脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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進化の3年目、忍耐の2年目 -佐川印刷 VS 松本山雅-

2011年05月04日 | 脚で語るJFL
 JFLは東日本大震災の影響で開幕が約1か月遅れ、4月23日より開幕。残念ながらソニー仙台は震災の影響を鑑みて前期日程は参加が見送られている。順延分が後期日程終了後に回されたため、前期第7節から始まった日程はこの週で前期第9節。太陽が丘陸上競技場ではここまで1勝1分と順調な発進を果たした佐川印刷が松本山雅を迎えて対戦。拮抗した試合は1-1の引き分けに終わった。

 

 開幕戦であった前期第7節こそ金沢にスコアレスドローだった佐川印刷だったが、続く8節では秋田に3-2と勝利。中森監督の体制になってから徐々に若返りを図っているチームは、それ以前からの5年間で毎年確実に順位を上げている(06年15位→07年12位→08年11位→09年9位→10年6位)。今季もJ2富山から姜、桜井を獲得。着実にJFL経験者や大卒ルーキーで補強。更なるステップアップを目指している様子。昨季の松本山雅との戦績は1勝1敗と五分と苦手意識は全くない。松本山雅サポーターにホーム・太陽が丘を埋め尽くされたが、これがプリントダイナマイトに火をつけるはず。先発には富山から移籍加入した姜、桜井が2人とも顔を揃え、大卒ルーキーの佐伯と日野も先発に名を連ねた。

 

 アウェイで太陽が丘に乗り込むのは、昨季の佐川印刷戦(アウェイ)以来となる松本山雅。もちろん、今季の目玉補強は横浜FMから獲得したDF松田直樹であり、ユニフォームも一新。更なるサポーターの後押しでJ参入を今季こそ決めたいところ。しかし、開幕戦の秋田戦(@アルウィン)では僅差で敗戦。信州ダービーとなった前節は、今季よりJFL昇格を果たした長野を相手に2-1と競り勝っている。チームと大勢のサポーターが一丸となって連勝を狙いに京都へ来たのは確かだろう。今季はライバル・町田から木島良を獲得したことで、木島徹との木島兄弟の2トップが完成。松田だけでなく豊富な経験値を持つ選手を先発に据えてブラッシュアップしている。

 
 

 試合は両者とも前半から好守の切り替えが早い展開。佐川印刷は、右サイドの佐伯、平井を起点に松本山雅陣内に攻め込む。それに対して、松田、飯田の両CBと須藤というセンターラインでボールを奪い、木島良のスピードあるドリブルでカウンターを狙う松本山雅という構図。押し込まれているようで、それが自分たちのリズムともいえるリアクション型のサッカーは松本山雅の真骨頂。いかに佐川印刷の攻撃をいなすかが注目ポイントだった。

 
 新たな松本山雅の象徴となれるか、松田直樹。

 
 佐川印刷は素早く縦にボールを運び組み立てる。

 先制点は16分、松本山雅だった。佐川印刷のFKをキャッチしたGK白井が一気にフィードすると、これを木島良が一気に持ち込み折り返す。これを木島徹が受けてシュートを決めた。開始6でGKにセーブされたものの鋭いシュートを放っていた木島徹。まずは理想的な時間帯に先制することに成功した。

 
 

 ところが、佐川印刷はあっさり同点に追いつく。20分に桜井からのパスを受けた平井が松本山雅守備陣の間を抜けて、最後はGKと交錯しながらもループ気味にゴールへ沈める。あまりにも松本山雅のリードは持たなかった。

 
 

 25分、佐川印刷は佐伯の右からの折り返しを桜井がシュートもここは松本山雅・DF多々良のブロックに阻まれる。36分には松本山雅が鐡戸の強烈なシュートを放つが、ここもGK大石が立ちはだかった。44分には左からのクロスに攻め上がった松田が惜しいシュート。すると、前半終了間際には佐川印刷・大槻が狙い澄ましたシュートがバーを弾くなど両チームあと一歩でお互いを突き放す1点が遠い。

 
 
 鐡戸のシュートを佐川印刷・大石がナイスセーブ。

 

 

 後半を迎えるにあたって、松本山雅は既に警告を受けていた木島徹を下げ、FW塩沢を投入。これはあまりに意外な采配だった。確かに試合後の吉澤監督のコメントにもあったように疲労の色は見えていたが、兄である木島良との連携も良く、局面を打ち破れるとは思っていた。それ以上に塩沢に期待をかけたということだったのだろう。後半の立ち上がりこそ木島良の突破とシュートから決定機を作ったが、徐々に佐川印刷がペースを建て直す。

