白夜の炎

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公正さの確認が検証の核心/藤田博司

2014-10-06 20:11:17 | 報道
「朝日新聞が5月に報じたいわゆる「吉田調書」の記事に誤りがあったとして、記事を取り消し謝罪した。併せて8月来各方面から批判を浴びている慰安婦報道についても謝罪した。朝日にとってはこの上ない不名誉な事態だが、これは同時に日本のジャーナリズム全体にとっても教訓を突きつけている。

吉田調書は福島原発事故当時、原発の所長だった吉田昌郎氏(故人)が政府の事故調査委に対して行った証言をまとめたもので、朝日が5月20日付紙面で特報した。この時朝日は、原発職員の大半が「所長の命令に反して撤退した」と報じていた。

他のメディアは後追いをせず(できず)、約3か月後の8月になって、産経、読売、共同通信などが調書を入手、「命令に反して撤退」との朝日の報道は「誤報」と主張するニュースを流した。折から朝日が8月初めに公表した慰安婦報道に関する検証をめぐって朝日に批判が集中していたために、吉田調書の「誤報」問題にも注目が集まった。

9月11日に記者会見した朝日の木村伊量社長は、吉田調書報道と慰安婦報道について、あらためて第三者機関による検証をすることを約束した。一見、互いに関連性のない二つの報道だが、検証しなければならない問題の核心は、報道における公正さをどう担保するかという点で共通している。一連の問題の根っこを手繰っていくと、これらの報道にあたって正確な事実を伝えるためのジャーナリズムの基本原則である「公正さ」がおろそかにされてはいなかったか、というところにたどり着く。そしてこの問題は、朝日だけの問題ではなく、日本のメディア全体が共有する問題であることにも気づかされる。



未解明のたくさんの「なぜ」

木村社長は会見で吉田調書の報道について「現時点では、思い込みや記事のチェック不足などが重なったことが(誤報の)原因と考えている」と述べていた。ただ、これだけ重大なニュースの特報にあたって単なる思い込みやチェック不足に足をすくわれるほど朝日の報道体制が甘いとは思えない。取材班はおそらく調書の内容を吟味し見出しの立て方まで議論して報道に踏み切ったはずだが、12日の朝日の紙面からはそうした報道の過程をどのように検証したのか、読み取れない。

慰安婦問題報道については8月の検証で一連の報道のうち、虚偽と認めた証言に基づく一部の記事を取り消した。しかし、80年代初め、虚偽の証言を基に慰安婦問題を報道し始めたとき、現場の記者がなぜ虚偽を安易に信じたのか、その後90年代にはいって、証言が虚偽と伝えられた後もなぜ徹底した検証が行われなかったのか、などは未解明のままになっている。それが朝日に対する批判を一段と強める原因にもなった。

吉田調書、慰安婦問題の二つの報道の検証で決定的に欠けていると思われるのが、一連の報道でジャーナリズムの基本的規範である「公正」の原則が実践されていたかどうかの視点である。

ニュース報道の公正は、取材、編集、発信という報道のすべての過程で貫かれねばならない。具体的には、予断や偏見、思い込みを排し、可能な限り事実を正確に伝えることを記者は求められる。情報の確認と検証を怠らず、間違いがあれば速やかに訂正する。自社に不都合な問題があっても説明責任を果たす。そうした基本が守られたかどうか、といった視点からの検証なしには、二つの事例が遺した教訓はくみ取れない。

報道の公正は左右の間をとる公平や中立ではない。平たく言えば、人から後ろ指を指されない振る舞い、人に恥じることのない仕事を意味している。報道が人間の営みである以上、誤りはつきものだ。しかし作業の過程で右のような意味での公正を心がけて最大限の努力をしたときは、仮に結果が間違っていても公正は貫けたと考えていい。

朝日に限らず、日本の報道現場でも「公正」の原則が重要であることは十分理解されているに違いない。しかしそれが日々の仕事のなかで忠実に実践されているとは限らない。時間の制約や他社との厳しい競争環境のためにともすれば確認作業や検証作業がおろそかになる。記事をより魅力的に見せるために実体以上に飾り立てたい誘惑もある。公正な報道を妨げるそうした要因を排除するための仕事の仕組みを構築しておくことも、報道機関として留意しなければならない点だろう。



置き去りにされた本質の問題

慰安婦報道に加えて吉田調書報道が不祥事として浮かび上がってきたために、朝日に対する批判はいやがうえにも高まりを見せている。朝日を国賊、売国奴呼ばわりする罵詈雑言の類は論外としても、新聞に対する攻撃としては前例のない異様な空気を帯びている。しかし、批判が朝日の報道の失態に集中するあまり、二つの報道に関わる本質的な問題がほとんど議論の外に置き去りにされている。

慰安婦報道に関わる朝日批判は、慰安婦を強制連行したとする虚偽の証言に基づいて長期間、報道を続けたことと、最終的にその報道の誤りを認め取り消すまでに30年もの時間を要したこと―の二点に集約される。これらの点については、朝日は批判を甘受せざるを得まい。しかし強制連行の証言が虚偽とされても、日本軍が戦地で慰安所を管理、運営し、多数の慰安婦を働かせていた事実が消えるわけではない。日本政府が慰安婦問題に向き合い続けねばならない状況は変わらない。その事実が朝日批判の喧騒のなかでかき消されそうになっている。

