たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

米訴訟の巨額賠償の行方? <賠償命令トヨタに267億円 シートに問題>+補足

2018-08-19 | 司法と弁護士・裁判官・検察官

180819 米訴訟の巨額賠償の行方? <賠償命令トヨタに267億円 シートに問題>

 

アメリカがあらゆる分野で世界をリードしたかのように思われた時代があった、そういう意識を抱いた日本人は戦後長い間いたように思うのです。むろん、異なる見方をしっかり抱いていた人もいたと思いますが少数派だったと思います。

 

それでも80年代後半には経済大国日本を引っ張る意気のいい人たちは一時的にアメリカを超えたと思ったかもしれません。ともかく一時的な浮き沈みがあっても、やはりアメリカをいい意味でも悪い意味でも先導者として見てきた日本人が多かったように思うのです。

 

トランプ政権となってアメリカファーストを政治・経済・軍事などあらゆる領域で言葉通りに実施しようとするようになり、本気で日本の,日本人の立ち位置を考えなければならないようになったと思う人が以前より増えてきたように思うのです。

 

とはいえ、元々、アメリカ自体が様々な考え方で成り立っていて、振り子のように見える形で大きく振れていたように思うところもあり、現在もそれが少し際立っているだけかなと思ったりしています。

 

余分な前置きが長くなりました。実は高野山金剛峯寺の主務総長の母親が昨年97歳で書かれた著作を読み、高齢者の鏡のような語り口で、この内容を紹介しようと思ったのですが、手元に置いてなく、別の機会にしようかと思います。

 

で、話変わって本題の毎日記事<賠償命令トヨタに267億円 シートに問題 米州裁>をとりあげたいと思います。自動車メーカーに製造物責任を追及する訴訟では267億円くらいの巨額賠償を認めるケースは60年代以降の、あの著名なラルフネーダー氏を筆頭に、膨大な事例がありますから、驚くに値しないのですが、ふと気になりました。

 

まず事案を記事から見てみましょう。

<米テキサス州の裁判所の陪審は17日、同州で起きた追突事故を巡る訴訟でトヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」のシートに問題があったとして、計約2億4200万ドル(約267億円)の賠償金を乗っていた夫妻に支払うよう、トヨタに命じた。米メディアが18日までに報じた。>

 

事故はよくある追突事故です。

<原告の夫妻が2016年に「レクサスES300」の後部座席に子供2人を乗せて走っていた際、追突された。衝撃で前の座席が後ろに倒れ、5歳と3歳の子供が大けがをした。>

 

追突事故ですから、むろん追突車両運転車に責任があるのが普通ですね。ただ、この事故では、上記で指摘されているように、「衝撃で前の座席が後ろに倒れ」た結果、後部座席に座っていた2人の幼子が大怪我をしたというのです。

 

この記事で、よく分からなかったのは、前の座席が後ろに倒れた結果、どのようにして後部座席のチャイルドシートに座っている子供のどこに当たって、どのような傷害を受けたのかです。むろん前の座席が後ろに倒れること自体、欠陥があったと見られるでしょう。でも後部座席に座っている幼子に大怪我を起こすということは、車の中で寝るように、シートが完全に倒れてしまったと言うことのように思えるのですが、そのようなことがあるのか、気になったのです。

 

前のシートの欠陥について、<原告側は、トヨタが前の座席に座る人の安全性を高めるために、後部座席の安全を犠牲にしたと主張した。>というのみで、どのような欠陥かは明らかでありません。

 

陪審の判断とトヨタの会見とはずれていると思われるのですが、この記事からはさっぱりわかりません。

<陪審は、シートに問題があり、それを原告側に知らせなかったのは、重大な過失と認定した。

 米メディアによると、トヨタは「(大けがは)設計や製造の欠陥によるものではないと確信している」とコメントした。>

 

それで少し英文記事を探したのですが、詳細な記事を掲載したものをみつけることができず、とりあえずDALLAS NEWSの<Jury awards Dallas family $242 million after finding Toyota liable for children's injuries in crash>が少し詳しく掲載していたので、これを参考にしてみたいと思います。

 

被害車両は2002 Lexus ES 300で、20169月に高速道路上で停止中にHonda Pilotに追突されたのです。その際、前部座席が2つとも、後部座席にいた幼子2に倒れ、その結果、頭蓋骨に多発性骨折と外傷性脳損傷の障害が残ったというのです。

 

で、このシートの製造上の欠陥については、どのような技術的欠陥かについて、原告代理人も、法廷文書も、記事からは、具体的言及がありません。評決文を見ればわかるのかもしれません??

