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白夜の炎

原発の問題・世界の出来事・本・映画

「「原発ゼロ撤回」先送り 都知事選 争点化を政権懸念」東京新聞

2014-01-17 10:29:17 | 政治
 日本政府の基本方針は「ごまかし」と「うそ」。先送りして、選挙が過ぎれば元の木阿弥。本当に日本の市民、そして原発の被害を受けた人たちを馬鹿にしきっています。

 何としても都知事選で宇都宮氏を当選させ、原発依存からの脱却と安倍政権の退陣につなげましょう。

 「「脱原発」が東京都知事選(二十三日告示、二月九日投開票)の主な争点の一つになる見通しになったことで都知事選の結果次第では、安倍政権のエネルギー政策が修正を迫られる可能性が出てきた。政府は原発の再稼働方針を明確にするエネルギー基本計画の一月中の閣議決定を目指してきたが、与党内の慎重論に加え、知事選で争点化されるのを避けるため、先送りを余儀なくされた。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は十六日の記者会見で、閣議決定が二月以降にずれ込むかとの質問に「与党としっかり相談して進める」と、否定しなかった。

 政府は同計画案で原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置付けた。これに自民党内の脱原発派議員や公明党が反発し、決定に踏み切れないでいた。加えて、都知事選で計画の是非が議論され、脱原発候補を利するのは得策ではないとして、政府内で先送り論が強まった。

 さらに、脱原発候補が都知事選で健闘すれば、与党内の脱原発勢力が勢いづいて、閣議決定はさらにずれ込みそうだ。脱原発派が問題視する「基盤となる~」との文言の修正に追い込まれる事態も現実味を帯びてくる。

 また、都は東京電力の大株主。知事選の結果が東電の再建計画に影響するのは避けられない。

 東電の再建計画は二〇一二年三月以降、全七基が停止している柏崎刈羽原発(新潟県)を再稼働させ利益を生み出すことを前提に組み立てられている。

 顧客である電力消費者の都民から「原発ノー」の民意を突きつけられた場合、それでも再稼働を進めれば強い批判を浴びる。脱原発派の知事が誕生し、株主として再稼働反対を訴えればなおさらだ。再稼働ができなければ、東電は再建計画の見直しを迫られることになる。

 都知事選は、前日本弁護士連合会長の宇都宮健児氏(67)と元航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄氏(65)、細川護熙(もりひろ)元首相(76)、元厚生労働相の舛添要一氏(65)の有力四氏が争う構図。

 宇都宮氏は「脱原発」を掲げる。細川氏は原発政策を最大の争点に据える。舛添氏は「私も脱原発」とするが「代替エネルギーが確保できた場合」との条件付きだ。

<エネルギー基本計画> 政府が長期的な国のエネルギー政策の基本的方針を示すため策定。2003年に初決定し、おおむね3年ごとに改定している。安倍政権は民主党政権が打ち出した「30年代原発ゼロ」の方針を撤回する方向で議論を進めている。昨年12月に経済産業省の審議会が原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置付ける基本計画案を了承した。
(東京新聞)」

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014011790070018.html?ref=rank

熊本日日新聞の細川評価

2014-01-15 14:16:17 | 政治
「「自分がどう感じるかということよりも、自分がどう見えるかということに関心を持つ」。米国の精神科医A・ローウェンが「ナルシシズムという病い」に書いている。むろん、ナルシシストについての定義だ

▼このタイプの人は自分の感情よりも「自分がこのように見えているだろう」というイメージを大事にするという。多少なりとも誰にでもある傾向だが、政治家や芸能人に目立つ

▼細川護熙氏が東京都知事選に立つという。熊本には縁が深い方だが、「見せ方」「見え方」にこだわりが強いようにも感じる。その決断には何度も驚かされてきた。熊本県知事や首相への去就、任期途中での衆院議員辞職、陶芸家への転身など

▼細川さんからすれば、イメージの創造に成功したのかも。その際の「決めぜりふ」も忘れがたい。県知事引退の時は「権不十年」、衆院議員の引退時は「60歳で政界引退を決めていた」「今後は晴耕雨読」

▼格好はいいのだが、すべてが後講釈で、いつしかほごになりがちなのがちょっと残念だ。「60歳引退は選挙の時に言うべきでは」と聞いたこともあるが、納得できる説明はなかった

▼今回の立候補の動機には反原発があるという。小泉純一郎元首相も唱えている。こちらもなかなか「見せ方」を知る人。言葉の使い方もうまい。もし細川氏を支援すれば、風を起こそうとするだろう

▼ただし、衆院選を郵政民営化だけで戦うような劇場型選挙はごめんだ。そのツケは大きい。細川さんも晴耕雨読で学ばれたことだろう。」

http://kumanichi.com/sinseimen/201401/20140111001.xhtml

秘密保護法廃止へ共同を マスコミ九条の会とJCJ会見 ジャーナリストら62人呼びかけ

2014-01-15 10:53:56 | 政治
「マスコミ九条の会と日本ジャーナリスト会議(JCJ)は14日、東京都内で記者会見を開き、秘密保護法廃止と安倍内閣の退陣を求める共同行動を呼びかけました。



 会見では、作家の澤地久枝さんが「秘密保護法は、世界が情報公開を求めている時に180度後ろを向いた法律。政治家がやっている政治にどれほど自信がないかのあらわれ」と批判しました。

 元NHK経営委員で国立音楽大学の小林緑名誉教授は、「NHKは『アベさまの』ではなく、『みなさまのNHK』に徹していい番組を作ってほしい」とのべ、NHK経営委員の選考での安倍内閣の政治介入に強い危惧を表明しました。

 元共同通信編集局長の原寿雄さんは「靖国神社の参拝と秘密保護法の二つをみても安倍首相が国家主義者であることが確認できる。国民運動を発展させるために私もやれることをやりたい」とのべました。元朝日新聞記者の、むのたけじさんや作家の落合恵子さんらも発言しました。」

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-01-15/2014011514_01_1.html

特定秘密保護法理解のための文献

2014-01-09 17:49:55 | 政治
特定秘密保護法を理解する上で参考になった文献を以下に紹介します。

1 「諸外国における国家秘密の指定と解除 ―特定秘密保護法案をめぐって―」
  国立国会図書館 「調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 806(2013.10.31.) 」
  国立国会図書館 調査及び立法考査局行政法務課 (今岡直子)

(http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8331133_po_0806.pdf?contentNo=1)

 諸外国-民主主義国家-の例を詳細に紹介しています。


2 弁護士 深草徹氏執筆の下記の論稿

(1) 「特定秘密保護法廃止のために―問題点をえぐる5本のメス」
  
 (http://members.jcom.home.ne.jp/katote/data37.pdf)

(2) 「アメリカと比べてこんなにひどい特定秘密保護法」

  (http://members.jcom.home.ne.jp/rikato/data36.pdf)

(3) 「世界に通用しない特定秘密保護法 」

  (http://members.jcom.home.ne.jp/rikato/data34.pdf)


安倍の靖国参拝に関する The Economist の社説

2014-01-09 16:44:55 | 政治
「安倍晋三首相が危険な賭けに出た。

安倍首相の靖国参拝、米国は「心から失望」

12月26日、安倍晋三氏が日本の首相として7年ぶりに靖国神社に参拝したことは、外交上の大失態だったように見える。

 中国、韓国、米国は揃って、250万人の日本の戦没者とともにA級戦犯14人の霊が合祀されている靖国神社に安倍首相が参拝することに反対する姿勢を明確にしてきた。しかし安倍氏は、2006~07年の第1次安倍政権の際に靖国神社に参拝しなかったことを後悔していると述べていた。

 安倍氏は多分に、失うものはほとんどないと感じ、今、諸外国の反応により靖国参拝の決断が正当化されたと判断しているのだろう。

安倍首相の読み

 中国、韓国両政府は予想通りの激しい反応を示した。中国のある報道官は、安倍氏は「侵略を美化している」と非難し、靖国神社で祈りを捧げられている戦犯を「アジアのナチス」と呼んだ。韓国は「遺憾の意と憤り」を表明した。靖国参拝は東南アジアも動揺させた。このような問題にはめったに口を挟まないシンガポールでさえ、安倍氏の靖国参拝に遺憾の意を表明した。

 米国もこの挑発に当惑し、怒りを覚えた。日本にとって最も親密な同盟国である米国の政府高官らは安倍氏に対し、靖国神社に参拝しないよう何度も訴えてきた。

 安倍氏としては、沖縄県の人口の少ない地域へ普天間基地を移設させる念願の計画に承認を取り付けるうえで進展があったという12月27日のニュースが米国の苛立ちを和らげることを期待したのかもしれない。しかし、2001~06年の小泉純一郎元首相による計6回の靖国訪問に無言を通した米国は、今回は「失望」を表明した。

 だが、米国の非難はそこそこ穏やかで、日本と「その近隣諸国」に関係改善に向けて努力するよう求めていた。さらに安倍氏は、韓国と中国の脅しはあまり威力がないと考えた可能性さえある。

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は既に、安倍氏との会談を一切拒んでいた。韓国政府と日本との険悪な関係は、米国にとっては懸念材料だが、韓国の国民や企業にとってはそうではない。

 中国について言えば、中国政府は反日デモを促さなかったし、貿易制裁も科さなかった。実際、普段は超国家主義的な「環球時報」の社説は、安倍氏の挑発に抑制の利いた態度で応じ、「大規模な経済制裁」を避けるよう主張した。

 中国は安倍氏との首脳会談に一切応じないことにしたが、論争となっている尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡る緊張は、そもそも日中首脳会談などあり得なかったことを意味していた。