吉田調書報道ではひたすら朝日の「誤報」が強調され、朝日による報道で調書の存在が明るみに出るまで政府がそれをひた隠しにしてきた事実、ひた隠すことによって歴史的原発事故の原因究明や将来の再発防止に向けての教訓を学ぶ機会を政府当局が妨げてきたことの責任などはほとんど論じられていない。原発再稼動の是非が目前の政治課題になっているいま、調書の公開に消極的だった政府の姿勢はもっと厳しく問われてもいいのではないか。

いま一つ、これらの報道についての朝日批判は、朝日による一連の報道が日本の国際的評価を下げ、(慰安婦報道では)日韓関係の悪化を招いたと主張している。安倍首相をはじめ閣僚や有力政治家も、朝日の報道が「日本人を貶め、日本の名誉を傷つけた」などの非難を繰り返している。

しかし少し冷静に考えれば、国際世論や外交関係に与える影響力は、新聞の報道より政府の持続的な外交政策、政府首脳の言動の方がはるかに大きいことは自明だろう。新聞の報道の影響力が皆無ではないにしても、政府や要人の振る舞いの持つ潜在的影響力には遠く及ばない。

安倍首相は朝日の吉田調書報道が「日本の名誉を損なった」と批判した。それと前後して、安倍改造内閣の女性閣僚二人が、日本のネオナチ組織の代表とのインタビューに応じ写真に納まっていたことが海外メディアに報じられた。閣僚と極右政党のつながりを海外で指摘されるのと原発職員の「撤退」が報じられるのと、いずれが日本のイメージに大きな打撃を与えるか、あらためて言うまでもあるまい。



報道の萎縮が心配だ

それにしても、吉田調書報道についての謝罪と記事取り消しは「羹に懲りてなますを吹く」の感を免れない。初報の見出しが不適切であったことは認めるにしても、虚偽証言に基づいて長期間報道を続けた慰安婦報道の罪と同等に扱うことはできない。慰安婦報道への対応の遅れに対する厳しい批判に過剰に反応した結果ではないかと思われるのである。

朝日がとった措置は、吉田調書の報道に関わった現場の記者たちへの影響はもとより、調査報道を含む朝日の報道全般のあり方にも影を落とすことになりかねない。「調査報道の死」を予言する声もある。それ以上に、朝日の報道現場全体が萎縮し、論議を呼びそうな取材、報道を避ける空気が広がる心配もある。朝日の紙面が当たり障りのない発表ものばかりで埋まるようになれば、新聞の総与党化につながりかねず、それこそ「ジャーナリズムの死」を意味することになるだろう。朝日たたきに精出してわが事成れりとしたり顔の他紙、他メディアも、気が付けばいつの間にか政府の掌のうえで踊っている状況がやってこないとも限らない。



(「メディア談話室」2014年10月号 許可を得て掲載)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2782:141001〕」

http://chikyuza.net/archives/47738

中曽根元首相が「土人女を集め慰安所開設」! 防衛省に戦時記録が

2014-10-06 20:05:43 | 歴史
「中曽根元首相が「土人女を集め慰安所開設」! 防衛省に戦時記録が

Business Journal 2014.08.29

 朝日新聞の慰安婦訂正記事で右派陣営が勢いづいている。「朝日は責任をとれ!」と気勢をあげているのはもちろん、自民党の政務調査会議は河野談話も朝日報道が前提だとして「河野談話を撤回し、新たな官房長官談話を!」とぶちあげた。また、同党の議連では朝日新聞関係者、さらに当時の河野洋平元官房長を国会に招致して聴取すべき、という意見までとび出している。
 
 だが、朝日や河野洋平氏を聴取するなら、もっと先に国会に呼ぶべき人物がいる。それは第71代日本国内閣総理大臣の中曽根康弘だ。
 
 大勲位まで受章した元首相をなぜ従軍慰安婦問題で審訊しなければならないのか。それは先の大戦で海軍主計士官(将校)の地位にあった中曽根元首相が、自ら慰安所の設置に積極的に関わり、慰安婦の調達までしていたからだ。

 何かというと左翼のでっちあげとわめきたてて自分たちを正当化しようとする保守派やネトウヨのみなさんには申し訳ないが、これは捏造でも推測でもない。中曽根元首相は自分の“手記”の中で自らこの事実を書いており、しかも、防衛省にそれを裏付ける戦時資料が存在していたのだ。そこには、部隊の隊員によるこんな文言が書かれていた。

「主計長の取計で土人女を集め慰安所を開設」

 まず、“手記”の話からいこう。中曽根が慰安所設立の事実を書いたのは『終りなき海軍』(松浦敬紀・編/文化放送開発センター/1978)。同書は戦中海軍に所属し、戦後各界で活躍した成功者たちが思い出話を語った本だが、その中で、海軍主計士官だった中曽根も文章を寄稿していた。

 タイトルは「二十三歳で三千人の総指揮官」。当時、インドネシアの設営部隊の主計長だった中曽根が、荒ぶる部下たちを引き連れながら、いかに人心掌握し戦場を乗り切ったかという自慢話だが、その中にこんな一文があったのだ。

「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して、慰安所をつくってやったこともある。かれらは、ちょうど、たらいのなかにひしめくイモであった。卑屈なところもあるし、ずるい面もあった。そして、私自身、そのイモの一つとして、ゴシゴシともまれてきたのである」

 おそらく当時、中曽根は後に慰安婦が問題になるなんてまったく想像していなかったのだろう。その重大性に気づかず、自慢話として得々と「原住民の女を襲う」部下のために「苦心して、慰安所をつくってやった」と書いていたのだ。

 ところが、それから30年たって、この記述が問題になる。2007年3月23日、中曽根が日本外国特派員協会で会見をした際、アメリカの新聞社の特派員からこの記載を追及されたのだ。

