脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

伏兵・東京23、ファイナリストへ -Shizuoka.藤枝MYFCvs東京23FC-

2011年10月19日 | 脚で語る地域リーグ
 第47回全国社会人サッカー選手権大会の準決勝第2試合は、東海リーグを制したShizuoka.藤枝MYFCと、なんと東京都1部リーグというカテゴリーで戦うチームながらこの準決勝まで勝ち上がり、地域リーグ決勝大会の出場権まで得ることになった東京23FC。試合は東京23FCが前半に先制した1点を守り切り1-0で勝利。なんと都道府県リーグ勢ながら決勝戦進出を果たした。

 

 Shizuoka.藤枝は、前日に優勝候補のY.S.C.C.を1-0で撃破。1回戦でアイン食品を相手に延長戦に持ち込まれ、2回戦も1点差で何とか勝利するなど決して楽な戦いではなかったようだ。前日のY.S.C.C.戦の出来は観戦していた方の話によると上出来だったようで、その勢いそのままに準決勝に臨むかと思われた。しかし、この日は守備陣の奈良林、内田、加えて中盤の西山と主力が仕事の関係で欠場していたようで、ベストメンバーが叶わなかった。それでも元徳島、松本山雅の石田祐、また鹿島のアレックスの双子の兄であるアランのコンビは強力。カテゴリーとしては2つ下のチームとの対戦だけに地力ではShizuoka.藤枝が勝ると予想されて当然のカードだっただろう。
 これに対して、ここまで快進撃を見せる東京23は、初戦のFCマキシマ戦、続くFC刈谷戦、前日の三菱長崎戦を全て無失点で切り抜けここまで来るという見事な勝ち進み方。監督を務めるのはFC東京やFC刈谷で活躍したアマラオであり、選手の中にもJリーグ、JFL経験者は多い。来季にはもちろん関東2部リーグへの昇格を目指すチームだけにこの大会で上位に入ることは大きな自信に繋がるはず。さすがに注目度が高い準決勝カードとなった。

 試合が始まると、先にチャンスを掴んだのは東京23。左サイドをフリーで抜け出した三澤がGKとの1対1を作りながらもシュートを決められない。しかし、いきなり決定的な場面を作り出した東京23の攻撃にメインスタンドは盛り上がった。

 
 
 
 前半の序盤、いきなりのチャンス。
 しかし、ここを東京23・三澤が決められない。

 かと思えば、やはりShizuoka.藤枝も黙ってはいない。司令塔・納谷を中心に素早いパス回しでボールを持ちこむと、16分、17分と連続して橋本が決定的なシュート。どちらも決まってもおかしくない場面だったが、なんとか東京23は凌ぎ切った。

 
 Shizuoka.藤枝は橋本が前半のチャンスを決められず。

 じわじわとShizuoka.藤枝陣内へ仕掛けていく東京23。第1試合の相模原同様、こちらもかなりのタフネスを披露してくれる。諦めずに仕掛けるそのアタックの連続に先制点のチャンスは転がってきた。25分、猪股の左CKからファーサイドで中山がヘッドで合わせて先制。まさか、いや、必然の先制点が東京23に生まれた。

 
 
 
 この打点の高さ。中山の頭で東京23が先制。
 本当に都道府県リーグとは思えないクオリティ。

 35分には、前半の序盤と同じような場面を東京23・三澤が左サイドで迎える。完全にフリーでGKと1対1になったが、こちらもシュートは右に大きく外れてしまう。この日の三澤はツキに見放されていたが、追加点が奪えない東京23は守備面で凄まじい集中力を披露。常にエリア付近に6人ほどで守ってしまうという堅守ぶりでShizuoka.藤枝の攻撃を阻み続け、1-0とリードして前半を終えた。

 
 Shizuoka.藤枝のアランを2人がかりで封じる東京23の選手たち。

 
 Shizuoka.藤枝の大ベテラン・石井。
 Jでは通算297試合出場という選手。

 
 FC東京と違う東京のチームで新たな船出となったアマラオ監督。
 序盤にはチャンス逸の連続に苦虫を噛み潰した表情を見せた。

 後半に入って、両チーム共に疲労の色が濃くなってくるが、それでも一歩早くボールに触っていたのは東京23の方だった。セカンドボールをしっかりホールドできなくなったShizuoka.藤枝をいなし続ける。69分には山本恭が強烈なミドルでShizuoka.藤枝ゴールを強襲。これはShizuoka.藤枝・GK豊瀬がかろうじてセーブするが、最後まで東京23はスタンドを沸かせ続けた。

 
 豪快なシュートでスタンドを沸かせた東京23・山本恭。
 まだ大卒2年目の選手だ。彼のような若い選手が多い。

 
 エリアまで勝負を仕掛けるFW池田。彼も1年目の選手だ。

 最後まで粘りの守備でShizuoka.藤枝を沈黙させた東京23が80分間を走り切り、勝利。もはやアップセットではない。驚きもない。まるでどこかの地域リーグの強豪チームのようだ。さすがに東京23ベンチはお祭りムードになった。