 このため、安倍氏の賭けは今のところ、そこそこリスクが小さく見える。靖国参拝は明らかに、安倍氏が戦後の屈辱的な平和憲法と見なしているものから日本を解放したいという自身の願いと合致している。

 参拝のタイミングは計算ずくだった。中国は昨年11月、日本の防空識別圏(ADIZ)と重複し、日本の支配下にある尖閣諸島を含む東シナ海の海域に自国のADIZを設定したと発表した。安倍氏は中国の自己主張の行為を、自身の国家主義的な一歩の隠れ蓑と見なしたのかもしれない。

 安倍氏は、この地域全体の日本に対する友好ムードの高まりにも励まされたことだろう。同氏は1年前に首相に就任してから、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国をすべて訪問しており、12月には日本とASEAN諸国の首脳会議を主催した。

 カンボジアなど、中国の忠実な友好国と見なされているASEAN諸国でさえ、飛行の自由の重要性に関する共同声明に合意した。これは、穏やかとはいえ暗に中国を批判するものだ。

靖国参拝を恒例行事にしたら・・・

 中国の台頭に対する懸念は、多くのアジア諸国や米国さえもが、いくら不快だと思っても安倍氏の挑発を我慢する用意があることを意味している。

 不吉にも、安倍氏の顧問の1人は、同氏が靖国参拝を毎年の恒例行事にするかもしれないと話している。安倍氏が今回、うまく難を逃れられたように見えることは、今後もやりおおせるという保証ではない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39606

もはや安倍は無能扱い/WPより

2014-01-01 16:26:49 | 政治
'Shinzo Abe’s inability to face history

By Editorial Board, Published: April 27, 2013

FROM THE MOMENT last fall when Shinzo Abe reclaimed the office of Japanese prime minister that he had bungled away five years earlier, one question has stood out: Would he restrain his nationalist impulses ― and especially his historical revisionism ― to make progress for Japan?

Until this week, the answer to that question was looking positive. Mr. Abe has taken brave steps toward reforming Japan’s moribund economy. He defied powerful interest groups within his party, such as rice farmers, to join free-trade talks with the United States and other Pacific nations that have the potential to spur growth in Japan. He spoke in measured terms of his justifiable desire to increase defense spending.


This week he seemed willing to put all the progress at risk. Asked in parliament whether he would reconsider an official apology that Japan issued in 1995 for its colonization of Korea in the past century, Mr. Abe replied: “The definition of what constitutes aggression has yet to be established in academia or in the international community. Things that happened between nations will look differently depending on which side you view them from.”

Officials in South Korea and China responded with fury, and understandably so. Yes, history is always being reinterpreted. But there are such things as facts. Japan occupied Korea. It occupied Manchuria and then the rest of China. It invaded Malaya. It committed aggression. Why, decades after Germany solidified its place in Europe by facing history honestly, are facts so difficult for some in Japan to acknowledge?

We understand that South Korea and, to an even greater extent, China at times stoke anti-Japan sentiment for domestic political purposes. China distorts its own history and, unlike Japan, in many cases does not allow conflicting interpretations to be debated or studied. But none of that excuses the kind of self-destructive revisionism into which Mr. Abe lapsed this week.

An inability to face history will prejudice the more reasonable goals to which South Korea and China also object. Mr. Abe has valid reasons, given the defense spending and assertive behavior of China and North Korea, to favor modernization of Japan’s defense forces. He has good reason to question whether Japan’s “self-defense” constitution, imposed by U.S. occupiers after World War II, allows the nation to come to the aid of its allies in sufficient strength. But his ability to promote reform at home, where many voters remain skeptical, and to reassure suspicious neighbors plummets when he appears to entertain nostalgia for prewar empire.'

http://www.washingtonpost.com/opinions/shinzo-abes-inability-to-face-history/2013/04/26/90f5549c-ae87-11e2-a986-eec837b1888b_story.html

天皇・80歳誕生日の会見/安倍政権を明らかに批判している。

2013-12-23 11:08:20 | 政治
「 天皇という立場にあることは、孤独とも思えるものですが、私は結婚により、私が大切にしたいと思うものを共に大切に思ってくれる伴侶を得ました。皇后が常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できたことを幸せだったと思っています。

 これからも日々国民の幸せを祈りつつ、努めていきたいと思います。

(問2)両陛下が長年続けられてきた「こどもの日」と「敬老の日」にちなむ施設訪問について、来年を最後に若い世代に譲られると宮内庁から発表がありました。こうした公務の引き継ぎは、天皇陛下と皇太子さまや秋篠宮さまとの定期的な話し合いも踏まえて検討されていることと思います。現在のご体調と、こうした公務の引き継ぎについてどのようにお考えかお聞かせください。

陛 下 「こどもの日」と「敬老の日」にちなんで、平成4年から毎年、子どもや老人の施設を訪問してきましたが、再来年からこの施設訪問を若い世代に譲ることにしました。始めた当時は2人とも50代でしたが、再来年になると、皇后も私も80代になります。子どもとはあまりに年齢差ができてしまいましたし、老人とはほぼ同年配になります。再来年になると皇太子は50代半ばになり、私どもがこの施設訪問を始めた年代に近くなります。したがって再来年からは若い世代に譲ることが望ましいと考えたわけです。この引き継ぎは体調とは関係ありません。

 負担の軽減に関する引き継ぎについては、昨年の記者会見でお話ししたように、今のところしばらくはこのままでいきたいと思っています。

(問3)今年は五輪招致活動を巡る動きなど皇室の活動と政治との関わりについての論議が多く見られましたが、陛下は皇室の立場と活動について、どのようにお考えかお聞かせください。

陛 下 日本国憲法には「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定されています。この条項を順守することを念頭において、私は天皇としての活動を律しています。

 しかし、質問にあった五輪招致活動のように、趣旨がはっきりうたってあればともかく、問題によっては、国政に関与するのかどうか、判断の難しい場合もあります。そのような場合はできる限り客観的に、また法律的に、考えられる立場にある宮内庁長官や参与の意見を聞くことにしています。今度の場合、参与も宮内庁長官はじめ関係者も、この問題が国政に関与するかどうか一生懸命考えてくれました。今後とも憲法を順守する立場に立って、事に当たっていくつもりです。

(関連質問)質問させていただきます。先日、陛下は皇后さまとインドを訪問され、日印の友好親善を更に深められました。53年ぶりとなったインド公式訪問のご感想をお聞かせ願うとともに、国際友好親善に際して陛下が心掛けていらっしゃることについても併せてお聞かせください。

陛 下 この度のインドの訪問は、インドとの国交60周年という節目の年に当たっておりましてインドを訪問したわけです。

 インドを初めて訪問しましたのは当時のプラサド大統領が日本を国賓として訪問されたことに対する答訪として、昭和天皇の名代として訪問したわけです。当時は、まだ国事行為の臨時代行に関する法律のない時代でしたから、私が天皇の名代として行くことになったわけです。

 当時のことを思い起こしますと、まだインドが独立して間もない頃、プラサド大統領は初代の大統領でしたし、これからの国造りに励んでいるところだったと思います。ラダクリシュナン副大統領は後に大統領になられました。それからネール首相と、世界的に思想家としても知られた人たちでしたし、その時のインドの訪問は振り返っても意義あるものだったと思います。

 そして、私にはそれまでヨーロッパと中国の歴史などは割合に本を読んだりしていましたが、その間に横たわる地域の歴史というものは本も少なく、あまり知られないことが多かったわけです。この訪問によって両地域の中間に当たる国々の歴史を知る機会に恵まれたと思います。

 今度のインドの訪問は、前の訪問の経験がありますので、ある程度、インドに対しては知識を持っていましたが、一方で、日本への関心など非常に関心や交流が深くなっているということを感じました。

 ネール大学での日本語のディスカッションなど日本語だけで非常に立派なディスカッションだったように思います。また、公園で会ったインドの少年が、地域の環境問題を一生懸命に考えている姿も心に残るものでした。そういう面で、これからインドとの交流、また、インドそのものの発展というものに大きな期待が持たれるのではないかという感じを受けた旅でした。」

http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20131223mog00m040001000c2.html

戦時体制へ

2013-12-21 07:44:04 | 政治
「歴史作家としての保阪正康氏の評価は高い。

この彼が現在の安倍政権に対し警鐘を鳴らしている。

私も朝日カルチャーセンターで保坂氏とまさに秘密保護法をめぐり対談を行ってきた。その時保坂氏が述べていたことが、週刊朝日への論評になっている。、必読の論評である。

下記に転載する。〈週刊朝日; 12月20日〉

******************************

この法律は、平時から戦時へと移行する法体系の一部なんです。憲法改正、集団的自衛権の行使容認、日本版NSCの創設。これらが構成する法体系です。

今までの日本は、もし戦争が起こったら、という枠組みがない、平時の法体系でした。安倍首相は、この法体系そのものを見直しているのです。

日本の戦争は、1945年に終わりました。原爆や無差別爆撃で多くの非戦闘員が戦死しました。しかし戦後は、軍事で復讐しない、問題を戦争で解決しないと選択したんですよ。それを、戦争が終わってから68年間続けている。世界史的な実験と言えるのです。私たちの誇りなのです。自衛隊は一人も殺していないし、殺されてもいない。法体系を変えるという選択は、歴史的に、この実験を疑われることになります。

そういう選択をしないという誇りを日本の保守政党、自民党が守ってきたのです。伊東正義、松村謙三、前尾繁三郎、三木武夫、後藤田正晴……。やりすぎだぞ、とチェックを働かせる代議士がいっぱいいた。戦争を体験した世代です。後藤田などは護憲だって言ってましたから。「あんな戦争はやるべきじゃない」と。そういう人たちが、どれだけ保守政党が右翼化しないためにがんばってきたか。もちろん自民党の中にも右翼はいましたけど、バランスを取っていたのです。それが自民党政権の良さだった。