 このとき、中曽根元首相は「旧海軍時代に慰安所をつくった記憶はない」「事実と違う。海軍の工員の休憩と娯楽の施設をつくってほしいということだったので作ってやった」「具体的なことは知らない」と完全否定している。

 だが、これは明らかに嘘、ごまかしである。そもそもたんなる休憩や娯楽のための施設なら、「苦心」する必要があるとは思えないし、中曽根元首相の弁明通りなら、『終りなき海軍』の“手記”のほうがデタラメということになってしまう。だが、同書の編者である松浦敬紀はその10年ほど前、「フライデー」の取材に「中曽根さん本人が原稿を2本かいてきて、どちらかを採用してくれと送ってきた」「本にする段階で本人もゲラのチェックをしている」と明言しているのだ。

 いや、そんなことよりなにより、中曽根元首相の慰安所開設には、冒頭に書いたように、客観的な証拠が存在する。 

 国家機関である防衛省のシンクタンク・防衛研究所の戦史研究センター。戦史資料の編纂・管理や、調査研究を行っている研究機関だが、そこにその証拠資料があった。

 資料名は「海軍航空基地第2設営班資料」(以下、「2設営班資料」)。第2設営班とは、中曽根が当時、主計長を務めていた海軍設営班矢部班のことで、飛行場設営を目的にダバオ(フィリピン)、タラカン(インドネシア)を経てバリクパパン(インドネシア)に転戦した部隊だが、この資料は同部隊の工営長だった宮地米三氏がそれを記録し、寄贈。同センターが歴史的価値のある資料として保存していたものだ。
 
 本サイトは今回、同センターでその「第2設営班資料」を閲覧し、コピーを入手した。

 宮地氏の自筆で書かれたと思われるその資料にはまず、「第二設営班 矢部部隊」という表題の後、「一 編制」という項目があり、幹部の名前が列挙されていた。すると、そこには「主計長 海軍主計中尉 中曽根康弘」という記載。そして、資料を読み進めていくと、「5、設営後の状況」という項目にこんな記録が載っていたのだ。

「バリクパパンでは◯(判読不可)場の整備一応完了して、攻撃機による蘭印作戦が始まると工員連中ゆるみが出た風で又日本出港の際約二ヶ月の旨申し渡しありし為皈(ママ)心矢の如く気荒くなり日本人同志けんか等起る様になる
主計長の取計で土人女を集め慰安所を開設気持の緩和に非常に効果ありたり」

 さらに「第2設営班資料」のなかには、慰安所設置を指し示す証拠となる、宮地氏の残したものと思われる手書きの地図も存在していた。

 それはバリクパパン「上陸時」の様子(昭和17年1月24日)と、設営「完了時」の様子(17年1月24日~同年3月24日)を表す2点の地図資料だ。バリクパパン市街から約20km地点のこの地図から、中曽根たちが設営したと思われるマンガル飛行場滑走路のそばを流れるマンガル河を中心に民家が点在し、またマンガル河から離れた場所に民家が一軒だけポツリと孤立していることがわかる。

 そして2つの地図を見比べてみると、“ある変化”があることに気づく。「上陸時」から「完了時」の地図の変化のひとつとして、その孤立した民家の周辺に、設営班が便所をおいたことが記されている。さらにその場所には「上陸時」にはなかった「設営班慰安所」との記載が書き加えられている。

 つまり、上陸時に民家だった場所を日本軍が接収し、「設営班慰安所」に変えてしまったと思われるのだ。 

 もはや言い逃れのしようはないだろう。「主計長 海軍主計中尉 中曽根康弘」「主計長の取計で土人女を集め慰安所を開設」という記載。それを裏付ける地図。中曽根元首相は自分で手記に書いたこととぴったり符号するではないか。

 しかも、「土人女を集め」という表現を読む限り、中曽根主計長が命じて、現地で女性を調達したとしか考えられないのである。

 実際、インドネシアでは多くの女性が慰安婦として働かされており、彼女たちは日本軍に命じられた村の役人の方針で、どんなことをさせられるのかもしらないまま日本兵の引率のもと連れ去られたことを証言している。そして、年端も行かない女性達がいきなり慰安所で複数の日本兵に犯されたという悲惨な体験が語られ、その中には女性このパリクパパンの慰安所に連れてこられたという女性もいる。
 
 つまり、中曽根首相がこうした“強制連行”に関与していた可能性も十分あるのだ。

 朝日新聞の訂正で勢いづいた保守・右派勢力は銃剣を突きつけて連行したという吉田証言が虚偽だったという一事をもって、強制連行そのものを否定しようとしている。さらには従軍慰安婦への軍の関与そのものを否定するかのような虚偽を平気でふりまいている。

 しかし、もし、強制連行はない、軍の関与もないといいはるならここはやはり、「土人女を集め」たという元主計長・中曽根康弘を国会に喚問して、どう「集め」たのか、「苦心」とはなんだったのか証言させるべきではないのか。一メディアの誤報をあげつらうより、そのほうがはるかに「歴史の検証」になると思うのだが、いかがだろう。
(エンジョウトオル)」


お母さんのための原発情報 (やや緊急) サカナの汚染とガンの発生/武田邦彦

2014-10-06 19:38:03 | 放射能
 人々に武田邦彦氏のブログから引用。

 氏の歴史論や温暖化論には首を傾げるところがあるが、福島事故以降の放射線の問題に関しては感謝しています。

「東京電力から海に出ている水にストロンチウム500万ベクレル(1リットル当たり)が検出されたと発表されました。これは規制値の16万倍ですから、「規制値の何倍か?」という程度も超えている数値です。



