もしもぼくがいなくなったら
いったいどれだけのひとが悲しんでくれるでしょう
寂しいことにだあれの顔も浮かんできやしません
もしもぼくが二度と戻らないとわかったら
いったい誰が憐れんでくれるでしょう
ほんとうに寂しいことですが
だあれの名前も浮かんでこないのです
きょうは雲ひとつない青空が広がっています
お陽さまの光がやわらかく降りそそぎ
やさしく髪をなでて吹き過ぎる風もここちよく
大気はちょうどいい頃合にひんやりと澄んでいます
まったくのところきょうという日は
さよならするにはもってこいの日です
こんなにも穏やかな美しい日に
もしもぼくが冷たい骸(むくろ)になったとしたら
あなたは涙を流してくれるでしょうか
たったひと粒でいいんです
きれいな涙をひとしずく
ぼくに見せてくださいますか
その麗しい睫毛をほんの少し
濡らしてくれるだけでいいんです
もしもぼくがいなくなってしまったら
あなたはその愛らしい瞳に
涙を浮かべてくれるでしょうか
☆絵:ラウル・デュフィ☆