今は、それがまったくない。党内のバランスがまったく働かない。右翼化した政党になってしまった。

戦前に法体系が変わるときには、治安維持法ができました。これは、もともと共産主義者を取り締まる法律でした。ところが、共産党員は、逮捕されたり、転向したりして、いなくなった。すると、次に自由主義者、今度は宗教家、さらに純正右翼、と対象がいなくなるたびに範囲を広げていった。

なぜ拡大解釈したか。

治安維持法を運用するため、警察機構の中に一つの組織ができた。これが特高警察(特別高等警察部)です。ひとたびできてしまうと、逮捕する対象がいなくなっても組織があるわけだから、仕事を作っていくわけです。一つの法律を運用し始めると、そこにできた組織が、自動的に増殖していくのです。

今度の法律でも、取り締まる部署ができるでしょう。取り締まる連中は、特定秘密を扱うから身元調査される。それは、ある意味でエリート意識を与えられることになる。お前たちは国を守っているんだ、などと言われるでしょう。張り切って、人を捕まえてきて調べて、調書を法律に引っかかるように作っていかなきゃいけない。そのときには、強制、威圧、拷問、脅かし、いろんな手が使われると思うね。かつての特高警察と類似のね。

特高警察のようなものは社会の病理です。特定秘密保護法の成立は、我々の社会にとっては、くしゃみが出るようなもの。ほかにも、教科書に政府見解を入れること。集団的自衛権で自衛隊が地球の裏側まで行くこと。そういうことが重なって、熱が出て、カゼを引く、肺炎になる、というように、徐々に社会の体力が弱まっていく。

そうなれば、民主主義社会の権利が侵害されて、みんな黙ってしまう。権力を怖がる。それが病気、つまり、社会の衰退です。やがて戦時体制に移行するのではないでしょうか。

今すぐ戦争をやるわけではありません。でも、ゆくゆくは、太平洋戦争の前にできた国家総動員法みたいな法律を平気で考え出すのではないかと心配です。今の自民党は、保守政党じゃなくて右翼化した全体主義政党ですから。

***************************:」

http://ch.nicovideo.jp/magosaki/blomaga/ar418298?key=32b193ed63354ff7dd68dfa34e9acd0c94ea21d920455e6579d91c30e6b29a42

おもいついたこと

2013-12-17 19:54:29 | 政治
 1 トンイと馬医はイ・ビョンフン監督の作品。どちらも・が主人公。しかし主人公は専門的能力と探求心にたけ、志が高い。彼らを描くことで、若い人たちを励ましている。挿入歌も素晴らしい。

 ⇒チョネジア by チャン・ナラ http://www.youtube.com/watch?v=eX5EHHpvyoM
 ⇒ブヨンファ http://www.youtube.com/watch?v=lg5c-SFoj6Q


 2 特定秘密保護法は官僚が秘密を指定し、その利用者を決め、利用の範囲を統制し、なおかつ自分の判断で処分できる、という内容。しかも外部の-議会その他-監査を一切拒絶している。公文書の管理がいいかげんで、なおかつ情報公開制度が機能していないこの国で、この法律は市民から政治に関与するすべを奪うものである。

 3 TPP最大の問題点はISDS条項。企業が国家を訴え、なおかつTPPの条項の身で判断を下す。しかも当該国の裁判所を避け、国連の仲裁機関等が利用される。事実上国家主権の否定。なおかつ企業利益擁護のために、市民の権利が侵害されることは間違いない。企業によって個人からすべてが奪われる仕組みだ。

「山本太郎議員への安倍首相の答弁書で発覚――秘密を53もの機関が保有?」

2013-12-16 17:32:41 | 政治
「山本太郎議員への安倍首相の答弁書で発覚――秘密を53もの機関が保有?

週刊金曜日 12月16日(月)16時53分配信


山本太郎議員への安倍首相の答弁書で発覚――秘密を53もの機関が保有?

 山本太郎参議院議員が一一月一二日付で提出した特定秘密の保護に関する法律案(以下、秘密保護法案)に関する質問主意書に対する答弁書で、安倍晋三首相は秘密指定を行なう行政機関の長について、五三もの機関名を挙げてきた。その中には外交や防衛等に関する秘密にほど遠いような機関(文化庁や公害等調整委員会、中央労働委員会、郵政民営化推進本部等)も多数ある。

 呆れたのは、答弁された「特定秘密を指定し」「(特定秘密の取扱いを業務とする者に)適性評価を実施する」行政機関の長があるものとして、今年八月に廃止された社会保障制度改革国民会議が挙げられていたことだ。答弁書のチェックを担当した内閣法制局と内閣情報調査室は、すでに誤りを認め陳謝したというが、ことはそれだけで済むものではない。全閣僚が確認のうえ、内閣総理大臣名で出される閣議決定文書が質問主意書に対する答弁書なのだ。

 まして社会保障制度改革国民会議は委員を首相自らが任命したもので、首相官邸に直属する行政機関だ。首相宛に答申書を出して任務を終えたことで八月二一日に廃止された。今回の誤りは、安倍首相自身がいかに答弁書を丹念に検討していないかを白日の下にさらすものとなった。

 答弁書を受け取った山本太郎議員は、「すでに存在しない機関が答弁されて、驚いています。答弁書は内閣法制局が細部までチェックしてから閣議決定されると聞くが、チェック機能が働かなかったとしか言いようがない。ずいぶんずさんな話で、人権制限をともなう法案の審議がまともにできているとは思えません。内閣法制局長、さらに総理大臣自身の責任も問う再度の質問主意書を提出しました」と述べている。

 誤答弁に反映されたのは、審議の不徹底にとどまるものではなく、法案そのものがきわめて不十分な検討しかされていないことをも示している。そもそも、法案の構造が自衛隊法第九六条の二(防衛秘密)と第一二二条で規定された防衛秘密を漏らした場合の罰則についての取り決め、同法別表第四(第九六条の二関係)で規定された防衛秘密の指定に関する項目を別途の法律とし、刑罰を重くしたものにすぎない。

 自衛隊法の一部分を拡大して行政機関のほとんどを拘束する法規にするものだが、その具体的あり方、問題点がまったく明らかにされていない。よりわかりやすく言うなら、自衛隊のみに適用されていた「防衛秘密」の保全とそのための「罰則」システムを行政全体に押し広げることによって生じる具体的な問題、矛盾点の検討がほとんどされた形跡がないのだ。

 答弁書が示した五三の行政機関の大部分が、身近な公共事業に関わっている。これらに適切な予算執行がされているか、官製談合などがないかについて市民やオンブズマンが情報開示制度を駆使して追及しているが、今後、個別の事業案件が「防衛」「外交」「特定有害活動(注)」「テロリズム」に影響のあるものと当局が認定すれば、情報の大部分が秘匿されてしまうことが予想される。

 実際、サイバー攻撃の対象が電力・エネルギー供給施設や交通管制システムに向けられている時代ともなり、これを口実に行政の正常な執行をチェックする市民の活動が妨げられたり、「特定有害活動」とみなされて抑圧されたりすることも、今回の法案が成立すれば十分にあり得ることなのだ。

(注)公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう(法案第一二条二の一)。

(古是三春・軍事評論家、12月6日号)

最終更新:12月16日(月)16時53分週刊金曜日」

長野県内の主張が秘密保護法に懸念続々

2013-12-11 16:08:03 | 政治
「秘密保護法、施行前に改正を 県内首長「懸念」相次ぐ
12月11日(水)
 特定秘密保護法について、県内の首長からも10日、議会12月定例会一般質問の答弁で不安や懸念の声が聞かれた。安曇野市の宮沢宗弘市長は同法について「不十分な面がたくさんあり、施行までにしっかり改正してほしい。状況を変化させるのは世論の盛り上がりしかない」と強調した。

 宮沢市長は、同法は何を秘密指定するかやチェック機能が明確でなく「そのときの大臣や官僚の意向により、さまざまな情報が公開されなくなる恐れがある」と指摘。秘密に関する情報がないまま国会が関連予算を審議することになると、削減や反対の根拠がなく国の予算が増大する危険があるとの見方も示した。

 千曲市の岡田昭雄市長も「施行まで1年ある。(政府には)不安の払拭(ふっしょく)に努めていただき、その間に十分な議論を繰り返されることを期待している」と答弁。「国の安全保障上、ある程度の秘密保護は仕方ないのかなと思う」としつつ「国民に大きな不安がある」とし、国会での審議が不十分だったとの認識を示した。

 上伊那郡中川村の曽我逸郎村長は、同法を「欠陥商品の法律」と表現。「国民自身が考えて決めていくという民主主義の基本を崩壊させる」と批判した。「秘密の妥当性をチェックする仕組みがしっかりしておらず、秘密の範囲があいまいで知られたくないことを恣意(しい)的に隠すことができる。運用次第でどうにでもできる法律」とした。