また、福島原発から毎日、空気中に漏えいしている放射性物質量は明らかにされていませんが、おそらく数1000万ベクレルから数億ベクレルと推定されます。またいったん土の上に落ちた放射性物質の再飛散による被ばくは事故当時の2分の1ぐらいと考えられますが、それでもかなりの量になります。



一方、福島県の医師団によりますと、相変わらず福島の子どもの甲状腺がんは増え続け、この一年で、甲状腺がんが26人から33人、疑いのある子供が32人から42人に増えた。通常の患者数の約10倍程度になります。



医学的に言えば「通常」というのが良く分からないので、まだ確定的ではありませんが、福島の医師団が言うように「これは原発の被曝の影響ではないと考えられる」ということでもありません。それも根拠がないからです。科学者や医師は人の健康に関することを「自分の感でそう思う」と病気になる可能性のあることを言ってはいけないのです。その時には勇気をもって「わかりません」と言うべきです。



このような状態の中で、現実的にどのようなことに注意をするべきでしょうか? あと2年程度は福島の状態を見ながら、子供のこと、家族のことを考えてもう少し注意をするべきと思います。



ポイントは、サカナ、お米、山や川のもの、タケノコ類などの食材です。サカナは千葉沖以北の、千葉、茨木、福島、宮城、岩手、青森の太平洋側、北海道の太平洋側で、遠洋ではない近海から取れた魚は食べないほうが良いでしょう。



すでにセシウムだけは測定され、北海道、青森あたりは安全ですが、ストロンチウムが測定されていません。「測定しなくても大丈夫」と言っている人がいますが、それは「測定したくない。ストロンチウムが入っていても売れないと困るから安全という」ということです。



ストロンチウムは魚の骨から体に入り、人間の骨に沈着して白血病などを起こします。



二番目はお米です。お米は食材としてはそれほど汚染されていませんが、なんといっても毎日、もっとも多く食べるものです。普通の細菌やウィルスの場合は、どんなに少量でもある食材が汚れていれば、それが体内で増殖しますので、危険ですが、放射性物質は増殖しませんから、「大量に食べるものに注意」していれば、少量のものは大丈夫ということです。



そこでお米はできるだけ西の方のものを選ぶことです。2011年に収穫された福島などの汚染米がどこにいったのかまだ明らかになっていません。



山のイノシシ、川のアユ、シイタケなどのタケノコ類も少し待ったほうが良いでしょう。シイタケでも大丈夫なものもありますが、「安全だ」として販売されているもののベクレル(汚染度;セシウムとストロンチウム)を表示しているシイタケはありません。ぜひ、生産者の方には「自分の儲けより、お客さんの健康」を第一にしてほしいと思います。



また事故当時ほどでもないので、マスクは風の強い人か、花粉症だからついでにという程度でやるのが良いと思います。また1階、2階で洗濯物を干した場合で、風が強い場合は、簡単に外でパタパタとやって取り込めば、これも被曝量を3分の1とか5分の1に減らすので、病気の可能性を減らす。



いずれにしてもストロンチウムが規制値の16万倍というのを厳しく考えて、上手に食材を選ぶ時期と思います。



(平成26年2月11日)」

http://takedanet.com/2014/02/post_a56b.html

<インタビュー>「強くて優しい」新しいリベラルが必要 NPO代表理事、駒崎弘樹さん

2014-10-06 19:21:34 | 社会
「 日本の社会起業家のフロントランナーで、病児保育などを手がけるNPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹さん(35)がツイッターやフェイスブックで「新しいリベラル」のあり方について発信し、話題を呼んでいる。駒崎さんがなぜ既存のリベラル勢力や保守勢力ではなく、あえてリベラル像のアップデートについて発言するのか。新しいリベラルの具体像、アップデートのために必要な「草の根ロビー活動」とは何か。ロングインタビューでお届けする。【聞き手・石戸諭/デジタル報道センター】

 ◇健全な対立軸は必要

 --駒崎さんはツイッターやフェイスブックで新しいリベラルの必要性を語っています。狙いは何だったのでしょうか。

 駒崎さん 今のリベラル勢力の退潮とある種の腐敗について胸を痛めています。リベラルはいろんな課題--例えば集団的自衛権や原発問題--に対して、反対はしますが、ではどうしたらいいかの答えを持っていない。それゆえに説得力ある対案を示せませんでした。例えば、集団的自衛権にしても一足飛びに「明日にも戦争、徴兵制がやってくる」といった形で危機感をあおる。もちろん、その可能性が将来的にないとは思いませんが、今すぐにでもやってくるというような物言いで動員しようとしているように見えます。「俺の正義」をぶつけるだけでは共感が広がりませんし、何より議論が成立しません。

 リベラル勢力のあり方に僕が決定的に違和感を覚えたのは、東日本大震災と福島第1原発事故の後です。確かに原発反対は感情としては非常に理解できます。しかし、原発反対と「福島はもう人が住めない」「福島は終わった」といった福島dis(ネット上では「disる」=中傷する=といった意味で使われる)を結びつけたがる層が一定数いました。

 僕の妻は福島県の出身で、現場から支援にも関わりました。そこで見る福島と反対運動を通して語られる福島はまったく違うわけです。生活している人が実際にいるにもかかわらず、「全員避難」といった主張をする人もいる。ここで穏健的な人たちと社会的共感が切れる形になってしまったと思います。

 僕はNPOをやっているので、リベラルなほうだと社会的に位置づけられています。その僕ですら、やっぱり違うと思ってしまった。やはり、このスタイルの延長線上に未来はない。

