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日銀が恐れるマイナス金利後のリスクシナリオ/ダイヤモンド

2016-02-15 20:22:30 | 経済
「 未踏の領域に踏み込んだ長期金利に翻弄され、経営計画の抜本的な見直しを余儀なくされたある地方銀行幹部は、途方に暮れていた。

「基準となる長期金利が崩壊してしまったので、シンジケートローンから仕組みローン、地方公共団体向け融資のレートに至るまで、融資の収益見通しが立てられなくなった」

 2月9日、住宅ローンや企業向けの貸出金利など、さまざまな金融商品の目安となる日本の長期金利が史上初めてマイナス圏に突入したのだ。

 きっかけは欧州の信用リスク不安。大手のドイツ銀行が過去最大の最終赤字に沈んだことを契機に、経営危機をあおるような相場動向と観測が市場を駆け巡り、投資家のリスク回避姿勢が強まった。

 この流れを引き継いだ9日午前の東京市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りがゼロを付け、午後には一時マイナス0.035%まで低下(価格は上昇)した。10年債の利回りがマイナスになると、国債を満期まで保有し続けても損が出てしまう。主要7カ国(G7)でも前例がなかった、まさに異常事態である。

 では、どうしてそんな不条理な金融商品に買い手がいるのか。

 それは、日本銀行が異次元緩和の一環で、国債を民間の金融機関から大量に買い入れて、市中にマネーを供給しているため、マイナス利回りでも高値で日銀が買い取ってくれるからにほかならない。満期まで保有せずに日銀に売れば、間違いなくもうけられるのだ。

 この日の混乱は金利にとどまらなかった。

 ドル円相場は一時1ドル=114円台まで急騰、「黒田防衛ライン」とされた115円を割り込み、1年3カ月ぶりの円高水準を付けた。さらに、日経平均株価は前日より918円安い1万6085円で終え、今年最大の下げ幅を記録。翌10日午前には心理的な節目である1万6000円も割り込んだ。東京市場は長期金利、為替、株式で次々と最終攻防ラインが破られるトリプルパンチに見舞われた。

 背景にあるのはリスクオフ相場。投資家が株式などのリスク資産から資金を引き揚げ、相対的に安全と見なされている円、日本国債に振り向ける動きがにわかに加速したためだ。

 悪材料が一気に出たことに加えて、10日から11日にかけ、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長が米議会で、過度なリスク回避姿勢を和らげる発言をするとみられ、ひとまず市場は落ち着きを取り戻すとの見方が多い。

 2月下旬に上海で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、市場安定に向け、協調路線が強く訴えられるはずだ。

 それでも、原油安をはじめとして、中東や極東における地政学リスク、中国の減速などさまざまなリスクがくすぶっており、投資家のリスク回避を加速させるネタには事欠かない。

 特に人民元をめぐっては、ジョージ・ソロスやデビッド・テッパーといったヘッジファンド業界の大物が元の空売りを仕掛けているとうわさされており、さらなる人民元安が懸念される。

 こうしたリスクがひとたび投資家に意識されれば、円買いが再燃して、円高に振れるという構図がしばらくは続くだろう。

 そして、株安・円高対策としてマイナス金利政策を導入したはずにもかかわらず、歯止めが利かない状況にあって、日銀はさらなるリスクシナリオに身構え始めた。

 中堅幹部は「米国の減速こそが最大の懸念材料」と警戒する。

 いま世界最大の経済大国であり、世界経済の唯一のけん引役たる米国で景気後退局面入りの懸念が高まっている。

 ドイツ証券の田中泰輔・グローバルマクロリサーチオフィサーは、「過去2回の日銀の金融緩和は両方とも米国経済が良く、ドル高の地合いが強まっていたときに打ち出されたから効いた。逆に米国が鈍っているときに日銀が緩和しても円安株高の効果はほとんど出ない」と指摘する。

 実際、日銀の黒田東彦総裁が打ち出したマイナス金利政策はわずか数日で賞味期限が切れてしまった。むしろ、ベテランの市場関係者が「当の日銀ですらマイナス金利にシステムが対応できておらず、行内は大混乱に陥っている」と指摘するように、現状ではその副作用の方が大きいといえる。

 マイナス金利政策という劇薬を使ってもあらがえない市場のうねりによって、一国の中央銀行が持つ金融政策という“主権”の限界が露呈してしまった。米経済の減速が顕在化してくると、日銀の政策余地はもはやほとんどないのが実態なのだ。」

http://diamond.jp/articles/-/86257


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