脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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3年連続の天皇杯へ王手 -vs天理大‐

2011年08月15日 | 脚で語る奈良クラブ
 天皇杯全日本サッカー選手権大会の奈良県代表としての出場権をかけた天皇杯奈良県予選は準決勝を迎え、社会人代表の奈良クラブ(関西1部)が天理大(関西学生2部)を3-0で下して決勝戦進出を決めた。決勝戦は28日に奈産大を相手に橿原公苑陸上競技場で行われる。

 

 全社関西大会の初戦敗退から3週間ぶりとなる公式戦。この間奈良クラブは1試合も練習試合すら組まずにやってきた。シーズン開幕前から隙間なく続く練習試合とリーグ戦の数々、毎週末にコンスタントに試合があったことを考えれば少し休暇にはなったかもしれない。しかしながら、この過密日程だからこそプレッシャーが上手く作用し、チームの団結力や集中力が持続できているのでは、ということも頭の片隅にあり、久々の試合に選手たちの試合勘が心配になっていたりもした。このインターバルのトレーニングでチームが更にリファインされているのか、それとも苦戦を強いられるのか。どうしても直近の全社関西大会での敗戦が脳裏を過る。

 試合に臨んだのは現状でのベストメンバー。守護神・日野を最後尾に左右のサイドバックに吉田、黒田が入り、中央を眞野と橋垣戸が固め、中盤では三本菅と李のセントラル2人に、左の辻村剛と右の辻村隆、そして絶好調の牧と檜山の2トップ。試合は運動量で勢いのあるであろう天理大が序盤からアグレッシブに来るかと思われたが、前半から奈良クラブのペース。ミスこそ多かったが、パスを繋いで再三天理大陣内へ攻め込む。なかなかフィニッシュが枠内にいかないが故に先制点が取れないのはジリジリさせられたが、42分に檜山が李からの浮き球のパスをヒールで流し込んで先制すると、後半からはリズムが生まれた。
 後半に入って、天理大も一層中盤のプレスに今一度注力してくるが、今季ここまでの戦いぶりを見ていると、奈良クラブは完全に「後半から」のチーム。徐々にパスワークが噛み合い、左サイドの吉田、辻村剛、右サイドの辻村隆の突破を有効活用して押し続けた。何度も決定機を潰し続けて追加点の遠い後半戦だったのは誰の目にも明らかだったが、橋垣戸が治療のためピッチを離れていた69分、天理大に食らったカウンターからの決定機(これは一番ヒヤリとした…)を何とか凌ぐと、82分に辻村剛とのワンツーで突破した辻村隆のパスを受けた牧が流し込んで追加点。87分には、途中出場の嶋がエリア右付近からシュートを決めて3-0と試合を決めた。

 この3点目の嶋の今季初得点は感慨深い。チームスタート時から在籍するきっての古参選手になってしまった彼だが、仕事柄、平日午前のトレーニングになかなか参加できないながらもチームに尽力してくれている。昨季はリーグ戦で5得点を記録して得点ランキングでも5位タイに名を連ねた。かつてはJクラブの練習生経験もある実力派。吉田監督下の今季はラスト10分程度での途中投入が多いが、その持ち前のスピードとシュート力は間違いなくチームの大きな力。その嶋が今季初得点を決めてくれたのは嬉しかった。

 これで、3年連続の県代表獲得まであと1勝となった。久々の90分間の試合ともあって、守備面では不安定なところもあったが、無失点で切り抜けてほっと一息といったところ。ある程度理想のサッカーを体現できていたのではないだろうか。ここからは再び連戦の日々が訪れる。昨年に続き、奈良県国体選抜の成年チームとして20日から行われるミニ国体(国体近畿ブロック予選)に臨まなければならない。今週は2度の練習試合が組まれており、どこまでチームが仕上がって結果が残せるか。国体出場を決めて、天皇杯県予選の決勝へと繋げたい。
 決勝戦の相手はこの日の第1試合で高田を破った奈産大。毎年のように天皇杯予選では顔を合わせるが、決勝戦では2年ぶりの対峙となる。2年前は1-0で彼らを何とか退けて初の天皇杯出場を決めることができた。これまで何度も奈良県代表として天皇杯出場を果たしてきた県内の強豪サッカー部。3連敗だけは避けるべく必死で戦ってくるに違いない。激しい決勝戦になりそうだが、8月最後の日曜、この夏最も充実した一戦になるかもしれない。3年連続で天皇杯出場を勝ち取ろう。