 
 かつてtonan前橋に所属していたマルキーニョが東京23でプレーしていた。

 
 地域決勝のことよりもまずはこの大会の優勝。
 東京23は昨季の関東社会人大会のリベンジに燃えている(はず)。

 これで東京23は明日の決勝戦を相模原と対戦することになった。実はこの2チーム、既に因縁の仲である。昨季の関東社会人サッカー大会、つまり関東リーグ昇格を懸けた都道府県リーグ勢の戦いで2回戦で相模原と対峙した東京23は1-6と惨敗を喫しているのだ。今大会は絶好のリベンジの舞台。ここでリベンジ達成などということになればインパクトは絶大だ。
 また、彼らはもちろんカテゴリーとしても上を目指すチームであるが、詳しい方と一緒に観戦させてもらった際に興味深い話をいくつか聞いた。まずは、彼らがきちんと運営体制に注力しており、仕事の斡旋がしっかりできていることが戦力的に充実しているポイントだという。その顔ぶれは、元JリーガーからJFL選手、そして比較的若い大卒1年目から2年目の選手が大半であり、仕事との両立をさせながらサッカーに打ち込んでいるという。もちろん社会人カテゴリーとしては当然の理論であるが、昨今、仕事をしっかり斡旋できないチームがJFLでもあるということを考えると、彼らがこれを結果も示しながら体現しているのはなんとも皮肉な話である。
 しかしながら、暗い部分もある。雇用面の充実という点で首都・東京の強みは発揮されているが、チーム名に表象されている「東京23区」での活動はなかなか難しいようだ。練習環境や試合会場の確保は23区内ではかなり困難らしく、区外での練習は当然ながら、将来JFLを目指す上では本拠地をどこに構えるかという問題にも直結している。改めて関東の施設・グラウンド確保の難しさを彼らのエピソードから深く実感したのだった。
 対するShizuoka.藤枝はここで敗れはしたものの、地域決勝の出場権は東海リーグを制覇したことで持っている。相模原と比べればまだ差はありそうだが、こちらも経験者が多く非常に厄介なチームになるだろう。この試合ではメンバーのやり繰りに難が出たようだが、きっちり地域決勝では調整してくるに違いないと思う。これまで未見のチームだったがゆえに、もう少し他の試合でのShizuoka.藤枝を見ておきたかったなとも思った。

 
 東京23だけでなく、このShizuoka.藤枝とも対戦の可能性はある。
 奈良クラブは対峙した際にきっちり勝てるだろうか。

 

相模原、見せつけるその実力差 -S.C.相模原vs愛媛FCしまなみ-

2011年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 第47回全国社会人サッカー選手権大会(通称:全社)が15日から岐阜県各会場で開催されており、32チームの社会人チームが参加して戦っている。4日目の準決勝は大垣市浅中公園総合グラウンド多目的広場で2試合が行われ、第1試合では関東2部リーグでJリーグ準加盟を果たしているS.C.相模原が四国リーグ王者の愛媛FCしまなみを3-0で下して決勝進出を果たした。

 

 快晴の大垣。名神高速を大垣ICまで走れば会場の浅中公園はすぐそこだ。名神高速の脇にこの準決勝の会場である総合グラウンド多目的広場と決勝及び3位決定戦が行われる陸上競技場がある。長良川球技メドウを彷彿とさせる少し傾斜のあるメインスタンド(柱が少々邪魔だったが…)の先にはコンディションの良さそうな天然芝のピッチが広がっていた。
 この準決勝に駒を進めたのは、まずS.C.相模原。既に説明不要のJFL以下のカテゴリーでは神奈川県リーグ時代の昨年にJリーグ準加盟を果たした規格外のチームだ。先週も関東遠征を行った奈良クラブに6-0とその格の違いを見せつけ、明らかに昨季と比べても大幅にブラッシュアップされた印象だ。特に中盤に鎮座する佐野の加入(J2・北九州からレンタル加入)は大きく、これまでの坂井に加えて大きなゲームメイカーが加わった。GKにもかつて磐田や愛媛で活躍した山本が加入しており、バックアップも含めてその層は厚い。初戦の六花亭マルセイズ戦から危なげなくここまで3連勝。昨季は準決勝で現在JFLの讃岐に零封で完敗を喫した。今季もJFAの優遇措置で地域リーグ決勝大会への切符は掴んでいるものの、実力を誇示するべくこの大会は本気で優勝を目指しているようだ。
 対する愛媛FCしまなみは四国リーグの王者。1回戦のトヨタ蹴球団戦から3戦連続で1点差を切り抜ける辛勝劇の連続で準決勝まで這い上がってきた。特に2回戦のサウルコス福井戦、そして前日の準々決勝・FC KAGOSHIMA戦は延長戦までもつれ込む厳しい試合。間違いなく選手たちの疲労は極限まで来てたと思うが、地域決勝への辞退が報道されており、そうれであれば、事実上この大会が今季最後の公式戦になるだけに優勝で2011年を締め括りたいところ。