 では政権与党の自民党はどうか。経済政策に関しては比較的賛成できる点もあります。しかし、子供は親が面倒を見るべきだ、といった伝統的な家族観を口にする議員も多い上、社会保障や社会的弱者に対する考え方も生活保護バッシングに乗っかるなど賛同できない点が多々あります。

 そうすると、権力は絶対に腐敗する以上、健全な対立軸は必要です。今の日本の政治状況は中道左派がぽっかり空いている。そこに新たな思想を確立しないといけないのではないか。僕の中ではそれを「新しいリベラル」と暫定的に呼んでいます。

 --例えば、経済成長を否定せずに社会的弱者への再分配も考えていくとか、社会の多様性に目配りをするといったイメージでしょうか。

 駒崎さん そうですね。スローガンは「強くて優しい日本」とまとめられると思います。「強さ」は現実的な安全保障が必要といった議論です。現実にある脅威に対して、外交的な努力を通じて回避していく。その一方で、「優しさ」では、伝統的な家族観ではなく拡大家族観、例えば事実婚や夫婦別姓を認め、LGBT(同性愛者など性的マイノリティーの総称)が家族になるとか、里親として子供を育てるといったことも政策として位置づける。

 さらに日本に「経済成長はもういらない」といった考えではなく、成長を否定せずに再分配を考えていく。ただし、経済成長も何かを犠牲にするとか、ブラック企業的なものをはびこらせていくという発想ではなく、イノベーションが生みやすくなるよう無駄な規制を緩和していくとか、政府が創造性を邪魔しないようにする政策が望まれます。成長の在り方もいろんな形があるという議論をしたいのです。

 憲法も「直す部分は直していい」。しかし、憲法の基礎たる「国民の国家への命令」、いわゆる立憲主義的な考えは維持しましょうという考えです。「9条を守れ」的なノリも、憲法に硬直的な家族観を持ち込むとかも勘弁してほしいわけです。

 ◇現場は白黒ではない。問題解決には妥協も必要

 --なぜ、いまのタイミングで主張するのでしょうか。

 駒崎さん 僕は民主党に政権交代した後、鳩山(由紀夫)政権で半年ほど政治任用という形で内閣府非常勤国家公務員として官僚の仕事を経験しました。

 政策決定の現場を中からみると、思っているほど物事は白黒つけられないことが分かりました。政策を決めるときは、「みんなが不満かもしれないが一番マシなもの」をある種の妥協の末に生み出すことになる。これが政治だったのです。実際、リアリズムを肌で感じたことで、ただ理想を打ち出せば良いという考えはできなくなりました。

 例えば担当した寄付税制政策でも同じ問題に関心を持っている自民党議員と民主党議員の差よりも、民主党内の温度差の方が問題として大きかった。単純に党の問題に還元されない問題もあると知りました。

 ある社会問題をリアルに解決しようと思うなら、反対派の意見も聞き、財源の問題も考えた上で、必要なら100%の解決ではなくなりますが、妥協する必要もあります。そうしないと解決しません。反対するだけの姿勢は誰かを「悪」だと決めつけて簡単な方に逃げているように僕には見えます。「友-敵」図式に逃げ込んでいるようでは解決しないのです。

 どの政党も頼れない。ならば自分たちの世代から新しい思想を議論しないといけない、と思ったのです。

 僕も関わった政策でいえば、来年度から「子ども・子育て支援新制度」(http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/)が始まります。「保育の市場原理が導入される」といった批判も寄せられますが、ではどうしたら待機児童問題を解決できるのか。僕の考えでは企業参入は大きな論点ではないのです。それより、まともな運営者が残る制度設計が大事。確かにこの政策で100%の解決とは思いませんが、必要なのは対案だと思います。

 ◇草の根ロビー活動で民主主義をハックする

 --もっとリアルに政治に関わる必要がある、とも主張していますね。

 駒崎さん 政治に対していろいろな関わり方があります。例えばデモはやってもいいと思いますよ。しかし、問題解決のために必要なのは前に進める議論だと思います。

 僕が勧めているのは、現実にある制度を活用した草の根ロビー活動です。解決したい社会問題について、政治家や官僚にパワーポイントなどで資料を作って持っていく。ちゃんとしたロジックなら意外と話を聞いてくれます。こうやって民主主義をハック(ハッキング=改変)していくことが大事だと思っているのです。

 これは自治体レベルでもそうですよ。陳情書一つで変わっていくことだってあるのに、多くの人は知らない。議会には「陳情」と「請願」という市民の声を届ける制度が用意されています。しかし、現実ではこの違いもみんな知らない。「陳情」は誰でも出せますが、「請願」には議員の紹介が必要です。誰を担いで請願を出すか、といったところも考えていけば、思いがけない成果を上げることもできるのです。

 政治家だって選挙で選ばれる以上、目に見える実績を探しています。そこにちゃんとまとめた請願書を持っていき、議会で取り上げてもらえば、住民としても問題解決。政治家も実績を作れる。ウィンウィンの関係にあるのです。これが分かっていない。

 政治家と対決姿勢で行くよりも、実際に解決すべき問題を訴え、彼らを使っていく方が問題解決のためにはずっと大事です。政治に声を届けるツールはあるのです。

 草の根ロビーの可能性はまだまだ過小評価されていると思います。特に伝統的な市民運動の世界ではそうです。シンポジウムや署名もやらないよりは良いでしょう。例えば近隣の公園を犠牲にする都道建設をやめさせるというケースで考えてみます。

