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アベノミクスは終わり/FTの結論

2013-06-03 19:18:46 | 経済
ファイナンシャルタイムズが結論を出したようだ。

アベノミクスの命脈は尽きたらしい。

おそらく欧米のファンドと金融機関がたっぷり儲けられたからだろう。

「5月第4週までは、アベノミクスの中核を成す浮揚策が完璧に機能しているように見えた。バブル期の典型的な尺度であるゴルフ会員権は値上がりした。株式市場も上昇し、半年間の上げ幅が70%に上った。家庭向けの電気料金も値上がりした。言い換えると、資産価格のインフレと現実世界のインフレがついに定着するかに見えた。

 だが、今の日本は奇妙だ。日銀の一部関係者は、2%のインフレ目標は野心的過ぎて達成できないのではないかと心配している。市場は、今も昔も日本にとって唯一の成長エンジンである輸出の本格回復をもたらすほどには円安が進まないかもしれないと懸念している。


5月下旬の日本株急落のきっかけは、FRBの量的緩和縮小観測だった〔AFPBB News〕

 しかし、量的緩和の「修正」に関する米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長の最近の発言を受け、日本の株式市場と国債市場が大揺れしたことは、正反対の方向に不安が向けられるべきだということを示唆している。

 アベノミクスの本当のリスクは、インフレと円安が十分に進まないことではなく、行き過ぎることなのだ。

 多くのアナリストは、政策変更に関する議論は早計だと思っているが、FRBの資産購入の段階的縮小について考えただけでも、市場は急落した。米国の量的緩和の縮小は、日本とアジア新興国の金融市場と実体経済に影響を与える。

デフレとゼロ金利以上に悪いものがある

 FRBが実際に緩和策を縮小し、米国経済が強くなれば、ドルは急騰する可能性が高い。つまり、円は急落するということだ。

 大幅な円安になれば、輸入コストが2%の目標以上に高騰するようなインフレ昂進の公算が強まる。そうなれば、金利が大幅に上昇し、アベノミクスの中心に存在する矛盾を浮き彫りにする。すなわち、インフレ率の上昇と超低金利を両立させるのは不可能だ、ということだ。

 日本は間もなく、デフレとゼロ金利以上に悪いものが存在することに気付くかもしれない。悪いインフレと高金利である。脆弱性の最大の原因は、もちろん、輸入エネルギーに対する依存だ。すべての輸入財の価格はドル建てになっているため、コストが大幅に上昇し、円安によって輸出業者が得る競争上の恩恵を少なくとも部分的に帳消しにする。

 だが、非正規労働者の割合が高まっている労働市場の構造を考えると、賃金が物価と比例して上昇することはないだろう。このことは、多くの人の生活水準が下がり、消費が拡大したとしても一時的な動きで終わることを示唆している。不動産価格と株価の上昇による資産効果は、大半の労働者、特に年配の労働者には何の影響も及ぼさない。

 今のところ、日本の経営者のアニマルスピリッツは、年間給与ではなく一時金を多少引き上げる程度にしか目覚めていない。一方、設備投資は今年1~3月期に減少し、これで5四半期連続の減少となった。

 また、構造改革を求める圧力は弱まっている。それはまさに、円安が偽りの安心感と競争力を日本に与え、イノベーションに代わって通貨切り下げが成長不足の解決策になってしまうからだ。

 JPモルガン証券の菅野雅明氏をはじめとしたエコノミストは既に、構造改革の内容に対する期待を後退させている。再生可能エネルギーへのコミットメントは、原子力エネルギーへの緩やかな回帰に道を譲る。環太平洋経済連携協定(TPP)参加に向けた条件交渉は、保護主義の農業政策に劇的な変化をもたらすことはない。移民は政策議題にも入っていない。

 同時に、近隣諸国の中国と韓国の関係者は円安に対する不満を募らせており、ドイツも近く、円安反対論の合唱に加わるかもしれない。経済問題はアジアの政治的緊張を悪化させている(日本が11年ぶりに国防費を増額させていることも助けにならない)。

 一方、米国の金融緩和が永遠には続かないことを思い出させるバーナンキ議長の発言が招いた最初の結果は、日本の株式市場と国債市場のボラティリティー上昇だった。このボラティリティーは、市場心理、特に日本の投資家の心理が依然脆いことを裏付けている。

アジアの新興国にも波及する恐れ

 さらに、ボラティリティーは日本に限定されていない。今後もドル高・円安が続くようなら、アジアの新興国市場に流れ込んだ莫大な資金が再び流出する可能性がある。こうした新興国の通貨に対してドルが上昇すれば、これらの国もコスト上昇と企業収益の圧迫に見舞われることになる。

 前回、円相場が急落した時には、15年前のアジア金融危機の一因となった。確かに今回は、大半の新興国は債務、特に外貨建て債務を減らしたため、そうした危機が生じる可能性はずっと低くなっている。

 だが、日本の実験はやはり日本と世界各国に悪影響をもたらす可能性が高い。もし日銀がこれほど高いコストをかけて日本株式会社のために稼いでいる時間が無駄になったとしたら、実に残念なことだ。

By Henny Sender」

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37909


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