 ところが試合は開始早々から相模原のペース。まるで4日目と感じさせない彼らのボール回しには溜息が出るほどで、中盤の佐野、水野、吉岡からどんどんロングボールがしまなみの最終ラインとGKの間を狙って放り込まれる。そこに森谷、齋藤の両FWが走り込んでチャンスを作るのだが、フィニッシュのシュート以外はミスが少なく、その高精度に彼らのタフネスはおろかその技術の高さを再確認させられた。

 
 疲れ知らずの相模原、坂井がボールキープ。

 
 右サイドからチャンスボールを入れ続けた水野。
 柏に在籍する水野晃樹の実兄。

 8分に齋藤がハーフラインからのパスに呼応して左サイドをドリブルで持ち込む。最後のシュートこそ右に外れたが、彼らの先制点は時間の問題だった。12分にその齋藤がシュートを決めてあっさり相模原が先制。14分には佐野からのロングパスを森谷がGKと1対1に持ち込むチャンスを作るが、ここは決められない。少し森谷、齋藤の両FWにこそシュートの場面で連戦の疲れは感じられたものの、チャンスを圧倒的に作る相模原の前にしまなみは防戦一方となった。

 
 驚異的な得点力を誇る相模原・FW齋藤。
 この日も2得点と存在感は絶大。

 
 森谷が佐野のパスに反応して迎えた14分のチャンス。
 これは決定的だった。

 18分には右サイドの水野から絶好のアーリークロスが齋藤へ。齋藤はこれにボレーで合わせようとするが、あと数センチ合わずという場面。隙あればチャンスを作る相模原、27分には相手DFのミスを奪った齋藤が左サイドのゴールライン付近まで持ち込むと、中央へパスと思いきや自分でシュート。これが相手DFに当たりながらもゴールへ。執念も込められたかのような見事なゴールだった。

 
 
 GKと相手DFをぶち抜いた齋藤の2得点目。
 相模原はこれでさらに優位に。

 しまなみも相模原のボールを奪って即座にカウンターに繋げようとするが、工藤、奥山を軸に据える守備陣を突破できない。前半40分のハーフタイムを待たずして最初の交代を施す展開を強いられ、前半は2点のリードを与えて折り返すことになった。

 
 しまなみもキャプテンの山口を中心に好機を狙うが…

 後半に入っても相模原のペースは落ちず、55分に坂井がしまなみのエリア内まで持ち込むと、中央へ走り込んだ吉岡にパス。吉岡が強烈にこれを蹴り込み3点目を奪った。その後は、富井や村野、松本と徐々にバックアップの選手たちを投入する余裕の展開。しまなみは後半の中盤から相模原陣内へ度々ボールを運んだが、最後まで決定的な場面を作れず、試合は3-0で相模原が勝利を掴んだ。

 
 
 工藤(上)と奥山(下)のCBコンビは安定感を欠かずに無失点。

 
 途中から出てくるMF村野。
 視野が広く、彼のプレーも相手チームにとっては厄介だ。

 
 しまなみは同大出身の北森が途中から出場。
 しかしながら、状況を変えられず。

 昨季からの躍進、そして先週の奈良クラブとのテストマッチを見ていても、もはや当然というような相模原の全社決勝進出。少しこの出場チームの中でも頭一つ抜け出た実力のような気がする。特に中盤から前のミスの少ないアタッカー陣は誰もが強烈。そしてそのほとんどがJリーグ経験者だ。ポゼッションで完全に自分たちのペースにできる力がこのチームにはある。先に先制点を奪われたらなかなか持ち直すのは難しいだろう。さて、4日目とは思えない強靭なスタミナと衰えぬ実力を見せている相模原。明日の決勝戦ではいかに戦うか。
 そして、しまなみは悔しい零封負け。序盤からかなり全体的に動きが重かったように思う。しかし、ここまで3日間で3試合をこなしてきたのだからそれは当然。まだ彼らには3位決定戦が残っており、ここで愛媛への帰還を強いられるわけでない。まだ正式発表がされていないものの、選手のツイッターでの発言、そして高知新聞の報道などから11月から始まる地域決勝への出場が辞退する方向と見られている。彼らの最大のモチベーションは、この大会での1つでも上の順位だろう。

 
 3位決定戦でここまでの粘り強さを見せられるか、しまなみ。

雨中で見せる意地の張り合い -TOJITSU滋賀vs加古川-

2011年07月19日 | 脚で語る地域リーグ
 関西リーグの第11節、Div1の残り試合が18日に行われ、滋賀の野洲川歴史公園サッカー場ビッグレイクBコートでは、7位のTOJITSU滋賀FCと2位・バンディオンセ加古川が雨の中対戦。試合は吉田のゴールを守り切った加古川が辛くも逃げ切り、奈良クラブとの勝点差8ポイントをキープ。この加古川の粘りで、今節での奈良クラブの優勝はなくなった。