 同法を廃止、撤廃すべきかと問われ、「そう思う。(廃止は)国民主権の国にしていくための一つの大きな山だ」と述べた。

 上高井郡高山村の久保田勝士村長は「国にはこれまでさまざまな議論や問題提起があったことを踏まえ、国民の不安や懸念を払拭(ふっしょく)できるよう十分に説明責任を果たしてほしい」と要請。「特定秘密については防衛や安全保障の観点から必要ではある。全て廃止するべきだとは思わない。ただ、いかに国民の理解を得て執行していくか。国の動向を注視していく」とした。」

http://www.shinmai.co.jp/news/20131211/KT131210ATI090018000.php

特定秘密保護法の問題点/赤旗から

2013-12-11 15:59:51 | 政治
「 安倍晋三首相は9日の記者会見で、臨時国会最終盤に強行につぐ強行で成立させた秘密保護法への国民の批判が厳しいことから、「私自身がもっともっと丁寧に時間をとって説明すべきであったと反省もしている」などと異例の弁明をしました。同時に、秘密保護法自体は、維新、みんななどとの「修正」で「よい法律にすることができた」と強弁しました。しかし、首相の発言は具体的根拠を示すことができないばかりか、法律そのものや審議の経過からみてもデタラメな内容でした。その中身を検証すると―。

「秘密の範囲広がらない」

際限なく広がる危険性

 首相は「今ある秘密の範囲が広がることはありません」と根拠なく言い切りました。

 しかし、「行政機関の長」が勝手に「秘密」を指定できる構造はそのまま。「秘密」の定義も、防衛、外交から特定有害活動やテロ防止まで広範で曖昧なため、何でも指定できる危険があります。

 首相は「(いまある)特別管理秘密の9割が衛星情報だ」と強調しますが、特別管理秘密は「事項の名称」が示されているだけで、「何が秘密かも秘密」で検証もできません。なかには「警備局長が別に定める会議において議事とされた事項」(警察庁)、「当庁が提供する情報・資料」(公安調査庁)など正体不明のものも多数あります。

 また、衛星情報が国民生活に関係がないかのようにいうのは正しくありません。福島第1原発事故の映像を公開しなかったように、死活的局面でも軍事優先で秘密にする恐れが十分あります。

 首相自身、「提供された情報は第三者に渡さないのが情報交換の前提」と強調しました。アメリカとの戦争協力をより密接にする中で、重大な情報が秘密として拡大することは明らかです。

「一般国民は巻き込まれない」

身辺調査と厳罰で包囲

 「一般の方が巻き込まれることも決してありません」。首相はあたかも「特定秘密」を扱う公務員だけが処罰対象であるかのように装い、国民の反発をかわそうと躍起です。しかし、秘密保護法のどこにもそんな保障はありません。

 同法は、秘密の「取得」から、漏えいを話し合う(共謀)、そそのかす(教唆)、あおる(扇動)行為までを厳罰に処します。秘密に関わる公務員はもちろん、行政から秘密を提供された民間企業や研究機関、果ては秘密を知ろうとする取材者や市民運動に取り組む人たちまで、広く国民各層が処罰の対象となります。

 この点を問いただした日本共産党の仁比聡平参院議員に対し、首相自身が「捜査機関において個別具体的な事案に即して判断すべき事柄だ」(11月27日)とのべ、一般国民が処罰されることを否定していません。目的がスパイ行為でなくても、共謀、教唆、扇動が処罰されることは、森雅子担当相が「はい、そうです」と認めました。

 処罰に至らなくても、秘密を扱えるかどうかの「適性評価」は、公務員だけでなく、民間の労働者にも及び、家族を含むプライバシーが丸裸にされます。

 国民生活は「巻き込まれない」どころか、身辺調査と厳罰の網に包囲されるのです。

「秘密を取り扱う透明性増す」

いっそうの秘密国家に

 首相は、秘密保護法によって「(秘密の取り扱いについて)透明性が増すことになる」と強弁しました。

 しかし、秘密保護法では、「秘密」の取り扱いで第三者が関与する「透明性」あるルールはありません。わずかに「修正」で、「独立した公正な立場」で「検証」「監察」する「新たな機関の設置」などを「検討」するだけ(付則9条)です。

 これについても、提案した自公維み4党で答弁はバラバラ。採決間際に首相や官房長官が駆け込み的に発表した「第三者的機関」(図参照)なるものも、すべて政府内部につくるもので、「第三者」どころか“お手盛り機関”です。

 首相は、核持ち込み密約などを持ち出し、「私も密約について説明を受けなかった。しかし、今後は変わる。総理大臣は情報保全諮問会議に毎年報告するので、知らない秘密はありえない」とのべました。

 とんでもない話です。首相自身が知っているだけでどうして国民に「透明」などといえるのか。米公文書を突きつけても密約の存在を否定し、国民を欺き続けてきたのが自民党政府です。首相も「当時極秘とした判断は、日米同盟の重要性において、そういう判断をした」(4日)と当然視し、国民をだましてきた反省が全くありません。

 密約は官僚が引き継ぎ、閣僚にも選別して報告していたことが明らかになっていますが、秘密保護法ができても「内規の骨格は変わらない」(岸田文雄外相)としています。

 「透明性を増す」どころか、日本はいっそうの秘密国家になってしまいます。」

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-11/2013121101_04_1.html

「テロの定義は自衛隊法のムチャクチャな拡大解釈」

2013-12-06 18:52:24 | 政治
「テロの定義は自衛隊法のムチャクチャな拡大解釈――特定秘密保護法案の逐条解説で判明

週刊金曜日 12月6日(金)18時40分配信

 テロリズムに関する定義がムチャクチャで、この一点だけでも基本的人権を侵害する特定秘密保護法案で一二月六日、テロリズム定義の文面は自衛隊の警護出動に関する規定(自衛隊法第81条の2第1項)を参考としていることがわかった。だが、自衛隊の警護出動は自衛隊の施設や在日米軍施設などに限られており、場所を限定せずに市民活動の自由を脅かす法案のデタラメぶりが浮き彫りとなった。

 福島みずほ参議院議員(社民)が入手した「特別秘密の保護に関する法律案【逐条解説】」(内閣官房)で明らかになった。

 特定秘密保護法案のテロリズムの定義は次のようになっている。
〈政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう〉

 それぞれの文章を「又は」でつないでいるため、条文上は「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」するだけで法案上はテロになってしまう。このため、テロの範囲が際限なく広がってしまうと批判が強い。

 前出の逐条解説は次のように記述している。
〈本規定は、平成13年の米国同時多発テロを受けて創設された自衛隊の警護出動に関する規定を参考としている〉〈テロリズムは国際的な取組により撲滅することが必要な国際的な脅威であり、その活動場所の如何を問わず、テロリズムの存在は潜在的に我が国及び日本国民の安全を脅かす者である〉

 一方、自衛隊法81条の2は次のようになっている。
〈内閣総理大臣は、本邦内にある次に掲げる施設又は施設及び区域において、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為が行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するため特別の必要があると認める場合には、当該施設又は施設及び区域の警護のため部隊等の出動を命ずることができる〉

 つまり〈本邦内にある次に掲げる施設又は施設及び区域において〉と場所を限定し、かつ警護出動の条件として〈その被害を防止するため特別の必要があると認める場合〉に限ってあるのだ。その施設とは次の通りである。
〈一  自衛隊の施設
 二  日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設及び区域(同協定第二十五条の合同委員会において自衛隊の部隊等が警護を行うこととされたものに限る。)〉

 自衛隊の施設や在日米軍基地内で〈政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要〉する人に対し、〈被害を防止するため特別の必要があると認める〉なら、確かに警護出動は認められるかもしれないだろう。

 しかし、特定秘密保護法案では、場所を特定してもいないし、被害防止の必要もなく、テロを定義しているから、ムチャクチャな拡大適用ができることになるのである。
(編集部 伊田浩之)

伊田浩之
最終更新:12月6日(金)18時49分週刊金曜日」

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131206-00010001-kinyobi-pol

特定秘密保護法批判 2

2013-12-05 15:59:45 | 政治
「「ロシア課長のキャビネットの中身
(1からの続き)福島 実は、NSC設置法と特定秘密保護法に関して言えば、この二法ができることによって、防衛省が外務省に好きなように使われることになると言われているんですよ。

佐藤 まさにそれは正確ですね。外務省が絵を書いて、防衛省が行く。乱暴な言い方をすると「偏差値順」という発想ですよ。

福島 まあ(笑)。

佐藤 偏差値順に決めましょうと。米軍普天間飛行場の移設問題だってそうでしょう。外務省は一歩も二歩も後ろに引いていて、普天間で何かあって辺野古の移設がうまくいかなくても日米関係に悪影響がないようにしましょうねと。それで「防衛省に行って来い、やれ、お国のためだ」と命令する。こういうところに外務官僚の質の悪さが表れているんですよ。そうすると旧内務省である警察は面白くないわけですよね。そうすると、適性評価のところで外務省に手を伸ばしてくる。

福島 「あいつはワインをガバガバ飲んでいる」というようなことを言うわけですね。

佐藤 そういうことです。外交官たちが高級レストランでロシア人や中国人と飲んでいるとするでしょ。公安警察官たちはその間、薄汚いライトバンかなんかで店の前に停まって、ジャンパー着てアンパンかなんか食いながら、ずっと会食の様子などを見ているわけですよ。「このやろう、いつかしめてやろう」と、ふつう思いますよね。こういうレベルの喧嘩が結局、国の構造全体をおかしくする。だから彼らを逆にグーッと握って、コントロールするのが政治の仕事なんですよ。

