たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

戦時下の性暴力 <ノーベル賞 平和賞にムクウェゲ氏とムラド氏 性暴力糾弾>などを読んで

2018-10-06 | 戦争・安全保障・人と国家

181006 戦時下の性暴力 <ノーベル賞 平和賞にムクウェゲ氏とムラド氏 性暴力糾弾>などを読んで

 

今朝の毎日記事は<ノーベル賞平和賞にムクウェゲ氏とムラド氏 性暴力糾弾>など多くの記事で、今年のノーベル平和賞を取り上げています。

 

二人が受賞しましたが、紛争下で武器として使われてきた性暴力の根絶を、それぞれ異なる立場で勇気のある行動や訴え、持続的に行ってきたのが受賞理由です。

 

私は以前から「性暴力」という言葉にどのような意味が含蓄されているのか、ニュースや映画などである程度イメージしつつ、明確に意識していなかったように思います。ノーベル平和賞を受賞することで、私を含めより多くの人がこの問題をしっかり認識して、少しでも根絶に向けた動きをする必要を感じます。

 

性暴力は、むろん強姦という旧刑法の用語とも、強制性交という新刑法の用語とも、異なります。より破壊的で被害者・家族・地域集団全体に恐怖を蔓延させる強力な戦時下の武器ですね。被害女子・女性の精神・身体に生涯残る傷跡を残しただけでなく、家族や地域からも阻害されるのですね。そのうえ、子を産ませ、兵隊ないし男性兵士の性奴隷として養成するというのですから、重要な戦力増強手段でもあるのですね。

 

Sexual violence”をそのままのように和訳したのが「性暴力」あるいは「性的暴力」でしょうか、英語・日本語、いずれも表現が実態に比べて手ぬるいというか、もっと強い表現でもいいのではと思ってしまいます。

 

そろそろ私の拙劣な解説より、記事を少し引用したいと思います。

 

上記記事では<ノーベル賞委員会は5日、今年のノーベル平和賞を、性暴力被害者の救済に取り組んできたコンゴ民主共和国の婦人科医師、デニ・ムクウェゲ氏(63)と、過激派組織「イスラム国」(IS)に性的暴行を受けた体験を語ってきた活動家でイラクの宗教的少数派ヤジディー教徒の女性、ナディア・ムラド氏(25)の2人に授与すると発表した。>

 

そしてその受賞理由について、<アンデルセン委員長は「戦争や武力紛争の武器としての性暴力」撲滅への貢献を理由に挙げ、「戦時下の性暴力を白日の下にさらし、犯罪者への責任追及を可能にした」と2人をたたえた。>

 

医師のデニ・ムクウェゲ氏については、

<「世界のレイプの中心地」と呼ばれるほど性暴力が横行するコンゴ東部ブカブに1999年、パンジ病院を設立。民兵らに性暴力を受けた4万8000人以上の未成年を含む女性を治療し、精神的なケアにもあたってきた。>

 

その治療した数の膨大さに驚きます。そのうえ、その性暴力被害の実態を公に訴え続けることは、身の危険にさらされることだと思いますが、それに屈せず<「性暴力は、コストの安い『戦争の武器』として使われている」>と実態を世界に示したことがようやく認められたのでしょう。

 

別の記事<平和賞 ムクウェゲ氏とムラド氏の授賞理由>では、委員長の上記指摘に加えて、

<・生涯の多くをコンゴ民主共和国(旧ザイール)で性暴力被害者の支援にささげ、病院スタッフと共に数多くの患者の治療に当たってきた。

 ・コンゴ国内だけでなく国際社会においても、戦時の性暴力の根絶に向けて闘う最も統合的な象徴だ。

 ・ム多数のレイプ犯罪を継続的に糾弾し、戦争の戦略や武器としての性暴力の根絶に向けて十分対応しないコンゴ政府や他国を批判してきた。>とのこと。

 

他方、ナディア・ムラド氏については、<イラク北西部シンジャルに近いコチョ村の出身。14年8月にISがシンジャル周辺に侵攻した際に拉致され、拘束されていた約3カ月間、「性奴隷」として繰り返し、暴力を受けた。>とその被害状況が最初の記事で指摘されています。

 

これに加えて別の記事<ノーベル平和賞性暴力「泣き寝入り」「名誉殺人」に警鐘>では、お兄さんが取材に答えて<「きょうだい6人が殺害され、私とナディアは生き残った。物静かで小さな妹が、大きな勇気を見せた成果。誇りに思う」と話した。>とのことで、殺害とレイプが紙一重の中で生かされたより残酷な状況だったのですね。

 

で、上記の受賞理由では、上記の被害事実に加えて、

<沈黙を強いる社会の慣習を拒否し、類いまれな勇気を持って被害者の代表として経験を語った。23歳になった16年、人身売買の被害者の尊厳を訴える国連親善大使に就任した。>被害者として勇気ある行動を評価したのですね。

 

ところで、この社会の慣習については、<<ノーベル平和賞 性暴力「泣き寝入り」「名誉殺人」に警鐘>という記事の中で、中東・アフリカにおける性暴力を受けた女性に対する宗教・慣習の問題として、つぎのように指摘されています。

 

<女性の純潔が重視される中東諸国では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害者に厳しい視線が向けられるケースが多い。被害女性を「家族の名誉を傷付けた」として殺害する「名誉殺人」が横行する。>というのが背景にあるのですね。ですから、性暴力被害者のムラドさんが公に訴え続けたことはとても勇気ある行動だったわけです。

 

しかも、女性被害者の家族によるその殺人が許容されているようなのです。

<女性の純潔が重視される中東諸国では、レイプも「婚前・婚外交渉」として被害者に厳しい視線が向けられるケースが多い。被害女性を「家族の名誉を傷付けた」として殺害する「名誉殺人」が横行する。>女性の人権が基本的に認められていないのですね。

 

さらにこんなひどい法律が残っているのですね。

<中東・アフリカには、レイプの加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律が各地に残る。>とはいえ、紛争時の場合はまさか当てはまるとは思えませんが。

 

今日はお二人の受賞を喜びつつ、問題の深刻さを改めて痛感しました。このへんでおしまい。また明日。


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