 

 徐々に迫る台風の影響もあり、滋賀県に入った途端に猛烈な豪雨に襲われたこの日。ビッグレイクはかろうじて小雨の状態だったが、さすがに天気が変わりやすいとされるビッグレイク。傘を差したり閉じたりさせられる不安定な天候となった。

 今季、そのホームゲームのほとんどをこのビッグレイクで催行できているTOJITSU滋賀FC。ここまで2勝3分5敗と2年ぶりのDiv1の戦いに苦しんでいる。このままでは降格圏内。なんとかホームで連敗脱出、4試合ぶりの勝利といきたいところだったろう。ここまで4得点と1人気を吐くエース・岩田を中心に負けられない。
 対する加古川も前節・三洋洲本戦にスコアレスドローで優勝がかなり厳しくなった。その前の試合もアイン相手に2-1と接戦の末に勝利。なんと今季はここまで挙げている6勝のうち5勝が全て1点差という試合で、なかなか豪快に圧勝という試合はない。とにもかくにも前期の最終戦で奈良に0-4というパンチは効いただろう。だが、直接の優勝争いの相手をこのまま決めさせてたまるかという執念が見えた。

 加古川は、MF池田がケガのためか登録外。また、池田に次いでチームの得点源だった寺本も登録外となかなか苦しい布陣。しかしながら、ケガのためか2試合戦列を離れていたFW吉田が先発に復帰して、また後期から加入したMF西口もベンチに控えるなど、層の厚いチーム力は窺える。試合が始まって14分、速いプレッシャーでTOJITSU滋賀を追い込む加古川が試合を動かす。結果的に決勝点となったゴールを挙げたのは戦列に復帰した吉田だった。加古川の右からの攻撃、安原が中央に折り返すと、ペナルティアーク付近で小山が落ち着いて落とす。これを吉田が右足で射抜いた。シュートは綺麗にカーブを描いてゴール右隅へ決まる。

 先制して、やはり地力の差を見せた加古川は追加点を狙って更に攻め込む。しかしそれほど決定機を作ることはできず、逆にTOJITSU滋賀が宇野と岡野のセントラルMF2人を起点にカウンターで良い形を作る場面も見られた。サイドでは、加古川の速い寄せに苛立ちながらも左MF田中と右MFの石倉が果敢に前のスペースを狙っており、前半こそ0-1で折り返したが、後半何かやってくれる雰囲気は感じられた。

 後半に入って、TOJITSU滋賀が案の定ボールを回せるようになってきた。ところがなかなかシュートにまで漕ぎ着けられない。加古川も徐々にミスが多くなり、両チーム合わせて後半は3本しかシュートがなく、消耗戦の様相を呈した試合は結局加古川が1-0で制した。

 これで、数字上はまだ加古川も優勝の可能性を残した。しかし、残り3節を3連勝して、かつ奈良クラブが3連敗というパターンしかそれはあり得ない。得失点差にも大きく差があるため、次節奈良クラブが負けても、加古川が引き分け以下ならば、優勝は決定となる。それもあってか、2ヶ月のインターバルを前にその前に決めさせるかという意地を見せてもらった気がする。このまま優勝が決まってしまうのも最短とはいえ少し違和感があっただけに、こちらも最後まで気を抜かずしっかりと勝って次節で優勝を決めたいところだ。
 対してTOJITSU滋賀は、降格争いという点で残り3試合厳しい試合を強いられそう。今節終わって、5位アインから最下位・阪南大クラブまでの勝点差は4ポイント。同じボトム4での直接対決をラランジャ京都と阪南大クラブと控えるTOJITSU滋賀。次節、阪南大クラブは、アインとの試合で負けると降格濃厚となるため、次節のラランジャ京都戦は必勝でいかなかれば厳しくなる。

 

王者、失墜のシーズン -アミティエvs三洋洲本-

2011年06月27日 | 脚で語る地域リーグ
 後期日程が始まった関西リーグ。第8節の2日目、Div1は今季から昇格した4位・アミティエSCが昨季のリーグ王者で6位と低迷する三洋電機洲本と対戦。太陽が丘運動公園陸上競技場で行われた試合は、終始アミティエが圧倒する展開で4-0と勝利した。三洋洲本はこれでリーグワースト2位の13失点。2勝2分5敗で、勝点はわずかに8ポイント。対して勝利したアミティエは勝点を11ポイントとし、同勝点で並ぶアイン食品を得失点差で抜いて3位に浮上した。

 

