かつて日本は胃ガン大国でした。
その胃ガンが減少したのは、ガン検診のお陰ではなく
1960年代の「冷蔵庫の普及」であったことは
消化器病に携わるモノなら知らぬモノのない事実です。
「冷蔵庫」のお陰で「塩漬け」で保存しなくてもよくなった。
「冷蔵庫」が日本の胃ガン発生を減少させた影の立役者だ。
確かに、四半世紀以上前の学生時代に、講義でも聴いた話です。
それは、取りも直さず、「塩」の取り過ぎを戒めるものでもありました。
さて、「塩」は高血圧の原因としても問題視されてきました。
高血圧の人に対しては、
「塩分の取り過ぎはダメですよ!」
と、言わない医者はいないのが現状です。
そんな状況で、今もし、
「あなたが減塩食を心がけても、それが必ずしも
あなたの健康上によい影響を与えるとは限らないかもしれない」
などと書いたら、
「コイツは、とんでもないヤブ医者に違いない!」
と、憤慨されるでしょうか?
ちょっと話は変わりますが、
先日水曜日の、NHK「ためしてガッテン」では溜飲が下がりました。
「脅威の回復!腰の痛み」と題した番組の放送で伝えられたのは
「腰痛の85%が原因不明」という事実であり、
腰痛の主犯と考えられていた椎間板ヘルニアの原因率は5%で
犯人ではない!? という一般の方にはビックリの内容でした。
今年夏までご縁のあった整形外科の専門病院でも
筆者が同じことをナースらに話すと
「ほんまかぁ?」
「そんなアホなこと、あるはずがない!」
と、思いっ切り疑いの眼を向けられたものでした。
いちばん近いところの職業人でさえ、そんなものなのでした。
「腰痛は、『ストレス』が大きな原因」
それが、先日、全国に放送されたというわけです。
さて、「塩」の話に戻りましょう。
まず「コクラン・レビュー」のご紹介。
これは、EBM(Evidence-based medicine)の実践を目的として、
エビデンスの整理/管理を、国際的/組織的に行っているプロジェクトです。
このコクラン共同計画により作成されたシステマティック・レビューは、
あるテーマについて収集した個々の臨床試験文献を、総括的に評価したもの。
方法論が厳密に定義/確立されているので、信頼性の高さで定評があります。
その「コクラン・レヴュー」に11月9日に発表されたのが
『一般集団が減塩食を心がけても、
全体として健康上よい影響を与えるとは限らないかもしれない』
と、
過去に行われた167件の研究を統合して得られたデータからの報告でした。
簡単に内容を紹介しますと、
減塩は、正常血圧または高血圧の人々の血圧を低下させるが、
ある程度の副作用を引き起こす恐れがあること。
具体的には、ナトリウムの低減は、
正常血圧の人の血圧を1%、高血圧の人の血圧を3.5%低下させるものの、
同時に、レニン、アルドステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンの
血漿濃度の有意な上昇に加え、
コレステロールの2.5%の上昇と
トリグリセリド(中性脂肪)の7%の上昇に関連していた。
というものです。
このほかにも
7月に英国で発表された、これとは別のコクランライブラリーレビューは、
ナトリウム摂取量を若干減らしても心臓病や早期死のリスクを
減らすとのエビデンスを見出せなかったといいますし、
5月に発表されたベルギーの別の研究では、
塩分を多く摂取した人の方が、摂取量が少ない人に比べて、
高血圧症にかかりにくいようであり、
心疾患による死亡が統計的に少ないようであるとの結果でした。
どうやら、塩分摂取量が減るとホルモンや脂質が増加し、
それが長期間持続すると有害なものになりかねないこともあるようです。
それには、RAAシステム(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系)
が関わっているようです。
さらに、以前より減塩がインスリン抵抗性を増大させるということも
報告されていることではあります。
↓
Moderate dietary salt restriction increases vascular and systemic insulin resistance.
減塩で高血圧になる人々の存在は、昔から知られていました。
↓
Heterogeneity of blood pressure response to dietary sodium restriction in normotensive adults.