 
 今季町田から加入した木島良は突破力抜群だったが…

 64分に佐川印刷は姜に代わって高向、松本山雅は北村に代えて木村と、明らかに両チーム追加点を意識した交代を仕掛ける。69分には佐川印刷がCKから桜井が惜しいヘディングシュート。72分にも桜井がヘディングシュートで松本山雅ゴールを強襲したが、ここはGK白井がなんとかセーブしてしのぎ切る。

 
 今後、ストライカーとして印刷を牽引しそうなFW桜井。

 76分には、攻撃の核となっていた松本山雅・木島良が2枚目の警告で退場処分に。4分前に警告をもらったばかりなのにも関わらず、軽率な行為だった。再三サイドライン際をドリブルで崩していただけに、1-1という局面で彼を欠いたことは松本山雅にとっても痛かったに違いない。完全に終盤の流れは佐川印刷にあった。

 
 木島良が退場処分。これで15分を10人で戦う羽目に。

 試合終了直前には佐川印刷が怒濤の猛攻撃。90分に平井が“外す方が難しいのでは?”という惜しいシュートを外してしまう。ここからアディショナルタイム、佐川印刷は合計3度の決定機を決められず。スリリングな攻防に観客席は沸きに沸いたが、消耗戦ともいえる激しい試合は1-1のまま幕を閉じた。

 
 
 平井のシュート、これは決めておきたかった…

 
 最後のチャンス、しかし桜井のヘッドは無情にもバーの上へ。

 試合内容としては佐川印刷に軍配が上がる試合だった。終了直前の決定機がどれか1本でも決まっていれば完全に勝てた試合。相変わらずの縦に速いサッカーで、一気にゴールを目指す姿勢は今季も魅力に溢れており、各チームが苦戦を強いられそうだ。特に前線に起用されている富山から加入の桜井は長身で前線の起点になりそう。また、右サイドバックの佐伯も機を見たフィードとクロスで好機を作っていた。中森体制の3年目、更に飛躍のシーズンになる予感を十分感じさせてくれたのではないだろうか。

 
 ドリブルで持ち味を見せた2年目のFW中島。

 一方、1勝1分1敗とスタートダッシュに失敗した松本山雅。前節、ホーム・アルウィンで宿敵・長野に競り勝ち、勢いに乗れるかと思ったが、この試合では勝点をようやく拾えたというようなドロー劇。元来、相手に持ち込まれてこそチームとしての持ち味を発揮できると思うのだが、木島良の退場後は防戦一方でそれどころではなくなってしまった。その中で目を見張る活躍だったのはGKの白井裕人。再三佐川印刷の決定機をそのファインセーブで切り抜け、勝点1ポイントを死守したといえる活躍。また、キックのフィードも良く、この試合だけを見れば、松田よりもこの白井が松本山雅にとって今季最大の補強になったのではと思わせる大活躍だった。ただ、キーマンとなる選手で警告を受けている選手が多く、今後メンバーが崩れる可能性もある。週末の長崎戦に木島良が出場できないのは痛いところだ。

 
 孤軍奮闘のGK白井。トライアウトの末加入したという。

 
 判定に戸惑いを隠せない松田。
 確かにJとJFLでは同じようにはいかない。

 サポーターの数と熱気、素晴らしいホームスタジアム。あとは結果を残していくのみ。町田が開幕ダッシュに成功している中、2年目のジンクスとも言うべきか、序盤の戦いでは松本山雅は少し忍耐を強いられている。

 


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2 コメント

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しょうがない (join)
2011-05-05 20:42:05
監督が無能だからしょうがない。

大きな補強をしても、結局昨年から何の進歩もないサッカー。現状維持のサッカー。開幕延期したのに、1ヶ月半何をしてたの? ていうかチーム始動から3ヶ月何をしてたの?

後戻りできなくなる前に、「無用大臣」吉澤の解任を!
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Unknown (yoshi:D5)
2011-05-06 00:12:01
joinさん
コメントありがとうございます。

なるほど、確かに吉澤監督にはサポーターの方からもあまりポジティブな意見は聞きませんでした。
この前節にあった信州ダービーで、JFLの1年先輩であることを圧勝という方法で示したかったというご意見もありました。
町田が好スタートを切っていることを考えれば、このスロースタートはどうしても注目度が高いだけに目立ってしまいますね。
今後に注目しております。
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