脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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五色の死闘、JFLの壁は高し -三洋洲本 VS 高崎-

2010年12月12日 | 脚で語るJFL
 全国地域リーグ決勝大会が終わり、3位になった関西リーグ王者の三洋電機洲本が、いよいよJFLの入替戦に挑戦。淡路島は南あわじ市のアスパ五色にてJFL17位のアルテ高崎を迎えて第1戦を戦った。地元の大声援を受けて、JFLへあと一歩の三洋洲本が奮闘したが、試合は0-3で高崎の勝利に終わり、非常に苦しい状況で19日の第2戦(@浜川)を迎えることとなった。

 
 この2試合に勝てばJFLへ昇格できる三洋洲本。
 とにかくホームでは勝利して敵地へ挑みたい。

 
 はるばる淡路島まで乗り込んだアルテ高崎。
 JFL残留のためにここは負けられない。

 サッカー専用スタジアムながら、非常にアクセスの困難で名高いアスパ五色。関西ではよく関西リーグや近隣クラブの合宿などで知られているが、この日は地元の皆さんが三洋洲本の応援に駆けつけ、なんとも異様な盛況ぶりであった。アスパ五色にこれだけ人が集まる機会はそうないだろう。もちろん、高崎も数人のサポーターがバックスタンド側に横断幕でチームカラーを演出し、選手を後押しする。高崎も今季JFL17位とはいえ、かつてはこの入替戦(2003年・対FC京都BAMB1993)を制して2004年のJFLへ昇格を果たしたチーム。この入替戦の重要性と難しさは分かっていることだろう。その雰囲気は盛況ながらもどこか緊張感がみなぎっていた。

 地域決勝からほぼ不動の布陣を敷く三洋洲本。市原での3連戦を終えてまだ1週間が経っていない。JFLの全日程を11月中に終えた高崎の方がこの戦いに向けての余裕はあっただろう。ただ、ここまでの移動の行程を含め、高崎に疲労がどれほどあるのかが気になっていた。試合開始から序盤は三洋洲本が試合のリズムを掴む。地元の応援を背にボールを回していった。

 
 最後尾でチームを支えるGK浅野。
 今季の総決算をまずは地元で見せたいところ。

 
 森川がボールを持ち込む。
 積極的に高崎陣内へ攻め込む三洋洲本。

 13分、稲垣が右からシュートを放って三洋洲本が先に試合を動かしていく。22分には友定が果敢にミドルシュートを放っていくが、まだゴールを狙える決定的な場面は作れない。高崎も前線の松尾、山藤といった選手たちがスピードを活かしてスペースを狙っていく。これをCBの太田を中心に粘り強く守っていく三洋洲本。この試合では特に守備的MFの村上がコンディションに冴えを見せ、自陣エリア付近でも相手からボールを奪う守備を見せていた。あとはエースの梅川やスピードのある廣瀬といったFW陣にいかにボールが良い形で入るか。三洋洲本は彼らFW陣が高崎DFのマークに苦しんでいた。

 
 攻撃時の展開に、守備にと奔走する村上。
 彼自身の動きは非常に良かったのだが・・・

 
 高崎は高い位置で川里の動きが目立つ。
 次第にペースは彼らのサッカーへ。

 
 高崎・吉田をマークする三洋洲本・友定。

 例え2試合あろうと、勝負のかかった試合。高崎は落ち着いていた。最終ラインからしっかりパスを繋ぎ、主将の岩間を中心に自分たちのペースで攻撃を組み立てる。徐々にCKからチャンスを得られるようになってくる。先制点はまさにその流れの中から生まれた。
 38分、神谷の左CKから一旦流れたボールを拾った松尾がDFを背負いながら、シュートと見せかけて小島へパス。ここに走り込んだ川里がシュートを決めて高崎が先制点を奪うことに成功する。

 
 
 
 