 僕ならまずスーツを着て、東京都議会の与党都議をつかまえてロビー活動をする。そこから都知事に訴える機会を作ってもらいつつ、問題のキーマンに働きかける経路を作るところから始めます。あるいは、そこから超党派に働きかけ都議会で取り上げてもらうといったやり方も可能でしょう。ダイレクトに意思決定の現場に直接働きかける運動を展開することが大事です。さらにメディアにも働きかけ、自分たちの主張を訴える。記事に取り上げてくれたら、そのコピーを持って、さらに都議や都庁に働きかける。

 こうした方法論を共有することで、例えば安全な通学路を作るといった地元の課題を解決することもできます。リベラルはかつては批判によって立場を表明していけば良かったのでしょうが、批判だけでは何も生まれない時代に突入しているのです。

 ◇新しいリベラルのイメージを「見える化」

 --新しいリベラルが政治の場にあるというのは重要だと思います。潜在的に必要としている層は多いと思いますが、どう広げていけばいいのでしょうか。

 駒崎さん 僕も一定数はいると思います。新たな中道左派的な政党は必要ですが、どこが担うのでしょうか。僕にはそれ以上のビジョンはないです。

 先ほど、僕が話したパッケージに共感してくれる人たちは少なくない。「まあ、そういう日本なら良いよね」と思う人たちに向けて新しいパッケージを「見える化」して届くようにしておきたいですね。

 自分がどこまで関わるかは考え中ですが、民間の有識者が考える「明日の日本像」みたいな本かウェブを作って、共感できる人を広げていくことが必要だとは思います。

 「次世代が考える2030年の日本」というビジョンを作っていくのもいいでしょうね。そのころの日本政府は組織や世帯よりもより個人に対してセーフティーネットを張っている。会社に行くと子育てしながら、介護しながら働く人々が当然いる。働き方も柔軟で、友達には男女のカップルだけでなくLGBTもいて、同性カップルも子育てをしている。自閉症の子供もコミュニケーションに問題は抱えているが、しかし計算能力は高い。マイナスをゼロにするのではなく、1を10にする、能力を生かす教育にしていく……。

 こうなったらすてきだよねっていうビジョンも打ち出して、もっとわくわくするような未来を描く。その上で、必要な制度や課題を整理してどう改革するかといった議論が必要でしょう。アクションリストも作って政策を変えていければさらに良いですよね。

 --確かに働き方やライフスタイルの話は関心が集まりやすい。ライフスタイルから政治を考えていくというアプローチは必要かもしれません。

 駒崎さん ライフスタイルを選ぶことはまさに「政治」です。そこから政治に入っていく経路が必要です。働き方なら労働基準法の問題にもつながるよ、とか。こんな生活になったらいいよなというイメージから入って、それを実現するための制度を作ろうとか、法律を変えようといった話ができるようになるといいですよね。実現したい社会像から実現可能な政治像を示す。共感できる人たちと一緒に、新しいリベラルを作るための議論を始めていければいいと思っています」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141006-00000000-maiall-soci

10月6日の放射線量

2014-10-06 14:27:42 | 放射能
新潟県内・長岡、天気は雨、窓締め切りでエアコンオフ。

台風襲来。

朝の民放の報道はもっぱら首都圏直撃ということで台風一色。

日本の民放は東京とその周辺以外はなにも見ていないんだなと改めて実感する。


0.08μ㏜/h。

やはり雨だと少し上がる。

逆説のアベノミクス 2014年10月2日   田中 宇

2014-10-06 14:27:00 | 政治
「 逆説のアベノミクス

2014年10月2日   田中 宇
この記事は「経済の歪曲延命策がまだ続く?」(田中宇プラス)の続きです。

 日本銀行は今年8月、日銀史上最大額の株式を買い支えた。日銀は8月、ETF市場を通じて1236億円分の日本株を買った。毎日、朝方に株価が下がると、日銀が100億-200億円分の株をETFで買い、株価をテコ入れするのが常で、日銀の株買い支えは市場関係者の間で広く知られたことだった。日銀は以前から株が下がると買い支えてきた。9月は株価が下がらなかったので買い支えをしていないという。日銀は、東証の株式の時価総額(480兆円)の1・5%にあたる7兆円分を保有し、日本生命を抜いて最大の日本株保有者となった。 (Bank of Japan emerging as big Japanese stock buyer)

 日銀は特に8月第一週に、924億円分の株を買い入れた。アベノミクスの失敗が取り沙汰されて株が下落した時期で、日銀が買い支えなければ株価はもっと下がっただろう。経済成長の実現は、アベノミクスの3本目の矢である。安倍政権は、株価の上昇が続いていることをもって、経済成長が実現していると言っている。その株価が下落しそうなときに、総裁を黒田にすげ替えて財務省に乗っ取らせて以来、安倍政権の命令を何でも聞くようになった日銀が株を買い支え、株価をテコ入れし、アベノミクスの成功が続いているように装っている。かなりインチキな技であるが、今の日本でこれを批判する人は少ない。 (Bank Of Japan Buys A Record Amount Of Equities In August)

 当局が株を買い支えるのは、相場の不正な操作であり、大っぴらにやるべきことでない。米国の連銀や政府も、株価が下がると買い支えてテコ入れする策(Plunge Protection Team)をやってきたが、米当局は隠然と買い支えをやっている。対照的に今の日銀は、市場や国民に買い支えがわかってもかまわないという態度で、大っぴらに株式や日本国債の買い支えをやっている。 (BOJ Steps Up ETF Purchases as Shares Slump) (米株価は粉飾されている)