 天候は前日に比べると、雲が多く、日差しはきつくない。風が十分に吹いていて暑いがまだマシなものだった。メインスタンドにはアミティエの応援に駆けつけた関係者が予想以上に多くいて、チームの勢いを感じさせる。それよりも本当に今季の三洋洲本の不調ぶりは我が目を疑うばかり。2年前のKSLを10勝1分3敗で、そして昨季を10勝2分2敗で連覇を果たしてきたチームが、今季は未だ2勝という状況。前節のアイン戦(2-1)でようやくその2勝目を挙げたばかりで、この試合を観ると改めてそのチームの変貌ぶりに驚いた。昨季はこのブログにもバンバン登場してJFL入替戦まで挑戦した関西王者が見る影もない。

 アミティエは3トップの陣形で前線で黒木、守屋、下中がトリオを組む。昨季のDiv2の得点王でもあり、アシスト王でもある守屋が広いエリアを動いてリズムを作り、中盤の1列背後から篠原がパスを中心に試合を組み立てる。チームの絶対的エースは下中で、今季チーム総得点10点のうち6得点を下中が取っている。もちろん彼らの攻撃力は昨季のKSLカップ(0-3)、そして今季の対戦(3-2)と奈良クラブも痛いほど思い知らされているわけで、おそらく後期、奈良と加古川の2強をしつこく追走することすればこのチームなのは間違いなさそうだ。
 対する三洋洲本は、先発に2季連続MVPの成瀬、そして2季連続得点王の梅川、2季連続地域決勝に進出したチームを最後尾で引っ張った頼れる守護神・浅野が総じてベンチ。代わってゴールを守るのは松浦、中盤は村上、沈に中尾、稲垣で構成されており、前線でコンビを組むのは廣瀬と徳井だった。

 試合は、前半からアミティエが攻勢に出る。16分にゴール前で黒木が振り向きざまに惜しいシュートで三洋洲本ゴールを脅かすと、18分に篠原がペナルティエリア右手30度ほどの角度からシュートを決めて先制点をゲット。27分には、篠原のドリブル突破からパスを受けた下中がシュートで決定機を作る。劣勢を強いられ、中盤でボールロストの多い三洋洲本はマイボールで相手エリアまでなかなかボールを持っていけず、何度かセットプレーでチャンスを掴むがモノにはできない。決定機を作り続けたアミティエは、31分には守屋がわずかにゴール左に逸れるシュート放つと、前半終了間際にはカウンターからフリーでGKと1対1の場面を作った下中が追加点となるシュートを決めて2-0で前半を折り返した。
 スコアこそ2-0だが、決定機の数でいえばもっと大差がついてもおかしくない試合展開。相手にボールをいいように奪われる三洋洲本には覇気が感じられなかった。

 
 16分、アミティエ・黒木のシュートはサイドネット。

 
 
 先制点の場面。篠原がしっかりゴールを射抜いた。

 
 
 31分にはアミティエ・守屋がこのシュート。
 三洋洲本は肝を冷やす。

 
 前半終了間際に下中が今季7得点目となるチーム2点目。

 ハーフタイム、三洋洲本ベンチのテントでは入念なミーティングが行われていたが、後半が始まると、アミティエが前半以上に立ち上がりから猛攻。46分に相手のDFラインの裏に抜け出た下中がGKと1対1に。ここは三洋洲本・GK松浦がシュートをブロックして難を逃れるが、48分にはアミティエ・長島がゴールマウスめがけてシュート。これもGK松浦がかろうじてセーブするなど、追加点は時間の問題に思えた。
 すると、51分にゴール前のルーズボールを右からヘッドで折り返したところを下中がこの日2点目となるヘディングシュートを決めると、その1分後には篠原のアーリークロスに後半から出場の山本が頭で合わせて立て続けに4点目を奪った。三洋洲本の集中力が整う前に一気に加点したアミティエ。完全に勝負は決まってしまった。

 
 アミティエゴール前まで攻め込むが決め手に欠ける三洋洲本。

 その後両チーム共に得点が生まれる機会はなかったが、三洋洲本は途中交代で梅川を出場させるものの、75分に友定の右クロスにぴったりのタイミングで沈がヘッドで合わせるがわずかにゴールならずという場面以外ほとんど良い形が作れなかった。「成す術なし」といった感じで勝敗は分かれてしまった。

 
 三洋洲本は梅川(左)を投入する。
 しかし、ややペースこそ握るものの得点にまでは至らない。

 誰もが優勝候補と考えていたであろう三洋洲本。これで2勝2分4敗と2季連続のリーグ王者がまさに失墜のシーズンともいえる現状だ。得点はリーグワースト2位の7得点で、失点も最下位・阪南大クラブに次ぐワースト2位の13失点。2009年度2010年度の戦績を見ればかなり異常事態ともいえる。チームの新陳代謝を意識してなのか、それともケガなのか、昨季までの主力選手がベンチだったり、欠場していたりと揃っていないことが原因。先週末にはTOJITSU滋賀FCとの全社関西予選に臨むための順位決定戦にも敗れた。チームの刷新にしろ、今季は非常に厳しい戦いを強いられそうだ。

 奈良クラブが次節対戦するアミティエは、確実に勢いがある。全体的に学生チームと呼んでも遜色ないほどに若く、良く走る。チーム練習は奈良クラブと同じく午前中が基本で、この夏場にも強そう。前期には加古川にも勝っており、後期は奈良、加古川の2強を追走してくるだろう。特に前期の対戦時に得点を決められているFW下中は体幹が強くフィジカルにも長けた要注意選手で、今後も得点王レースをリードしていきそうな気配。思えば、このアミティエ戦は前期も苦戦しており、日野のPKストップなどの活躍が無ければ相当危なかった。前線の3枚はおろか、中盤の篠原までしっかり捕まえないと危うい。勝機は後半の運動量がキーになりそう。試合巧者としての差も見せておきたいところだ。

 
 非常にエネルギッシュなこのチームをどう攻略する?