 

原告代理人は、後部座席の人を犠牲にして、前部座席の保護を意識的に優先していた旨主張して、トヨタの責任を追及しています。

 

そのようにいえるかは気になるところです。前部座席が追突によって、後部座席まで倒れた場合、それで追突による大きな身体損傷を回避できるか疑問だと思うのです。たしかに頸椎へのダメージを緩和させ、むち打ち損傷のおそれは軽減するかもしれません。しかし、後部座席まで倒れてしまったら、それはかえって別の損傷をうけるおそれもあるでしょう。

 

この事案では前部座席に座っていた両親の怪我は問題になっていないようですので、後部に倒れることは追突されたとき通常発生するむち打ち損傷を回避できるのかもしれません。

 

しかし、いくらなんでも、追突のとき後部に倒れてしまうようなシートは安全性の見地からも前部座席車の保護のためになるとはおもいませんし、トヨタもそのような設計をしていたとはとても思えません。

 

たしかに一定の高級車は、たいていシートのリクライニングや前後、高低の移動が自動でできる構造になっています。その装置が衝撃で壊れた可能性があるのではないか、その点の安全対策が不十分であったのではないかと勝手に推測しています。

 

もう16年前の古いタイプですから、現在では大きくモデルチェンジしていますので、このような安全性を欠く車両はないと思っています。

 

とはいえ、障害の程度がよくわかりませんし、介護の必要性がどの程度かよくわかりませんが、この障害慰謝料として9840万ドル、それに懲罰的賠償額として14360万ドル、合計金24200万ドルの賠償責任をトヨタに認める評決を下したのです。

 

前者も日本の基準が妥当かは別にして、よほどの治療が必要であっても、このような高額の賠償責任は認められません。治療や介護に要する合理的な損害を認定するのですね。なにが合理的かが問われるかもしれませんが、損害の公平な分担という考え方を妥当とすると、アメリカの場合少し異常かなと思ってしまいます。

 

懲罰的賠償はある程度わが国にも導入されてもいいのではないかと思いますが、アメリカの賠償額が異常に高すぎますので、参考にはならないでしょう。

 

ただ、追突者の運転手も責任が認められていますが、トヨタが95%で、運転手は5%というのはどうも強いもの、お金持ち、あるいは外国メーカーということで、なにか異様な判官びいきのような印象を感じてしまいます。

 

トヨタ側は、評決の結果を尊重しつつも、後遺障害については異常な追突事故による特殊事情であって、デザイン・製造上の欠陥がないとの立場を崩してなく、別の記事では上訴するといった指摘もありました。

 

どうも内容がはっきりわからない中、適当なコメントになりました。私も相当数追突事故のケースを扱っていますが、不思議な事件ですね。同型車両に同様の欠陥が見つかっていれば、評決もある程度、合理性があるように思えるのですが・・・

 

そろそろ一時間が過ぎました。今日はこれにておしまい。また明日。

補足

 

ちょっとこのケース気になって、評決文なりを入手できないかと少しだけネットサーフィンしたのですが、

担当弁護士のホームページでは次のような事件名を含んだ記事が自信たっぷりに掲載されていました。

Dallas Jury Returns $242.1 Million Verdict in Toyota Product Defect Trial

 

ところがこの事件の評決文か裁判文書を探したのですが、どうもProtect Order(秘密保持命令)が下されているのではないかとおもいます。それらしいケース名で調べたら、でてきませんでした。

 

他方で、<MEMORANDUM OPINION>としては、証拠開示請求をめぐって繰り返し当事者間で争われた上で意見が述べられているのが見つかりました。ま、アメリカのトライアルでは証拠開示論争が映画並みに激しく争われるようですね。

 

ともかく結局、この事件の核心である車の欠陥がどのようなもので、どのような障害をうけたのかは、わかりませんでした。これだけの裁判ですので、解説なり、いろいろ情報が今後でてくると思いますので、その機会にでも検討しましょうかね。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