 高崎・川里の先制点の場面。
 1点を争う試合かと思われただけにこの1点は大きかった。

 前半、最低でもスコアレスで折り返したかった三洋洲本だが、少し先制点を献上して守備陣が集中を欠いた。44分にはボールを持った高崎・岩間がスルスルを上がっていき、狙い澄ましたシュート。決して威力は無かったが、確実にゴールへ収まった。高崎が追加点を奪って前半を2点リードで折り返す展開となった。

 
 
 プレッシャーを跳ね除ける2点目を岩間が決める。
 高崎にとって理想の展開で前半を終了。

 
 太田を中心に安定していたかに見えた三洋洲本の守備。
 前半、痛恨の2失点。

 しかし、前半2点のリードはまだどうなるか分からない。三洋洲本が地域決勝で収めた2試合の90分勝利はどれも逆転勝利。しかも、藤枝での1次ラウンドでは0-2から5-2と転じる大逆転劇を見せている。三洋洲本へ声援を送る観衆は皆諦めていなかっただろう。後半開始から廣瀬に代えて沈を投入し、流れを変えようとする。

 52分、高崎が大きなチャンスを迎える。CKからの展開、松尾のボレーシュートがわずかにGK浅野のセーブに遭う。しかし、この際に相手DFと交錯したプレーがファウルを取られ、2枚目の警告でまさかの退場処分。少し厳しい判定ながら、ツキは三洋洲本に傾いたかに見えた。

 
 村上とのセントラルコンビでリズムを作りたい成瀬。
 なかなか高崎の守備網を突破できない。

 60分には右CKからDF森田が豪快なジャンピングボレーを狙うなど、まずは1点を返すべく相手ゴールに迫りたい三洋洲本。ところが、完全に梅川が相手守備陣のマークに苦しみ、それを周囲の選手でもフォローしきれない。62分にMF井上をピッチへ送り込んでポゼッションを高めようとするが、相手ボールになると、良い形でボールを奪える場面が次第に減っていった。

 
 60分、森田がボレーで高崎ゴールに迫るも無得点。

 
 試合は後半高崎のペース。
 少し動きが硬かったか三洋洲本。

 高崎は64分、左サイドでボールを持った吉田が1人で持ち込んでチームの3点目となるシュートを決める。ほぼ、1戦目の勝負を決定づける3点目。アスパ五色にため息が漏れる。

 
 
 GKの飛び出しにも焦らず、3点目を決めた高崎・吉田。

 82分には、カウンターから途中交代の益子のパスを受けた吉田が再びゴールを狙うと、このシュートがクロスバーを直撃。あわや4点目を奪われるという場面を作られ、ほぼ運動量を失っていた三洋洲本相手に高崎が完勝して第1試合を終えることとなった。

 
 梅川は常時相手DFに囲まれる場面が多かった。
 第2戦、この厳しいマークをいかにかいくぐれるか。

 
 
 高崎の落ち着いた守備の前に沈黙してしまった三洋洲本。
 GKの岩舘を含め、JFL勢が一枚上手か・・・

 
 完勝してホーム・浜川への第2戦に繋げたアルテ高崎。
 遠距離移動の疲れをものともしない試合ぶり。

 
 680人の観衆が集まったとされるアスパ五色。
 勝てなかったが、三洋洲本への声援は大きなものだった。

 やはり、JFLの壁は高いのか。そう思わせてくれるスコアと内容で終わった試合だった。高崎はプレッシャーを跳ね除け、強かった。三洋洲本はもっとやれたと思うのだが、JFL公式サイトにある稲葉監督のコメントのように、どこか見えない緊張があったのだろう。厳しいマークも相まって、前線のパフォーマンス不足が顕著だった。第2戦に向けてしっかり切り替えて臨んで欲しい。日頃の関西リーグでは滅多に見られないが、アスパ五色をこれほどの雰囲気にした多くのサポーターの声援が彼らを叱咤、鼓舞した。たくさんの子供たちも駆けつけていた。関西から、淡路島から、全国リーグで戦うチーム誕生まで、この3点差をひっくり返す奇跡を来週末、関西の地より期待している。