どうやら、すべての人が「塩」で高血圧になるのではないようです。
今や、
「高血圧対策には減塩」というのは
「米は主食だから食べなければ」とか
「腰痛の原因は椎間板ヘルニア」と思い込むのと同じ
都市伝説なのかも知れないのですよ。
Abstractは以下をクリックで、どうぞ。
↓
Effects of Low-Sodium Diet vs. High-Sodium Diet on Blood Pressure, Renin, Aldosterone, Catecholamines, Cholesterol, and Triglyceride (Cochrane Review)
その胃ガンが減少したのは、ガン検診のお陰ではなく
1960年代の「冷蔵庫の普及」であったことは
消化器病に携わるモノなら知らぬモノのない事実です。
「冷蔵庫」のお陰で「塩漬け」で保存しなくてもよくなった。
「冷蔵庫」が日本の胃ガン発生を減少させた影の立役者だ。
確かに、四半世紀以上前の学生時代に、講義でも聴いた話です。
それは、取りも直さず、「塩」の取り過ぎを戒めるものでもありました。
さて、「塩」は高血圧の原因としても問題視されてきました。
高血圧の人に対しては、
「塩分の取り過ぎはダメですよ!」
と、言わない医者はいないのが現状です。
そんな状況で、今もし、
「あなたが減塩食を心がけても、それが必ずしも
あなたの健康上によい影響を与えるとは限らないかもしれない」
などと書いたら、
「コイツは、とんでもないヤブ医者に違いない!」
と、憤慨されるでしょうか?
ちょっと話は変わりますが、
先日水曜日の、NHK「ためしてガッテン」では溜飲が下がりました。
「脅威の回復!腰の痛み」と題した番組の放送で伝えられたのは
「腰痛の85%が原因不明」という事実であり、
腰痛の主犯と考えられていた椎間板ヘルニアの原因率は5%で
犯人ではない!? という一般の方にはビックリの内容でした。
今年夏までご縁のあった整形外科の専門病院でも
筆者が同じことをナースらに話すと
「ほんまかぁ?」
「そんなアホなこと、あるはずがない!」
と、思いっ切り疑いの眼を向けられたものでした。
いちばん近いところの職業人でさえ、そんなものなのでした。
「腰痛は、『ストレス』が大きな原因」
それが、先日、全国に放送されたというわけです。
さて、「塩」の話に戻りましょう。
まず「コクラン・レビュー」のご紹介。
これは、EBM(Evidence-based medicine)の実践を目的として、
エビデンスの整理/管理を、国際的/組織的に行っているプロジェクトです。
このコクラン共同計画により作成されたシステマティック・レビューは、
あるテーマについて収集した個々の臨床試験文献を、総括的に評価したもの。
方法論が厳密に定義/確立されているので、信頼性の高さで定評があります。
その「コクラン・レヴュー」に11月9日に発表されたのが
『一般集団が減塩食を心がけても、
全体として健康上よい影響を与えるとは限らないかもしれない』
と、
過去に行われた167件の研究を統合して得られたデータからの報告でした。
簡単に内容を紹介しますと、
減塩は、正常血圧または高血圧の人々の血圧を低下させるが、
ある程度の副作用を引き起こす恐れがあること。
具体的には、ナトリウムの低減は、
正常血圧の人の血圧を1%、高血圧の人の血圧を3.5%低下させるものの、
同時に、レニン、アルドステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンの
血漿濃度の有意な上昇に加え、
コレステロールの2.5%の上昇と
トリグリセリド(中性脂肪)の7%の上昇に関連していた。
というものです。
このほかにも
7月に英国で発表された、これとは別のコクランライブラリーレビューは、
ナトリウム摂取量を若干減らしても心臓病や早期死のリスクを
減らすとのエビデンスを見出せなかったといいますし、
5月に発表されたベルギーの別の研究では、
塩分を多く摂取した人の方が、摂取量が少ない人に比べて、
高血圧症にかかりにくいようであり、
心疾患による死亡が統計的に少ないようであるとの結果でした。
どうやら、塩分摂取量が減るとホルモンや脂質が増加し、
それが長期間持続すると有害なものになりかねないこともあるようです。
それには、RAAシステム(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系)
が関わっているようです。
さらに、以前より減塩がインスリン抵抗性を増大させるということも
報告されていることではあります。
↓
Moderate dietary salt restriction increases vascular and systemic insulin resistance.
減塩で高血圧になる人々の存在は、昔から知られていました。
↓
Heterogeneity of blood pressure response to dietary sodium restriction in normotensive adults.
どうやら、すべての人が「塩」で高血圧になるのではないようです。
今や、
「高血圧対策には減塩」というのは
「米は主食だから食べなければ」とか
「腰痛の原因は椎間板ヘルニア」と思い込むのと同じ
都市伝説なのかも知れないのですよ。
Abstractは以下をクリックで、どうぞ。
↓
Effects of Low-Sodium Diet vs. High-Sodium Diet on Blood Pressure, Renin, Aldosterone, Catecholamines, Cholesterol, and Triglyceride (Cochrane Review)
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