福島 はい。でも政治家は、特定秘密保護法による処罰の対象にはなっても、秘密をコントロールすることがまったくできません。だって、秘密に触れないのですから。
 この点についていくつか議論しましょう。外務省アメリカ局長として沖縄返還交渉で日米密約にかかわった吉野文六さん(一九一八年~)に私は会いました。彼は外務省に入省し、一九四一年五月にドイツに着任。そのままベルリン陥落までドイツに勤務しました。つまり、ヒトラー政権の崩壊を間近でみています。だから、私の質問にも歴史の証人としてきちっと話をしてくれました。
 二〇〇〇年五月には、我部政明琉球大学教授と『朝日新聞』が米公文書館で日米密約を裏付ける文書を発見し、報道していました。そして〇六年二月、『北海道新聞』の取材に吉野文六さんが日本側当事者として密約の存在を初めて認めました。そこで参議院の予算委員会で私は「密約はあるか」と質問したら、当時の小泉純一郎首相、安倍晋三官房長官、麻生太郎外務大臣らは「密約はありません」と答弁したのです。
 最近もまた行政交渉したら、役人たちは「密約はありません」と答えるんです。日米密約をスクープし、国家公務員法一一一条(秘密漏洩をそそのかした罪)違反で逮捕され、有罪判決を受けた元毎日新聞記者、西山太吉さん(一九三一年~)の怒りは大きい。日本では重要なことは外に出ていないと出ない。全部米国発で「こういうのがあるじゃないか」と公文書が出てくる。
 米国から公文書が出てきて、当時担当だった局長が「これは自分の書いたサインで、こういうものだ」ときちっと説明をしても、政府は否定するわけじゃないですか。

佐藤 ええ。

福島 西山太吉さんの裁判では一審も二審も、最近やった情報不開示の問題の情報開示請求でも「密約はある」と裁判所が認定するんですよ。いくらなんでも「密約はない」とは裁判所は認定できない。
 私が特定秘密保護法が成立した時に問題だと考えるのは、ぺったんぺったんと判子が簡単に押され、「これは秘密だ」と秘密が膨張していくのが一点。もう一つは、本当に重要なことは「特定秘密」の指定すらされず、闇から闇へ隠し通していくことです。

佐藤 秘密指定すらしないというのは、本当の秘密を守るためにときどき取られる手法です。

福島 ないことにする。だから、ないものは秘密指定ができない。

佐藤 行政文書に関しては、官僚の手書きのメモでも、公務で使えば私的なメモではなく、公文書公開の対象となりますからね。しかし実際の運用は違います。私もよくやりましたけれども、本当にやばいものは決裁書や報告供覧にしないで、メモにして回しました。

福島 やはり、外務省ではそうですか。

佐藤 そうです。一度、非常に機微に触れるメモの改竄文書が鈴木宗男さんの事件で流出したことがありますよね。これは私が起案したものではないのですけれども、北方領土交渉に関するメモで、共産党に流れました。

福島 二〇〇二年ですね。

佐藤 ロシアのパノフ大使(当時、以下同)とロシュコフ次官、外務省欧亜局長だった東郷和彦さん、鈴木宗男さんの四者会談の内容で、「こういうふうにして国を売っているんだ」という形で流れました。共産党の志位和夫委員長が三月一九日に会見しました。

福島 「会談記録は、対ロ領土交渉で、二重交渉がおこなわれており、それが現実に日本外交をゆがめていたというきわめて深刻で、重大なものである」などと非難しましたね。

佐藤 あのオリジナルの文書は八枚なんですけれども、共産党に届いたのは改竄されていたので七枚でした。そしてロシア側が言ったことが、東郷さんの言ったことに改竄されていた。ああいう公文書じゃないメモが外務省にはたくさんあるんですよ。

福島 それは、公文書としてきちんと管理して一定期間後に公開すべきですね。

佐藤 同感ですが、情報公開が制度化されることによって逆の現象が起きています。今までは極秘無期限でずっと取っていた書類を五年でシュレッダーにかけるようになっている。書類廃棄励行っていうのを始めたんです。情報の保全という点からすると非常に問題なんですよ。今は昔みたいに「文書庫が足りない」という言い訳は利きません。電子文書(PDFファイル)化すればいいだけの話ですから。

福島 そうですね。特定秘密保護法の成立でどうなるかというと、「特定秘密」の指定は五年ごとに更新するが、五年経って公文書館に行かないものは全部廃棄しちゃうと思うんですよ。時間が経って「密約はどうですか」と質問しても、「そういう文書はありません」と言われてしまう。
 先ほども説明しましたが、行政交渉で「三〇年経って政府が同意すれば公開すると言っているが、じゃあ二九年目に廃棄していたらどうなるか」と聞いたら、官僚たちは「それは仕方ないですね」と答えるんです。

佐藤 そうなると思います。二〇〇一年春に東郷和彦さんと話した時に「とんでもない話をある記者から聞いた。どうも日米関係の密約関係の文書を外務省はシュレッダーにかけたらしい」と聞いたんです。東郷さんは具体的な外務省幹部の名前を挙げて「奴らはこんなものがあると後腐れがあると思ってシュレッダーにかけたんだ」と怒っていました。東郷さんの父親である東郷文彦・元外務事務次官は密約に携わっていますから、お父さんの作った文書もシュレッダーにかけられた文書に入っているはずだと。

福島 あきれはてますね。

佐藤 要するに、外相だった田中眞紀子さんが来て、「これは出せ」とか言われて表に出たら大変になるということで捨てたんだろうということです。
 私も心配なので、東郷さんに「ロシア関係の書類は大丈夫ですか」と聞きました。ロシア関係の書類は、公のきちんとファイルされているものとは別のものがあるんです。ロシア課長席の横には鍵のかかる白い色の四段キャビネットがあって、そこの中には誰がロシア人女性とトラブルを起こしたとか、スパイとの接触があるとか、表では存在していない、いろんな秘密交渉のメモが入っているんですよ。

福島 そうなんですね。

佐藤 そのキャビネットの文書はロシア課長をやった人間だけが見ることができる。だから自分のスキャンダルがあるとシュレッダーにかけちゃうわけです。

福島 それはひどいですね(苦笑)。

佐藤 そうするとロシア課長をやった人間は、履歴が綺麗になっていく。そしてそれ以外の人間の秘密を全部握っているわけです。外務官僚だけでなく、ロシアに来た政治家たちの秘密もです。おそらく中国課も同じようなシステムだと思います。だから人事課の人事権が及ばない。私、実務で連中が何を企ててどういうふうにやっているのをよく見ていますからね。今でも相当むちゃくちゃなことをやっているところに「特定秘密」というものを作ったらどうなるか。その光景が容易に目に浮かぶんですね。

盗聴が事実上の全面解禁に
福島 米国はとんでもない国で、世界中で盗聴をしています。一方でエドワード・スノーデンさん(米国家安全保障局〈NSA〉元局員)みたいな人が内部告発したり、あるいは公文書館から一応、公文書が出てきたりする。でも日本の政府の腐りようはすさまじい。米国から公文書が出てきて、外務省の担当者が認めても密約はないといまだに言い切る厚顔無恥さです。そして、繰り返しますが、問題は「秘密指定すらしていない秘密」がいっぱいあることです。実は、「秘密指定すらしていない秘密」の方に歴史の真実が隠れている。けれどもそれは闇から闇へ葬り去られるんですよ。

佐藤 それだから本当に重要なことについて、政府高官ですら知らないということがよくあります。日韓で領有権が争われている竹島問題なんか、相当深刻になっています。引き継ぎがなされていない。

福島 まったく同じ意見です。日米密約などについて、社民党党首だった村山富市総理大臣(当時)に外務省は説明していません。秘密について説明を受ける大臣と教えられない大臣、秘密を引き継ぐ人と引き継がない人が出る。情報が、歴史的にどういう役割を果たすかではなく、非常に個人的なレベルで動く。そして、ごみのようなものも含めた山のような「特定秘密」が出てくる。でも本当に重要なことは実は秘密指定すらされない。

佐藤 よくある話です。特定の人の頭のなかと、その人の手帳のなかに記号化されて入っている。本当の秘密についての話ではよくあります。

福島 そのことが引き継ぎもされなければ歴史的な検証もできない。

佐藤 ここで問題なのは、交渉する相手国側が記録を作っている場合が多いということです。そうすると「こういうことがあったじゃないか」と相手に言われた場合に、交渉が相手ベースになっちゃうんですよ。密約を抹消するのがどうしてよくないかというと、相手は持っているからです。「合意は拘束する」は国際関係の原則です。約束している場合でも、その時の記録や双方の立場の違いは必ずある。その記録がないと、向こう側のペースに乗ってでしか交渉ができない。

福島 西山太吉さんは、沖縄返還時の日米密約が、米軍への「思いやり予算」支出に発展していくと分析しています。

佐藤 吉野文六さんも同じ認識です。沖縄返還協定に出てくるこのカネ自体に積算根拠はないんだ、と吉野さんははっきり言っていますからね。

福島 吉野さんのオーラル・ヒストリー(聞き取り)の保存はきちっとやらなければならないと思います。

佐藤 吉野さんは非常にしっかりしています。それはやっぱりナチスドイツの崩壊を彼自身、ベルリンの日本大使館にあった壕のなかにいて見ていますからね。彼は決死隊で首都のベルリンに残されたんですけれども、当時の大島大使はドイツ南部のバードガシュタインに逃げちゃう。それで、大島大使に「酒とつまみを持ってこい」と言われて、吉野さんは運転手と一緒に機銃掃射を受けながら二回往復しているんですよ。「佐藤くん、外務省というのはどういうところかあのときよくわかった」と言っていました(笑)。勇ましい人ほどいざとなると信用できないと。

福島 西山太吉さんの事件も奇妙で、検察官は一審で控訴するときに「密約はない」と言っているんですよ。じゃあ密約はないにもかかわらず、なぜ有罪になったのか。あの書類が出たことに関して責任があるってなるんでしょうね。

