あざみ野荘つれづれgooブログ

おもに、サッカー関連のコメントを掲載していきたいです。
’78年のW杯アルゼンチン大会以来のサッカーファンです。

芸術におけるワイルドなものふたたび( 高橋大輔賛 )

2008-03-24 00:09:18 | フィギュアスケート
 世界選手権の結果は、ああでしたが、(私はフリーよりSPが終わった時点のショックの方が大きかったですが)、何度も書きますが、今シーズンの男子シングルのナンバーワンは、やはり高橋大輔だったと思います。それほど、あの「白鳥の湖」は圧倒的なプログラムでした。あれは誰かがヘタに真似したとしても、陳腐なものになりかねない。クラシックとヒップホップとフィギュアスケートが、こちらに何の齟齬をも感じさせずに、完成された作品になっている。それを観られることの奇蹟のような歓びに比べれば、今回タイトルを逃したことは、大きな落胆ではありますが、そのことだけを理由に騒ぐことではない。この結果だけで、彼とモロゾフが成し遂げていることの価値は減じない。だからこそこのプログラムで取ってほしかったとは思いますが。メダリスト達が優れていたからと言うより、自滅に近い負け方だったと思うし、現在の高橋は、敵は自己のメンタルという次元にまで来ていると思う。そう思うのは、今回の男子シングル最終グループの選手達のプログラムのなかで、”芸術におけるワイルドなもの”を含んだ表現が、自己満足でない芸術性と難易度のレベルにまで達しているのは、高橋大輔とモロゾフのプログラムだけだからだ。(いろいろご意見はあると思いますが。)音楽を捉えて表現することの嫌味でない巧みさの非凡さ。欧米の選手には無いあのスピード感を伴って生まれる男子シングルの醍醐味とも言えるダイナミズム。音楽の進行に連れて観ているこちらの気持ちを高揚させるようなモロゾフの振り付け。そして、優雅なだけでなくワイルドで、繊細さと同時に大胆さをあわせ持つ、そのプログラムを演じているのが欧米人ではなく、日本人であることの驚き!こんなスケーターが日本人の中から出て来たということの驚き!私にとっては、彼はアイスダンスのベステミワノワ&ブーキン以来の”芸術におけるワイルドなもの”にまで達しているスケーターです。と、まあ彼の演技とニコライ・モロゾフの振り付けにベタ惚れなのですが。

 世界選手権のフリーの録画を見返して思ったのは、ショートに続いてのアクセルの失敗は目立ちましたが、4回転はひとつクリーンに成功しているし、ジャンプの二つのミスのうちひとつは4回転だったし、ステップも含めてそんなに悪くないと言うことです。高度なことに挑戦しての失敗でしたから、コンビネーションの追加ミスによる0判定が無ければ・・。それと、完璧にすべれなかった落胆はわかりますが、ちょっとそれを表しすぎかなと、試合後、もっと自分に自信を持って堂々とあいさつしたほうが観客も盛り上がってジャッジの心象もよくなるのではと思います。欧米の選手たちの、少々のミスがあったとしても、傲慢にも見える位に自信たっぷりな様子であいさつして喝采を受ける様子と比べると、ちょっと素直に感情を表しすぎで、損しているような気がします。

 それと、今回、アイスダンスでボーカルのある曲での演技が見られましたが、何となくボーカルの方に気を取られて、演技の印象が散漫になってしまうような気がしました。ボーカルの強さに負けないくらいの強さが演技に無いと、却ってボーカルのある曲を使うのはマイナスではないのかなと私は思います。その点、高橋大輔の「ロクサーヌ」やエキシビションの「バチェラレット」の演技は、ボーカルに負けない強さがあるので、まったくマイナスではなく、ボーカルの個性との相乗効果で濃密な世界が生まれていて素晴らしい!

※参考記事
 
 恐るべし!タラソワコーチ(芸術におけるワイルドなもの)

 E・Lカニグズバーグ「ジョコンダ婦人の肖像」