熱闘、関西開幕 -アイン VS TOJITSU滋賀-

2011年04月09日 | 脚で語る地域リーグ
 いよいよ2011年度の関西リーグが開幕。キンチョウスタジアムでは、Div1の2試合が行われ、第1試合では阪南大クラブとバンディオンセ加古川が対戦。試合は加古川が2-1と勝利して開幕白星スタート。続く第2試合では、昨季2位のアイン食品が2年ぶりにDiv1に返り咲いたTOJISTU滋賀FCを迎撃。試合は2-0でアインが勝利した。

 

 所用で第1試合はほとんど観戦できなかったが、スタジアムに到着するや、選手の大量入替えでリスタートを図る加古川が上々の出だしを締め括るところだった。今季のDiv1は相手にすればどこも手強いところばかり。続く第2試合の2チームもそれは同じくだ。
 2月の西日本社会人大会で、有望な大卒選手を中心に新シーズンの陣容を垣間見せてくれたアイン。この試合では、中央大より加入したGK畑、そして仙台大より加入したDF松本、大阪体大から加入の藤岡が先発に名を連ねる。対する滋賀も基本的には昨季ベースのメンバーが中心ながら、新加入選手ではルネス学園甲賀から加入した細木が先発に名を連ねた。

 
 試合に先立って掲げられたこの横断幕。
 滋賀サポーターより被災地のクラブへのメッセージが。

 先の東日本大震災で犠牲になった方々への黙祷を行って試合はスタート。午前中の曇天から時折強い日差しが照り付けて、かなり気温は上昇した。相当コンディションとしては厳しい試合になっただろう。前半から両チーム、思うように前線にボールが収まらず、これといった決定機を作れない。前半の序盤こそアインが何度か滋賀ゴールを脅かしたが、GK内野を中心に堅い守備で先制点を許さない。滋賀も前線のエース・岩田を起点にアインゴールに迫った。

 
 アインが滋賀ゴールに詰め寄るが、内野がかき出す。
 前半は双方決定的な場面を作れない。

 
 チームきっての古参選手といえるDF小池
 滋賀は09シーズン以来のDiv1リベンジとなる。

 
 フィジカルに強い2年目のDF上田。
 滋賀の最終ラインをまとめるリーダー的存在。

 後半に入って、開始からアインは藤岡に代えてFW千代原を投入。このアインではルーキーながら、既に大学時代に阪南大クラブで関西リーグでは9試合出場8得点という結果を残す選手だ。躍動感ある彼の投入で、今ひとつ決め手に欠いていたアインが彼の裏への飛び出しなどから徐々に攻撃の形を作れるようになってきた。

 
 滋賀のバンディエラともいえるFW岩田。
 主将として、エースとして前線で体を張ったが・・・

 
 アイン・吉居のプレスに滋賀・細木が倒れる。
 後半に入ってアインの守備も集中力は落とさない。

 守備面ではGK畑を軸に枠内へのシュートは完全にシャットアウトするアイン。54分にはゴール前の混戦からこぼれたボールに、楠本がこのボールに反応して鮮やかなシュートを決めて先制点をゲット。膠着した試合を動かす。その後、57分の滋賀・藤原の直接FKもGK畑がしっかりとセーブして反撃を寄せ付けない。

 
 アインの先制点はこの楠本のシュート。
 運動量豊富な司令塔。

 
 身を挺してチームのチャンスを作ったアイン・FW坂本。
 かつては栃木SCに在籍。

 64分にFW田中を投入し、同点に追いつきたい滋賀だったが、68分にその田中が左からの折り返しを決められない決定機逸。徐々にチャンスが作れなくなってくる。
 すると、85分にアインは右からの町田の折り返しを千代原が決めて試合を決定づける追加点。ここまで再三相手ペナルティエリアまで攻め込みながら、チャンスをフイにしていた千代原が大きな仕事を果たした。

 

