171119 バイオマスを新宮で!? <バイオマス発電所 新宮港に立地計画・・>などを読みながら
再生可能エネルギーの将来にかけたい。アルゴアさんのその思いは力のない一人の人間にすぎない私も感じています。
さて、今朝の毎日記事和歌山版ですが<和歌る?紀になる!バイオマス発電所 新宮港に立地計画 県内初、21年稼働目指す>と、神門稔記者が期待を込めて取材しています。
<新宮港(新宮市)の工業用地で、県内初となる木質バイオマス発電所の立地計画が浮上している。実現すれば、燃料に用いる木材の需要増と、地域の雇用創出という一石二鳥が期待できる。企業誘致に腐心してきた市は「地域活性化に大いにつながる。何としても立地を実現したい」と強い関心を寄せている。>
<計画しているのは、木質バイオマスをエネルギー源とする発電・電力販売を手がける「エフオン」(東京都)。>同社のホームページでは<EF-ONグループのバイオマス発電>となかなかすでに大分・福島県で操業して頑張っている様子。
<市企業立地推進課や同社によると、新宮港第2期工業用地16万9000平方メートルのうち、約5万3000平方メートルを立地候補地としている。約100億円を投じ、出力1万8000キロワット、年間稼働日数330日で、2021年中の稼働を目指す。>
同社の専攻事業の大きく上回る出力を予定している内容ですね。
ただ、<同社は9月末の取締役会で事業計画を決定し、市にも意向を伝えた。進出にあたっては今後、国から事業認定を得ることなどが必要となるが、現時点で具体的なスケジュールは定まっていない。>とはっきりしません。
市の方は多額の費用を投じて埋立造成した工業用地が、各地の失敗例のようにならないよう苦心している様子。<市も計画を歓迎する。市は第2期工業用地に今年度中に10社を誘致し、全用地を分譲するとの政策目標を定めている。しかし、現時点で進出が決まったのは6社にとどまる。7社目として、エフオンの誘致を何とか実現させたい考えだ。>
さてそのようなバイオマス事業の誘致は事業実現可能性が十分見込みのあるものか、いまのところ材料がないので、期待したいところですが不安もあります。これまで各地でバイオマス事業計画が立てられ、多額の補助金を得て機械設備を購入したのはいいけれども、ずさんな計画で頓挫して訴訟で責任が問われるケースも少ないのです。
で、企業側の見通しを見てみたいと思います。<同社は新宮を候補地に選んだ理由について「我が国有数の木材産出地であったため森林資源の潜在性が高く、発電に必要な燃料の確保が十分に見込める」としている。発電事業を通じて、林業や製材事業、運送業者など関連業界への経済効果も期待できる。>
バイオマス事業において大きな壁の一つは、バイオマスの原料が低廉で持続的な供給体制が整備しうる見込みがあるかという点です。しかしながら、同社の指摘する「我が国有数の木材産出地」というのを見て、あれれっと、つい耳を疑ってしまいました。たしかに和歌山県内では紀南といわれる南部の生産量は相当なものといえるでしょう。しかし、全国的に見ると微々たる程度です。
確認の意味で、農水省の<平成27年林業産出額 都道府県別統計表>を見たところ、金額ベースですが、和歌山県の木材生産額は全国の0.2%にすぎません。でも「木の国」と標榜しているではないかと疑問に思われる人もいることはわかります。しかし実態はこの統計の通りです。北海道や東北、それに九州でほぼ50~60%を占めていて、他はほんのわずかです。
ですからエフロンがこれまで立地した大分県や、福島県とはかなり条件が異なります。ただ、バイオマスは製品になる木材というより、製品化できない枝葉や質の落ちる原木を対象としますので、それが大量に生産できればいいともいえます。とはいえ、一般的には木材生産量が大きいという地域は、生産コストが市場競争力をもっていることをも意味しているわけで、はたして新宮地域でそのような生産力があるのかは検討されるべきでしょうね。
たかが出力1万8000キロワットに必要な原料ですから、紀伊山地一帯の山林を考えれば、余裕綽々ともいえます。しかしながら、現実は厳しいものです。枝葉や低級な原木となると、容量が余分になります。10トントラックで運ぶとしても大量の運搬が必要でしょう。
さてそこではたと思い浮かべるわけです。紀南地方には風光明媚で、産業化がさほど進んでいない分、産業道路も海岸線は別にして、紀伊山地一帯には整備された状況にはないと思います。むろん現在も相当数通行していますが、新宮港に向かって膨大な数が走行するとなると、これは困ったことになりかねません。世界遺産の観光客にはどう映るでしょう。
道路も頻繁な走行に耐えうるか、気になります。
いやいや、それだけ生産する林業主体があるのかどうか、それが問題です。大規模な林家はさほどなく、あってもバイオマスを魅力とは考えないでしょう。森林組合もそれなりの生産力を持っていますが、各地に別れていますし、連携して共同生産体制を作ってまでして、費用対効果が生まれるか、なかなか難問でしょう。
そして工業団地の中でも問題は起こりうるかと思います。エフロンのホームページにある写真ではきれいな機械工場だけが映っていますが、実際は原木や枝葉を受け入れるのであれば、大規模な敷地がの置き場や裁断・分別などになります。その作業環境は見た目には美しいという人ばかりでなく、また臭いなど発生しますが、通常、大気の中で行われるわけですから、近隣工場との関係がうまくいけばよいのですが。
で、こういう懸念は、たまたま新宮港に立地することから、場合によっては燃料を外国からも輸入することになり得ることを心配するからです。むろん補助事業ですから、最初からそのようなことをすることはおそらく補助条件に適合しないはずです。操業開始すると、原料の確保が大変で、禁じ手を使う危険もあることを心配するからです。
たとえば<バイオマス発電事業者に最適な燃料を世界各国より輸入販売>といった宣伝があります。これらがどの程度どのような場所で利用されているのかは知りませんが、背に腹は代えられないといった経営者にとっては助かるでしょうね。でもそれはバイオマス補助事業の趣旨に反しますね。
わが国の林業を蘇らせるというか、新たに生まれ返らせるには、地道で真剣な討議が必要でしょう。新宮の計画に期待したいです。
まだ、2つ3つ書きたいと思ったテーマがあったのですが、手の方が痺れてきました。
今日はこの辺でおしまい。
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