佐藤 密約じゃなければ秘密だと……。

福島 密約はないと言いながら、彼の有罪の理由はわからない。

佐藤 岡田克也外相の時にやった外務省の有識者懇談会による調査結果も、外務省内の調査結果も、非常にいいかげんな話でしたよね。

福島 読めば読むほどよくわからなくなってしまう。

佐藤 最初から「密約はない」という結論をつけると決めてやった調査ですよね。ただ、あの人たちには本当にないように見えるんですよ。要するに、秘密っていうのは自分たちが決めたものが秘密であると考えています。では、なにが密約なのかと考えると、密約っていうのは戦後の外交においてはやらないことになっている。だから密約はあるはずがない。あの人たちはそういうふうに思うとそう見えてくるんですよ。

福島 ただ、密約はないと言っても、米国で公文書が発見され、吉野さんの証言がある。どう考えても物証と人証がある。だから裁判所は、密約の存在を認定するんです。

佐藤 裁判の発想と官僚の発想は違うわけですよね。官僚からすると、判決はノイズ(雑音)なんですよ。

福島 裁判所では一審二審とも「密約はある」と認められているわけですよ。しかし今の政府は「密約はない」と言い張る。

佐藤 裁判所の言うことなんか聞く必要がないというのが本音でしょうね。私の裁判で争いになっているのは、支援委員会の協定。その協定で、旧ソ連諸国の支援にその金は使えるんだとなっていた。じゃあそのソ連の改革支援というなかで、イスラエルに代表団を派遣したことが協定違反であるというのです。その協定違反の申請を決済した理由は、「佐藤の後ろには鈴木宗男がいて逆らうと怖かった」というのですね。

福島 そんなことで決済をねじ曲げるなら、鈴木宗男さんより怖い外国との交渉なんかできっこありません。

佐藤 それでも、「鈴木宗男の圧力から自分の身を守るためにはサインするしかなかった、緊急避難だった」という構成になっているわけですよ。  ところが外務省は公判になってからその議論をひっくり返すわけです。決裁書に書かれている内容についてサインしたのは、ギリギリだけど適法で問題ないと言う。決裁書に書かれている通りだったらいいが、佐藤たちが作った決済書にウソが書いてあったから外務省は騙されたんだ、と変わった。それで検察と外務省の間で激しい闘いになるんです。

福島 筋書きが違っちゃったわけですね。

佐藤 そう。外務省は佐藤による被害者であるとなる。外務省は途中から決裁にはまったく問題がないという立場に変わった。それで今度は東郷さんが証言台に出てきて「いや、決裁書の内容は事実ですよ」と証言する。「決裁にも問題がない」と。こういう三つの立場が出てきて、ごちゃごちゃになったわけです。

福島 「秘密」がらみの裁判はそういう争い方になりますね。自分の都合のいいようにねじ曲げる。そして、特定秘密保護法が成立するとさらに大変なことになる。何を元に争っているかがわからなくなっちゃうんですよ。

佐藤 秘密については言えないと……。

福島 戦前の軍事法廷が何を争っているかさっぱりわからないのと同じになります。

佐藤 毎回の裁判が2・26事件のときの軍法会議と同じになるわけですね。しかも秘密法廷でやられるかもしれない。

福島 もう一つは、西山太吉さんの事件がそうであるように、「これは本当に秘密とすべきものか国民が知るべきものか」という点ではなく、「取材の手法」という点に論点が移ってしまうんですよね。

佐藤 本来は取材方法論とは別の話なんですけどね。記者なんていうのは盗んで情報を取ってきたって、脅しで情報を取ってきたって構わないわけです。それが真実かどうかっていうことだけを問われる存在です。

福島 そうなんですよ。BBC(英国放送協会)などは潜入して情報を取っている。それなのに「国民の知る権利のために必要だ」というところが確立していないと、「なんか強引な取材だった」と言われておかしくなる。
 論点は二つあって、政府の運用がメディアに対して謙抑的になるっていうのはありえない。森まさこ担当大臣が、西山太吉さんの事件に関して「違法性阻却事由に当たらない」と言っているんですよね。報道の自由などについて考慮すると言っているのは違法性阻却事由ということです。だから、特定秘密保護法案が定める犯罪の構成要件には該当するんですよ。
 西山事件のどこが構成要件に該当するのか。特定秘密保護法案が定める構成要件はずーっと数多く並べてあって、その他、権利者の権利を侵害する行為となっています。そうすると、秘密チームがあったらそこはみんな権利者なわけですよ。私が国会議員であれ市民活動家であれ市民であれメディアであれ、権利者の権利を侵害せずに情報をもらうことなんて不可能ですね。

佐藤 その通りです。

福島 どういう場合があるのか。限定されるなんてウソですよ。繰り返しますが、権利者の権利を侵害しないで情報を入手するなんて不可能ですよ。

佐藤 少なくともそこにおいては官の判断というのが第一義的に優先される。そうなると警察の問題もそうなんですが、検察がそこでまた力をつけてくる可能性がありますね。この法律が仮に通ったとした場合、いつ第一号事案が出てくるか。その時に検察がどう判断するかですよね。

福島 たとえば基地労働者が「基地の中でこういうことが起きているんではないか。おかしい」と話をしたとする。そうしたらもうそれは特定秘密保護法違反となります。

佐藤 そのとおり。そして捜査当局は共謀や秘密漏洩を調査するためにどうするか。実際いまも通信傍受をやっているわけですが、通信傍受に関して…。

福島 拡大しますね。

佐藤 事実上の全面解禁になってきます。すごく息苦しい社会になってきますよ。

特捜検察は事件をつくる
福島 実は、特定秘密保護法の後に出てくるのが盗聴の拡大であったり、屋内盗聴だったりする。「いや、これは秘密とは知らなかった」と言えば、一般民間人は罪に問われないと政府は答弁しているんです。でも、逮捕されたら、「秘密って知らなかったことはないだろう」と迫られる。自白で「秘密と知っていました」あるいは「秘密かもしれないが、それでもいいと思いました」っていう自白が取られちゃうんですよ。

佐藤 自白を取るのは簡単です。「これは秘密なんだよ、君。今になってどう思う。いまになっておかしいことをしたと思うか」と取調官は聞きますからね。「これだけの騒ぎになっているんだ。新聞見てみろ」と。そうしたら「いや、いまになって考えてみたら確かにおかしい」って答えてしまいますよ。それが調書になる。その後、「君、いまになっておかしいと思うってことは、やった時点においても潜在的におかしいと思ったんじゃないか」ときます。「どの時点で君の認識は変わったんだ」と問われた時に「いやあ、今、検事さんにすごい剣幕で言われたので認識が変わりました」って言える人間はいないですよ。そうしたらその当時の時点においてでも、「私おかしいと思っていました」となる。それでビンゴになって、違法性認識があったと認定されちゃいます。彼らは調べのプロ。それで飯食ってるんですから。

福島 「秘密と知りませんでした」と言えばいいというけれど、そんなの言えるわけない。「秘密かも知れないが、秘密であってもかまわない」と考えたら未必の故意ですからね。もう一つは、ジャーナリストであれ市民活動であれ市民であれ国会議員であれ、秘密とされたことが重要なわけじゃないですか。大本営発表なんてどうでもいい。むしろ政府が隠そうとしている不都合な真実をきちっと国民に情報を開示するのが仕事じゃないですか。

佐藤 そうです。

福島 だから核燃料の再処理とかのコストを隠す。SPEEDIの放射性物質拡散予想を出さない。東電のテレビ会議録画は、民間だけれどもなかなか出さない。私たちの仕事は「真実を明らかにしないこと」におかしいじゃないかと言うことです。つまり「特定秘密を明らかにしないのはおかしい」と言うのが仕事なんですよ。

佐藤 その通りです。

福島 そうしたらもう日常茶飯事、特定秘密に触れることになる。

佐藤 そもそも憲法の発想自体、そういうような形にして権力を規制するものですからね。

福島 そう。知る権利って、そういうことなんですよ。

佐藤 権力は放っておけば悪いことをする、というのが大前提です。

福島 そう。権力は悪いことをし、腐って重要な情報を出さない。主権者である国民に対して事実を隠蔽しようとする。

佐藤 事実、そういう傾向がある。特捜検察っていうのは、事件がないところから作って初めて特捜検察ですからね。あるところからきちんとそれを摘発するんだったら、特捜検察の意味はない。だから尋問の技術に関しては、彼らは天才的なんですよ。

福島 だから民間人が「秘密とは思いませんでしたと言えば助かる」なんてことはありえない。

佐藤 もしそう言い続けることができる人間がいるんだったら、革命運動ができますよ(笑)。みんなが自白するような状況になっても自白しないでがんばったら、「これはやはり特別な訓練を受けているやつだ」となりますよ。そうなると「これは徹底的に断罪しないといけない」と現場の警察官や検察官は燃えますよね。

福島 厳罰化されるでしょうね。「別表で指定されている『特定秘密』に当たるってわかるじゃないか」と取り調べで追及されますよ。たとえば『週刊金曜日』が原発のこのことを暴いたら、「テロリズム対策上問題だとわからないか」って、非難されますよ。

佐藤 取り調べでは「君の書いた記事が引き金でテロが起きたんだ。それに対して道義的な責任を感じないか」と取調官に言われるでしょうね。そこで道義的な責任を感じちゃったら、一枚目の調書になる。「道義的な責任を感じていたら、法的な責任はあるんだよ」と言われる。それをさんざん言ってから、「もう一回、房に帰ってよく考えてごらん」と。それで「考えてみて言いたいことはないか。言いたいことがあったらいつでも俺のところに言ってきてくれ。夜中でもいつでも対応するから」と言われる。そんな形で二三日もやっていたら、みんな「おれもちょっと悪いことした」と思うに決まっています。それで両隣が確定死刑囚で「うわーっ、殺されたくないよー」と騒いでいたりする。そんな状況に置かれたら頭がくらくらになりますよ(笑)。

