力を否定することは正しいと思います。しかし、それだけに着目し、パワハラとか虐待を軽視すると、「服従の構図」というものがより根付いていくおそれがあると思うのです。

 

為末氏は、その点、冷静に観察しているようにも見えます。パワハラの問題として取り上げています。選考基準が明快な競技とそうでない競技でパワハラの可能性が異なり、後者に怒りやすいというのです。

 

<明確なタイムや順位を競う陸上や水泳は実力の差が明白なので、代表選考に私情を挟みにくい。体操やフィギュアスケートなどの得点競技や、監督の裁量権が大きい集団競技は、選考基準が曖昧なので権力が集約されやすい。アメフットは競技特性上、選手は個人を犠牲にしてチームに貢献しなければならないので、軍隊と構造が似ていて、意識しないとパワハラが生まれてしまう。>なかなか説得力ある指摘です。

 

その根源について、山口氏は成功体験としての64年東京オリンピックを上げています。

<源流は1964年、金メダル16個を獲得した東京五輪にあるという。「環境整備が不十分な中で世界に勝てたのは努力と根性のたまもので、理不尽なしごきや体罰もメダルが取れれば美談になる。高度経済成長で右肩上がりの日本には社会全体に根性論があり、成功体験につながったわけです。それが時代の生き方にも通じるから、容易には否定できない。今も一定の世代に古き良き記憶として染みついていると思います」>

 

そうかもしれませんが、もっと遡れば、戦前からの体質がそのまま継承され、競技社会の中で、指導のあり方や指導者像について、オープンな議論もなく、獲得したメダルの獲得数だけを追い求める結果主義に、競技会、政府、マスコミ、国民もすべて傾倒しすぎたのではないでしょうか。成果主義で、その手続、指導のあり方、人としての成長のあり方を問うてこなかったことに問題の根源があるのではと思うのです。

 

選手ファーストということが取りざたされ、まるでトランプ大統領のアメリカファーストもどきですね。たしかに指導者や協会組織がパワハラを行ったり、それを見過ごしたりしてきたに対して、選手の立場に立って指導や選考方法を改めること自体は結構なことだと思います。

 

しかし、為末氏が指摘するように、<スポーツとは勝つことがすべてだったのだろうか? スポーツを通じどのような人間を育てたいのか?」。一連の問題は教育の視点が欠落していることから生じている、との結論に行き着いた。>という人間教育の視点は重要だと思います。それは教育する側、教育を受ける側、そして競技をみる観客の側など、大局的な視点が必要ではないでしょうか。そういう視点からの見直しを検討してもらいたいと思うのです。

 

山口氏のまとめも的を射たものだと思います。

<「私たちの目標は自立して生きられる成熟した人間を育てること。年功序列だった時代とは違い、従順で文句を言わずに働く人が求められるわけではない。選手として暴力は嫌だと意思表示できることが重要なように、社会に出たら自分の身を守るために適切な判断をできる人になってほしい。メダルを取るためだけに強化費を使うのではなく、ロールモデルとなる人材を送り出し、社会に還元することも考えなくてはなりません」>

 

それにはどうする必要があるのか、オープンな場で議論をする組織になってもらいたいと思うのです。

 

ちょっと前段が長引きました。もう一つの毎日朝刊記事<劇団四季男性俳優が飛び降り重傷 パワハラか>は、スポーツ界同様に、芸能やエンタテインメントなどの世界でも、同様ないしはより深刻な問題が長い間等閑視されてきたように思うのです。

 

<故浅利慶太さんらが創設した「劇団四季」(横浜市青葉区)の男性俳優(27)が今年7月、同市内のマンションから飛び降り、重傷を負っていたことが明らかになった。劇団の看板俳優(56)からのパワハラが原因とみられ>るとのことです。

 

この飛び降り事件を見て、10年以上前に横須賀の港近くのマンションで起こった飛び降り事件を思い出しました。窪塚洋介という若い俳優が9階のマンションから転落して、頭蓋骨骨折とか重傷を負ったものの、命の別状はなかったということで、当時結構、その原因について騒がれていました。私も横須賀に住み、割合、ドライブに行く場所に近かったので通りかかったことがありますが、あの高さから落ちて無事だったのが信じられませんでした。

 

今回の俳優の飛び降りと似たような問題があったのかどうか、気になるところですが、これは不明のままで終わるのでしょう。

 

しかし、四季の俳優の場合、<同劇団などによると、自殺未遂を図った男性は人気演目「キャッツ」の主役級キャストを務めていた。稽古(けいこ)を指導していた劇団スーパーバイザーの俳優から他の出演者の前で叱責され、役を降ろされて悩んでいたという。>

 

こういった劇団などでは、指導者や先輩が当たり前のように大勢の前で、辛辣に叱責することを問題視する声は滅多に上がらないのだと思います。そのような叱責がその人を鍛えることになるとして、許容されてきたのだと思います。叱責が適切な場合もあるかもしれません。しかし、人によっては自死しかないと追い込まれるかもしれません。暴力以上に残酷な行為の場合もあるでしょう。

 

それはTV等の番組に登場するような人たちにもあるのだと思われます。

 

私たちの世界は、長くパワハラ・セクハラ、さらには差別的な言動を、長い間等閑視してきたように思います。最近の状況は少しずつ改善に向かっていることを期待したいと思うのです。

 

今日も少し長くなりました。このへんでおしまい。また明日。


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