 
 千代原が2-0とする追加点をゲット。
 途中交代で見事に期待に応える。

 
 滋賀GK内野は「リベロ」と形容できそうな果敢な飛び出し。
 健闘したが、2失点はノーチャンス。

 
 アインの左サイドバックを務める原賀。
 FC刈谷から加入した。元来攻撃的な選手の様子。

 長年、この関西リーグにおいて、「盟主」ともいえる実績を残すアイン。前半こそ硬さが目立ったが、巧みな選手交代とそのカードでリズムを手繰り寄せた印象。確実に優勝争いには名を連ねてくるだろうとは思う。奈良クラブも昨季は1勝もできなかった相手。この壁を打ち崩さなければ関西では結果を出せないだろう。
 一方の滋賀も既存の選手に新加入の選手が徐々に今後噛み合ってくるだろういう予感。2年ぶりのDiv1での戦いに選手たちの気持ちは奮い立っているようで、勢いを感じる。奈良クラブは未だ公式戦では対峙していない相手。そして、初となる鴻ノ池開催での対戦相手。前期の彼らとの対決だけは何としてでも勝たなければいけない舞台。今から面白い試合が期待できそうだ。

開幕間近、今年は関西が熱い

2011年04月05日 | 脚で語る地域リーグ
 2011年もあっという間に4月に入り、今年も関西リーグの開幕を間近に控える暖かい春が訪れた。3月に起きた未曾有の大震災。国内ではサッカーが満足にできる地域が無いという状況の中、無事に開幕を迎えられるのは幸せなことだ。今季もDiv1、Div2共に8チームの合計16チームで熱い戦いが9月まで繰り広げられる。

 奈良クラブの話題は後述するとして、今季の関西リーグDiv1は何とも混戦必至。全く予断とマイチームの勝ち星勘定を許さぬ状況だ。2年連続の王者であり、昨季はJFLにあと一歩及ばなかった三洋電機洲本を筆頭に例年の強豪チームは健在。特に昨季2位のアイン食品は、関東、関西学生1部リーグの大卒選手を中心に隙のない補強。中央大のGKを務めた畑、大阪学院大で副主将を務めた河俣、阪南大クラブでのプレーで既に関西リーグは経験済みである千代原、大阪体育大の藤岡などが加入した。また東海1部リーグのFC刈谷からも原賀をチームに迎え入れている。既存の選手と彼ら新加入選手がどれだけ融合するのか。全く侮れないチームだ。
 
 トップチームが関西学生最強といっても過言でない阪南大クラブ(昨季3位)はフレッシュなメンバーで刷新。そして、今季はバンディオンセ加古川(昨季6位)がかつてJを目指した「神戸」時代に迫るかのような猛烈な補強を実践しているのは非常に気になるポイント。引退・退団選手こそ多かったものの、流通経済大、阪南大、関西大、近畿大など東西の強豪校から16名もの新加入選手が顔を揃え、中にはJ2湘南から加入した林、J2水戸でのプレー経験もある木村、JFL秋田でプレーしていた池田などJリーグ経験選手の名前も見られる。加古川は昨季と全く異なったチームに生まれ変わりそうだ。奈良クラブが開幕戦マッチアップする予定のラランジャ京都も外国籍選手が抜けたが、中尾、伊藤、大河内といった主力選手は未だチームの中心。昨季も途中から数人の外国人選手がチームに加わったように、後期の対戦時には別のチーム陣容に様変わりしていることも考えられる。2年連続開幕戦での対峙となったが、昨季は広島、金沢などでプレー経験のある中尾に得意のロングスローからゴールを2度も破られた。今季も1試合目から厳しい戦いの予感。

 ここに新たに昇格してくるのが昨季のDiv2における壮絶な激戦を切り抜けたTOJITSU滋賀FCとアミティエSCの2チーム。奈良クラブより1年早く関西リーグに昇格して戦っているTOJITSU滋賀は、Div2に降格した昨季、1年でリーグを制してのDiv1カムバック。かつてチームを牽引した選手の多くがチームを去ったが、地元のびわこ大を中心に若くフレッシュな戦力を補強している模様。健在のエース岩田を筆頭に攻守にバランスの良いチームに仕上がっている予感。
 そして、昨季シーズン56得点と大暴れしたアミティエも大卒選手を中心に抜け目ない補強。奈良クラブも昨季のリーグカップでは0-3と完敗しており、今季は早々の2節(日岡山)でそのリベンジの機会が訪れる。

 この大混戦必至のリーグに3年目のシーズンとして身を置く奈良クラブ。昨季勝点を合計12ポイント獲得できた学生チームは2チームとも降格しており、絶対的な勝算は立たない。果たしてどこまで激戦をモノにしていけるか。目標はもちろん優勝。しかし、残り7チームも同じ目標と執念で奈良クラブを迎え撃つはずだ。
 
 この熱い関西リーグ、震災の影響でJリーグ、JFLと全国規模のリーグが延期を強いられる中で通常開催される。サッカーの生観戦に飢えている方は、それら全国リーグが再開までこちらの序盤戦に是非とも会場に足を運んで頂ければ幸いだ。