 日銀が大っぴらに株価の不正操作をやる理由は、これによって投資家に「株は下がり出すと日銀が買い支えるので上がりやすい。今が買い時だ」という印象を持たせ、株を買う人を増やし、株が上がっている限り安倍政権はアベノミクスの経済成長策が成功していると豪語でき、人気を保持できるという策略だろう。 (Bank Of Japan Plunge Protection Team Goes Into Overdrive, Buys Most ETFs Since 2010)

 その手法は完全な不正だが、日本にとって絶対の「お上」である米国が、中央銀行による通貨の過剰発行によって債券や株を買い支える量的緩和策(QE)をやり、日本など他の先進諸国にも奨励しているのだから、QEの一環である日銀による株価操作は「良いこと」「やるべきこと」になる。株価操作を「悪」だという奴は「お上」である米国に楯突く非国民だ、ということになる。 (時代遅れな日米同盟)

 安倍政権は日銀だけでなく、国民年金基金にも株式を買う割合を増やすよう命じ、株価のテコ入れに余念がない。株価の不正なテコ入れは長期的に成功し続けるものでなく、いずれバブル崩壊的な株価急落に見舞われ、年金基金も赤字になって、今の若い人が老人になるころには年金支給額が大幅に減るだろう。しかし安倍政権にとっては、自分たちの政権が続いている間だけ株が上がり続ければ良く、その後の年金支給がどうなろうと関係ないのだろう。 (Japan Pension Giant Signals Portfolio Shift)

 アベノミクスの3本の矢は、資金増加、財政支出、経済成長であるが、これらはすべて、米国当局が、日本や欧州などの同盟諸国にやらせたいことだ。資金増加とは、米連銀や日銀がやっているQEのことであり、08年のリーマン倒産後、流動性が欠如したままの債券金融システムに当局が資金を注入し続ける、植物人間化した金融システムへの生命維持装置である。米国だけが通貨(ドル)を大量発行し、日本や欧州が引き締めたままだと、ドルの価値が下がりすぎるので、日本や欧州にもQEをやらせたい。 (さらに弱くなる日本)

 2本目の矢である財政出動もQEと同様、公的資金で経済を回し(米国の)金融界を救済するものだ。米国はすでにリーマン倒産後の2年間で財政出動をやり尽くし、これ以上赤字を増やせない法定財政上限に達している。そこで米国は、安倍政権になるまで財政緊縮をやっていた日本に方向転換を迫り、安倍政権になってから、それまでの財政再建の話はどこ吹く風で、財政赤字の急拡大が奨励されている。3本目の矢である経済成長は、見かけ上のものだ。日米ともに、QEによる資金供給で株価を操作し、雇用統計などを粉飾するかたちで行われている。米国の例は、前回の記事に書いたとおりだ。 (経済の歪曲延命策がまだ続く?) (米雇用統計の粉飾)

 日本の場合、失業率は統計上3%台だが、新卒者の就職な困難さ、失業した中高年の再就職が困難さなどから考えて、実際の失業率はそれよりはるかに高く、10%を超えていると推測される。政権の人気取りのため「お上」である米国と似たような方法で、日本の当局が失業率を粉飾していることは十分に考えられる。 (Japan's Labour Market: Lifers, temps and banishment rooms) (Japan's Hidden Unemployment Problem) (Abenomics Is Working: Japanese Households On Welfare Rise To Record)

 日銀がQEで円を過剰発行するのと連動して、為替市場の円安が進んでいる。これまで円安は日本の輸出産業を繁栄させるので良いことだとされてきた。しかし実のところ、円安が進んでいるのに日本を代表する輸出企業だったソニーが破綻に向かっているなど、製造業の不振がひどくなっている。日本経済の大黒柱だった製造業の不振の加速から考えても、最近の失業率は粉飾である感じが強い。 (Abenomics Crushes Sony: Electronics Giant Forced To Cancel Dividend For First Time Ever)

 大手の輸出企業の中には、生産工程を国際化して円だけの為替の影響を受けにくくなっているところが多く、以前からの円安待望論は浅薄な間違いである。今の円安は、むしろ輸入価格の上昇を招き、貿易収支のひどい赤字化を生んでいる。このまま貿易赤字が改善しないと、今後の日本は衰退感が増していくだろう。私が見るところ、日本が円安(ドル高)を望むのは、経済的な理由からでなく、覇権国である米国より劣った存在であり続けねばならないという国際政治の理由からだ。 (日本経済を自滅にみちびく対米従属)

 国際的に強い国、(地域)覇権国になるには、通貨が強く(為替高)、財政が強く(財政黒字)、製造業など経済生産が強く(持続的成長)なければならない。通貨が強いと他国への支払いが自国通貨で行えるし、財政が強いと戦争に強いし、国債を外国に買ってもらう必要もない。通貨が強いと輸出産業が苦戦するが、それを補うだけの技術力・開発力を持つことで、為替が強くても強い製造業を持てる。今の世界でこれをやっているのはドイツだ。 (金地金不正操作めぐるドイツの復讐) (ドイツの軍事再台頭)

 米国は自国の延命のため、日欧にも自国同様のQEや財政赤字化を求め、世界中の通貨と財政を横並びに弱体化させようとして、日本は米国の要求に完全に応えたが、ドイツ(EU)は拒否している。そのためEUは、ギリシャなど周辺の弱い部分の国債市場を米国の投機筋に攻撃され、ユーロ危機によって強制的に財政や通貨を弱体化させられている。 (ユーロ危機からEU統合強化へ) (Mario Draghi pushes for ECB to accept Greek and Cypriot ‘junk’ loan bundles)