福島 〈特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する〉だからすごく重い刑罰です。

佐藤 一〇年以下の懲役は特別背任と一緒です。会社の金を使って一五〇億円ぐらいバカラ賭博をした人と一緒ですよね。

福島 しかも一〇〇〇万円以下の罰金と併科できる。秘密にしているようなひどいことをきちっと暴くのがジャーナリズムであり国会議員の仕事であり、市民の仕事で、知る権利ってそういうことじゃないですか。そこで頑張れば頑張るほど、特定秘密保護法違反になってしまう。「秘密かもしれないが、いいと思いました」って言うと完全に有罪。「秘密とは思いませんでした」と言ったところで、「でも君、論理的に考えて、これは別表にある秘密でしょ。だから君は一生懸命やろうとしたんじゃないの」って言われてアウトですよね。これが共謀でも処罰されるんですよ。

佐藤 いくらでも広がっていきますね。

福島 罪の対象が「共謀、扇動、教唆」だから、ものすごく範囲が広がります。

相談しただけで罪に問われる
佐藤 法律専門家の観点から再度、教えてほしいんですけれども、なぜ刑法が定める「共同正犯」だけではダメなんですか。

福島 刑法の共同正犯はものすごく限定した行為にしか適用できないんですよね。だから、この特定秘密保護法案では独立罪として処罰するところがポイントです。普通は正犯が実行行為をやった時に、「君は共謀で関わっていたじゃないか」と処罰されるんだけれど、特定秘密保護法では、まだなにも秘密が出てこない段階でも処罰されることになります。

佐藤 要するに、摘発にあたって捜査当局の手抜きが可能になるということですね。

福島 すごく早い段階で処罰しちゃうんですよ。共謀ということは相談しただけで罪に問われるということになる。繰り返すと、秘密が漏れていなくても罪になる。

佐藤 保護隔離的な発想になっているわけですね。

福島 そうです。治安維持法の保安処分の発想なんですよ。

佐藤 つまり、「間違った考え方を持っている人は早く社会から隔離して排除して、本人も楽にしてあげるし、社会もキレイにしよう」という発想です。日本は、だんだん一九世紀に帰りつつあるということですね。

福島 たとえば私と佐藤優さんが、「違法なことをちゃんと暴こうね」って二人でメールを交換したり、言ったりしたらアウト。

佐藤 メールという物証が完全にありますからね。

福島 そう。つまり特定秘密が一般に出なくても、共謀の段階で処罰されるんです。諮っただけで。だから福島みずほと佐藤優が特定秘密保護法で逮捕されても、「私たちは何の地雷を踏んだんだろう」っていう答えはずっとわからない。

佐藤 これは権力にとっては一番魅力的です。「この線を超えたら処罰される」と明確になっていれば、人々は権力自体を怖がらないですからね。

福島 線引きが明確ではないから、いつ地雷を踏むかわからない。

佐藤 たとえば自民党の閣僚経験者などの有力政治家がいるとします。そこに自己の栄達のために情報を持っていく人間がいたとしても、警察が恣意的に処罰しないということがいくらでもできるようになる。

福島 いくらでもできますね。  特定秘密保護法で罰せられるのには二通りあって、新聞や雑誌、ホームページ、ブログなどのメディアに「こういうことがある」って載った場合に「漏らしたやつは誰だ」となる。それは一応、秘密が外に出たことになるから、「何が秘密か」が少しはわかるわけです。でも共謀だと、秘密がまだ外に漏れていないから、「何が秘密か」がまったくわからない。要するに壁を叩こうとしたように見えるというだけで処罰される。

佐藤 権力としては非常に魅力のある法律です。

福島 佐藤優が国会議員と一緒に、なにかを問題にしようとしただけでアウトですよ。

佐藤 それはその通り。裏返して考えると、まさに国家というのはそういう法律がほしいんですよね。

福島 戦前の治安維持法もそうでしたよね。

佐藤 治安維持法も、最初は極めて限定されていたものが、途中から死刑まで罰則に入ってくる。最後のころには大本教なんかもやられています。大本教は「皇道大本」で、むしろ満洲国への進出を積極的に推進するなど国家権力に近い団体でした。

福島 創価学会の創始者である牧口常三郎だって獄死するじゃないですか。

佐藤 第二代の会長になる戸田城聖も不敬罪と治安維持法で捕まっているわけですからね。

福島 私は日本版NSC設置法と特定秘密保護法は、治安維持法と似たような弊害をもたらすことになると思います。共謀でダメなんだから。「そういうのを考えることがけしからん」という話になっちゃうんですよ。

身近でスパイ活動がはじまる
佐藤 もう一つ調べていかないといけないのは、戦前の軍機保護法、国防保安法の構成がどうなっていたかですね。

福島 戦前の軍機保護法で処罰された例を国会図書館に頼んで出してもらったんです。治安維持法がそうだけれども、立件されるのは一部なんですよね。でも問題は、逮捕されるとか、警察に引っ張られるだけで、その人の人生がアウトになることですよ。

佐藤 これは今でも基本的に一緒ですよね。

福島 そうです。判決が出なくても、逮捕された段階で打撃です。捜索を受けただけで打撃です。

佐藤 それから、特定秘密保護法の適性評価の過程で非常に深刻なのは、表現の自由に対する大変な侵害があることです。表現の自由の根本というのは内心の自由です。表現しないことの自由なんですよ。要するに自分の言いたくないことは公権力に対して語らなくていいということです。ところが公務員になると適性評価で全部プライバシーが丸裸にされる。僕らが行政法を勉強した時には、もはや特別権力関係というのはないんだと教わりました。ところが特定秘密保護法の発想は、旧ドイツ法の特別権力権みたいな内容です。「お前はどの女性と付き合ったんだ。外国人女性と付き合っていたことがあったら、セックスは何回ぐらいやったのか。その国は何度訪ねたのか」などと聞かれる。本来、これは言わなくていいことなんですよ。

福島 もちろん、そうですね。

佐藤 それが公務員という身分を得て、秘密に触る可能性があるということで適性評価を受けなければいけないとなると、内心の自由に対してものすごい侵害が行なわれることになります。

福島 そうなんです。それで公務員がすさまじい特別権力関係になって、適性評価を受ける人がものすごく広がる。民間のなかにも警察が入って適性評価をするわけだから、ものすごい監視社会になります。変なことを言うと、戦前の軍機保護法が「あいつスパイじゃないか」という疑心暗鬼で人々の心をズタズタにしたように、相互のスパイ活動が始まる。公務員のなかだけでなく、民間企業のなかでも人々の心がズタズタになっていくんですよ。そこで連帯しようとか、ともに何か悩みを語ろうなんていうことはありえなくなる。
 もう一つ思い出したことがあります。以前、橋下徹大阪府知事(当時)が、「あなたは街頭演説に行ったことがありますか」「街頭演説に行った時に誰に誘われていきましたか」というアンケート調査を県職員にかけて、それが労働委員会で不当労働行為だと決定されたことがありました。これ、実は思想良心の調査なんですよ。

佐藤 その通りです。しかも、調査した結果自体が、特定秘密保護法の関係のクリアランスだから、「特定秘密」におそらくなると思うんですね。

福島 そうですね。やってることも秘密になる。

佐藤 個人情報が全部握られてくると、気に食わない官僚がいたら異動させて、「今度君は特定秘密を扱うことになったから適性評価をするよ」ということになりかねない。

福島 嫌がらせですね。

佐藤 嫌がらせもできるし、情報も集めることができる。

福島 当時の橋下知事が県職員からアンケートを取った時は、結局、シュレッダーにかけるんだけれども、不当労働行為だ、ダメだと断罪されたわけですよ。ところが今回の適性評価は個人のアンケート調査どころではなく、同意をとった上で身辺調査を秘密裏に行なうわけです。

佐藤 「同意を取った上で」と言いますが、「同意しない」と言った場合、その官僚は出世できないということですからね。民間企業だって同じです。

福島 もちろん特定秘密を扱うチームに入れられません。

佐藤 たとえば民間企業で兵器開発の部局に異動になったとします。そこで適性評価をすることになったとしましょう。そうなると家族を調べるわけです。実は妻が若いころ市民運動をやっていて、公務執行妨害あるいは道路交通法違反での逮捕歴があるとしたらどうなるでしょうか。それは結婚するよりもはるか以前の、たとえば二一歳の時のことだとしたら、妻が夫に言っていないことがありうる。その夫が適性評価を受けたら、「いやあ、あんたの奥さんに問題があるんだよ。実は以前にパクられたことがあってね」と言われるわけです。「それも警備公安にパクられている。だから君はこの部局はダメだ」と言って外されます。こうなると、家庭のなかで深刻な問題が起きますよ。

福島 うーん。

佐藤 ロシアであるとかイスラエルのように本当に調査能力のある国家だったら、たとえ仮にそういう過去の履歴があったとしても、国のためにいま使える人材であれば活用しますよ。というか、過去の何かのことで全部排除するなんてことはしない。そういう本当の意味での調査能力はいまの日本の警察にはありません。

福島 民間企業でも、社員たちの周辺を警察がいろいろ調査をすることになる。

佐藤 それはもう調査して日常的に見ているわけですからね。福島さんの電話なんか聞いているのも間違いない。メールも見ています。全然心配ないですよ(笑)。

福島 ははは(笑)。

佐藤 ただし、盗聴した情報が公に使えるかどうかということと、密かに違法行為によって情報を集めているかは、まったく位相が違う問題ですからね。

福島 特定秘密保護法に基づいておおっぴらにやれるという次元と、違法盗聴しているという次元は別ですからね。

佐藤 位相の違う問題になります。

警察がプライバシーを握る


福島 特定秘密保護法案は世界七〇カ国以上・五〇〇人以上の専門家が参加して作成された「ツワネ原則」(日弁連による日本語訳はこちら)にも反しています。白紙撤回すべきですよ。ツワネ原則にはジャーナリズムや市民活動家の活動を保護することも入っています。第三者が秘密の中身について開示を求めることもできます。けれども特定秘密保護法案はまったくこれを満たさない。政府が開示するかどうかを決めるなんて、第三者の目が一切ないじゃないですか。

佐藤 その通りです。

福島 何度でも強調しますと、秘密指定も広範囲。特定秘密保護法案はデタラメです。国際水準にまったく合致していない。

佐藤 万邦無比のわが日本にしかない法律になります(笑)。国防、安全保障上の理由から秘密を保護しろという主張はわかります。ですが、この法案の文言では、実際は官僚の秘密独占になるんじゃないでしょうか。

福島 そうですね。

佐藤 それから警察が適性評価をする仕組みですが、なぜ中立の人事院でやらないのか。なぜ利害関係のある機関がやっているのか。

福島 官僚が自分の首を絞められますよ。

佐藤 それどころか、有機的に秘密情報を扱えなくなってとんでもないことになる。とにかく、この特定秘密保護法が成立するとなにが起こるかを議論しないといけない。いまの時点ではこの法律は全部撤回して、ゼロから議論しないといけません。

福島 極端に言えば、外務省の力が強くなる。でも外務省のなかもぐちゃぐちゃになる。警察が、外務省や防衛省、すべての役所、民間企業も含めて、人間関係から秘密、対立関係、個人のプライバシーを全部握るんです。

佐藤 まず警察が肥大化します。その場合、外務省はなすすべがない。ところが日本には「飛び道具」を持っている組織がある。もっとその先を予想すれば、「なんだ、おまわりめ。お前ら、いろいろやってるけど、こっちは飛び道具持ってるんだぞ」となりますよ。

福島 飛び道具ですか。

佐藤 自衛隊です。警察が、自衛隊のなかに手を突っ込んでメチャクチャなことをすると、「なんだこのやろう」と反発しますよ。「お前たちは国益なんか考えていないだろう」と。そうすると、「やっぱり今の日本はもっとピシっとしないといけない」と、軍神みたいなのが自衛隊のなかから出てきます。

福島 2・26みたいな事件が起きる危険性があるということですね。

佐藤 その可能性を過小評価してはなりません。本当に国家権力は恣意的に動きます。特定秘密保護法の世界が長く続けばダレてくるわけです。非常に怖かったのが、海上保安庁のお兄さんですよね。「こんなけしからんことがある。国民に知らせないといけない」と情報を流通させてしまう。海上保安庁は武器をいじる役所ですよ。そういったところが主観的な正義感で決起することを誘発しかねません。

福島 うーん。

佐藤 やはり、一番怖いのは自衛隊にどういう影響を与えるかということです。「こんな警察指導体制の下だったら、国防なんかできない」となりますよ。  具体的な例を考えてみると、例えば、三佐とか一尉ぐらいの自衛官がいて、順風満帆に出世してきているつもりだったとします。ところが適性評価で「酒癖が悪い」とか「女性トラブルがある」という理由で引っかかって、出世のラインから外れてしまったらどうなるでしょうか。「警察め、よくもやりやがったな。いつか復讐してやる」って考えますよね。

福島 適性評価は行政機関の長がやるってなっているんですよ。でも委託できることになっていますから、結局は公安警察がやるんでしょうね。

佐藤 行政機関の長がどうやって調べられますか。

福島 調査の手足がないから調べられませんよね。

佐藤 だから警察がどんどん肥大化する。自衛隊の警務隊が調べるといったって、そんなの信用しないですよ。

福島 なるほどね。

佐藤 軍隊に手を突っ込めば、どれほど怖いことを後から誘発するかということに関する想像力が欠如していますよね。やっぱり僕は吉村昭さんの『戦艦武蔵』をよく読むことが大切だと思います。情報漏洩に対してどういう取り調べが行なわれるかがしっかり書いてありますからね。

福島 昔読んだことがありますが、もう一度読んでみます。私は、特定秘密保護法は治安維持法と一緒だと思うんです。最初は「こんな法律は大したことない」と言われていたものが、実はすさまじい結果をもたらすことになると思います。

佐藤 化ける危険性があるんですね。
社会を疑心暗鬼にし国家を弱体化させる
福島 国会議員も本当にものを言えなくなりますよ。

佐藤 そう思います。すでに物を言わなくなり始めている。まずそれは自民党から始まるんです。本来であれば自由と民主主義の問題だから、自由民主党の名称からして、真剣に取り組んでいかないといけないわけですよ(笑)。特に自由主義原則に反しているわけですからね。

福島 最初に取り上げた『中央公論』での谷垣さんたちの意見表明はものすごく格調が高かったのに、いまはいう人が少ない。ある意味で自民党の危機です。
 この他にも山のように論点があります。たとえば地方自治体はどうなるのか。今、地方自治体の首長にも米軍基地の問題などを情報を提供しているじゃないですか。それは一体どうなるのか。先日、参議院議員の有田芳生さんと話していた時には、オウム真理教の例が出ました。当時の警察はオウム真理教がテロをやろうとしていることは知っていて、『読売新聞』などにチラチラとリーク記事が出ていたんです。ところが特定秘密保護法で「テロ対策だ」ということで秘密指定されたら一切出なくなる。それは逆にとても危険なことになると思います。

佐藤 それもありますよね。

福島 そのうち全部が秘密になりますよ。原発のことで考えてみても、プルトニウムは安全保障の問題。警備やいろんな施設の問題は全部テロリズム対策。そして原発輸出は外交ですからね。

佐藤 確実に言えるのは、特定秘密保護法はまず社会を弱体化して疑心暗鬼にするでしょう。その結果として国家が弱くなりますね。乱暴な国家と強い国家は違いますからね。日本は乱暴な国家にはなりますけれども、国家としては弱くなりますよ。

福島 そして歴史の検証ができなくなる。闇から闇へ。なんか刹那的な国家になりますよね。そしてNSCについては、何のためにこれを作るのかをもっと言っていかなければいけませんね。

佐藤 専守防衛ということであれば、NSCによる判断はいらないんです。攻めてきたことに対して対抗するのは自衛権の発動ですから、これは明白です。ところが判断をせざるを得ないということは、別のオプションがあるということですよ。湾岸戦争後の機雷除去からアフガニスタン攻撃での海洋自衛隊の洋上給油、イラクへの陸上自衛隊の出兵と、少しずつ段階的に法制局解釈のなかで整合性を取りながら誤魔化してきたものが、いま、質 的にガーンと変わろうとしているんですよね。

福島 戦後日本が大切にしてきた平和主義や国民主権、基本的人権の尊重が失われてしまいます。

佐藤 外務官僚の発想からすると、特定秘密保護法案に関心が集中している現状は、ある意味、良かったと受け止めているはずです。特定秘密保護法は付属品ですからね。本丸の日本版NSCがすんなりといっているぞ、と思っているはずです。世間はみんな、既存の安全保障会議に「国家」っていう文字が頭につくだけだと思っているフシがありますね。

福島 そうなんですよね。日本版NSCの議論はあまりされていませんよね。

佐藤 戦前、国家高等警察がありましたよね。

福島 はい。

佐藤 国家高等警察は、選挙違反を取り締まるところだったのです。知能犯を相手にするから。それが「特別国家高等警察」(特高)になって、質的に大転換した。それなのに、特高をつくるときは上に「特別」という字がつくだけですよ、と言っていたのと同じ構図ですよ。  政治関係をやるんだけれども、共産主義者だけやりますからと言って特別国家高等警察にした。国家高等警察がそんなめちゃくちゃしたっていう話はなかったわけですよ。ところが「特別」っていう二文字がついた途端に、質的に違う組織になっちゃったんですよね。

福島 アメリカとタイアップするために作ろうというものではなく、まさにここで意思決定をしていくために日本版NSCを作るんですね。

佐藤 旧社会党時代から社民党と共産党の一番の違いは、日本の帝国主義的な危険性を感じるかどうか、日本の政治家たち・統治者たちの帝国主義への誘惑を危険視するか、侵略性に対する批判があるかないかです。米国に従属しているだけだと主張する共産党に対して、社民党は「日本の中にも相当主体的な力量がある」という批判を常にしていた。それが社民党、社会党からの伝統だと思うんですよ。

福島 じつは、そうなんですよね。

佐藤 その視座で見なければいけません。最近は感情的な反米論が強まりすぎたために、日本の政治家の責任を結果として免罪してるような状況がけっこうある。「米国という巨大なものが来たら、われわれは何も言えないんだ」というイメージですね。ところが本当は、その米国の陰に隠れて日本は相当いろんなことをやっています。今回のNSCに関しては、「日米協力があるから何もできないんだ」っていう米国に対するあきらめ感の陰で、実は日本が主体的に先制攻撃までできるようなことをやろうとしているんです。

福島 確かに対米従属と言うと、TPPも全部説明したような気になって、問題の複雑さを隠してしまう面があるかもしれないですね。

佐藤 そうなんです。対米従属論は共産党のお家芸です。リベラル左派陣営のなかで、共産党と社民党の違いは、社民党は単純な対米従属論に立たないというところですよ。そこが社民党の大きな価値だと思います。「自分の頭で考える」という、戦前の労農派マルクス主義からの伝統だと思うんです。何かの権威とかステレオタイプで繰り返すということではなくてね。

福島 はい。その立場でがんばっていきたいと思います。長時間ありがとうございました。

佐藤 ありがとうございました。 (おわり)」

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