 ドイツと対照的に日本は、経済力で米国を抜きそうになった1980年代から、米国を抜くことを回避するように、通貨安、財政赤字化をずっと追求し、バブル崩壊を放置して金融や経済を自ら弱体化している。日本人はもともと倹約を美徳とする民族なのに、財政赤字の急拡大が黙認されてきた。これらは、対米従属を続けるためという国際政治上の日本の国是の維持のために行われてきたと考えられる。 (財政破綻したがる日本)

 人為的な政治でなく「自然」な経済の動きで説明したがる人が日本に多いが、実のところ、経済が為な「市場原理」「需給」で動いていると考えるのは馬鹿げている。重要な経済の動きの多くは、官僚らによる政治的な意志決定に基づいており、本質を隠すため、経済学者やマスコミが動員され、政治でなく自然な動きであると国民に思わせている。近年、先進諸国における株価、金利、債券相場、雇用や物価など経済統計、為替相場、金相場など、これまで「自然な市場原理」で動いてきたと考えられてきた重要指標の多くが、実はずっと以前から金融界や当局の政治的な操作によって上下してきたことが暴露されている。経済ぐらい政治的なものはない。日本人がそれを知らないのは、対米従属(官僚独裁)の敗戦国民だからだ。 (揺らぐ経済指標の信頼性) (Banks could face record fines totalling £1.8bn over currency rigging)

 通貨を過剰発行すると、どこかの時点でひどいインフレ(物価高騰)になると考えるのが、従来の経済学の常識だった。しかし今の世界では、10年以上通貨の過剰発行を続けてもインフレになっていない。これは、従来の経済の大部分が実体的な商品(モノ)で構成されていたのと対照的に、今の経済はモノがない金融が肥大化し、金融がモノの経済(実体経済)の何百倍もの大きさになっているため、通貨の過剰発行がモノの価格高騰に直結しなくなっているからと考えられる。今の経済では、物価上昇の代わりに金融部門で信用収縮や金利高騰、つまりバブル崩壊が起きる。

 アベノミクスは、日本を(中国に負けないよう)強くするため、国民生活を良くするための政策として打ち出されたが、実のところ、米国の弱体化に合わせて日本を弱体化する策であり、円を弱くし、日本の財政を弱くし、国民生活を悪化させている。アベノミクスは、米国の命令に従って、日本を意図的に弱くしている。中国は「敵」として置かれているが、それは日本が米国の言いつけどおり防衛費を増やすための口実的存在でしかない。中国は日本にとって本質的な敵でない。日本人は、政府や傘下のプロパガンダ機関から「中国を嫌え」と示唆されているが「中国と戦え」とは示唆されていない。戦えと示唆されたら、観光で訪日した中国人を殴りたがる人がもっと多くなるはずだ。今の日本政府が気にしているのは米国だけだ。 (Japan's factory output falls in August)

 米当局は、QEなどの金融救済策を続けずに放置したら米経済が崩壊すると知っている。従来の危機対策のように、救済策を一定期間続けたらその後は自律的に経済が上向くのでなく、救済策を永久に続けねばならないと知っている。しかし、救済策を永久に続けることなどできない。だから米当局は困窮し、相場の不正操作や経済統計の歪曲など、長期的に見ると自滅策になることを含む、なりふりかまわぬ「何でもあり」の延命策を続けている。短期的なバブルの大崩壊を回避できるなら、長期的な自滅策の方がましだというわけだ。 (It's The Dollar, Stupid!)

 安倍政権は、日本でも米国のコピーの「何でもあり」の策をやるための政権として生まれた。経済面だけでなく、軍事面でも従来のタブーを破って米国の要求に沿った「集団的自衛権」の行使を国策に取り込んだ。国内の反対勢力の無力化と官僚独裁体制の強化の中で、財務省はかねてからやりたかった消費税値上げを敢行した。見かけだけの経済成長、多くの人の所得の減少、失業の実質的な増加、貧富格差の拡大など、貧しい人が増える中で消費税の値上げをするのはタイミングとして悪く、日本の衰退に拍車をかける。しかし消費増税は安倍政権に政治力があるうちにしかやれないので財務省は敢行した。 (集団的自衛権と米国の濡れ衣戦争)

 マスコミに対する言論統制も強化されている。象徴的なのが、戦争犯罪報道の「誤報」をめぐる、官民挙げての朝日新聞たたきだ。8月の株価急落が象徴するように、今後アベノミクスの失敗が露呈する可能性がある。その前に、安倍政権に楯突きそうなマスコミ内の勢力をできるだけ無力化しておく必要がある。朝日新聞の尊大な社風を考えると「ざまあみろ」でもあるが、今の朝日たたきの本質は、朝日新聞がどうなのかという話でなく、マスコミ全体に政府批判を許さなくするための、安倍政権の延命策として見る必要がある。

 いずれ安倍首相が退陣しても、米国が今の金融救済策・覇権延命策を続けている限り、誰が日本の政権に就いても、安倍と似たようなことをやり続けるだろう。日本が対米従属をやめて自立する戦略は、09年に民主党の鳩山・小沢が試みたが官僚機構から猛反撃されて潰されて以来、再起の可能性がほとんどない。日本の方から対米自立していく道は閉ざされている。 (鳩山辞任と日本の今後) (まだ続き危険が増す日本の対米従属)

 すでに述べたように、米国は延命策をやめたらバブル大崩壊だ。米国は延命策を効かなくなるまでやり続け、最終的にバブル大崩壊するだろう。それまで何年かかるのかわからないが、その間ずっと日本は対米従属で、米国に求められるまま、自分で自分を弱める策をやり続けることになりそうだ。非常に暗い結論なので、日本のことはあまり書きたくなかったのだが、大事な話なので書くことにした。」