 関西サッカーリーグオフィシャルサイト

 関西サッカーリーグチームガイド

 関西サッカーリーグDiv1前期日程

西日本社会人大会<4> 讃岐 VS アイン

2011年02月16日 | 脚で語る地域リーグ
 西日本社会人大会の2日目、S3グラウンドの最終試合は、カマタマーレ讃岐(四国1位、JFL昇格)とアイン食品(関西2位)の対戦カード。地域決勝で見事に優勝を果たし、今季からJFLへと参戦する讃岐が昨年に続きこの大会に参戦していたのだ。試合はアインが先行する展開ながら何とか讃岐が2-1と逆転勝利。J1(今季からJ2)の京都でプレーしていた西野がスタメンフル出場を果たすなど、1ヶ月後のJFL開幕へ策を練る2日間になったようだ。

 

 讃岐は前日の島根戦とメンバーを変えて試合に臨んだ。DFには松本山雅から新加入の大島が入り、中盤にはMIOびわこ草津から加入の坂井、神戸国際大から加入の荒維、徳島セカンドから加入の野口が名を連ねる。そして何よりもギャラリーの注目を一際集めたのはかつて磐田や清水などでプレーし、京都から加入したFW西野泰正だった。
 しかし、この豪華絢爛な讃岐に対してアインは先制する。18分、スピードを活かして突破した梅村がそのまま讃岐の最終ラインを突破してシュートを決める。昨年優勝した全社の5日間で無失点だった讃岐がこんなに簡単に失点してしまうのは何とも珍しい光景に見えてしまったが、これだけ新戦力がいれば当然。むしろ、きっちり連携を構築するためのチャレンジが随所に讃岐からは見えた。

 
 18分、アインがこの梅村の突破で先制点をゲット。
 序盤から良いパスワークを見せたアインが試合をリードする。

 
 相原、神崎の2人で新加入の大島をサポート。
 相原は地域決勝でも全試合出場で讃岐においては不動の存在。

 讃岐は立て直して攻勢に転じるが、アインもよく守る。讃岐に比べると経歴も派手な選手はあまりいないが、FC刈谷から新加入して間もない原賀が左サイドバックに入り、サイドライン際で当たりの強さを発揮していた。攻撃面では昨季限りで中心選手だった鈴木が退団したのは痛いが、FWの坂本を中心にそれを感じさせなかった。

 
 大体大から新加入のルーキー藤岡。
 今後アインの中心選手になりそう。

 
 讃岐・MF荒維とアイン・DF原賀が競り合う。

 
 前半で退いたが、神崎の守備は今季も健在。
 讃岐の堅守の中心。自身も初のJFLにチャレンジ。

 讃岐は再三サイドから西野をターゲットにクロスを放り込みにかかるが、なかなか実らない。しかし、42分にはその展開から野口の折り返しを坂井がシュート。相手GKが処理にもたついたところを中島が押し込んで讃岐が同点に追いついた。相手のミスを逃さないあたりはさすがというべきか。 
 後半に波夛野が神崎に代わって入り、更にロックがかかった讃岐。66分には野口が逆転となるシュートを決め試合をひっくり返した。

 
 なかなか讃岐のクロスは西野に合わない。
 まだ最初の試合、これが噛み合えば讃岐は強いはず。

 
 アインの新戦力であるGK畑。
 中央大から加入の実力派。これは更に守りに磨きがかかりそう。

 
 後半から波夛野が出場。
 間違いなくJFLの長丁場では重要な選手。

 
 讃岐の逆転弾を決めた野口とアインの新加入・河俣が競り合う。
 河俣は大阪学院大の副将を務めた選手。

 讃岐はまだまだ調整不足な感が否めず、連携面などで苦戦を強いられたが、個人の力で勝っていた。西野も得点こそ無かったが、時折声を荒げながらJでの経験を還元すべくフル出場。予定通り3日間大会が行われれば、タイトルも狙えたと思うが、新加入選手の多いチームとしてはもちろん調整試合。ほぼターンオーバーで2試合をこなした讃岐がどういう形で初年度のJFLを戦うか少し楽しみになってきた。
 一方のアインも関東からGK畑、関西から河俣、藤岡、そして刈谷から原賀と、大卒ルーキーや実力派の選手たちを堅実に補強している模様。JFLに戦いの場を移す讃岐に十分善戦していた。これはチームが完成してくれば、今季の関西リーグでも危険な存在になってきそうだ。

 
 
 西野、吉澤などJ経験者を擁したカマタマーレ讃岐。
 15日には見事にJ準会員に承認。
 J入りをかけた新シーズンを迎える。

西日本社会人大会<3> HOYO VS 島根

2011年02月15日 | 脚で語る地域リーグ
 西日本社会人大会は13日に2日目を迎え、J-GREEN堺S3グラウンドではHOYO AC ELAN(HOYO Atletico ELANより改称(九州1位))とデッツォーラ島根(中国2位)が対戦。試合は3-0でHOYOが勝利を収めた。

 

 大分県リーグからKyuリーグ(九州リーグ)に昇格1年目でリーグを制し、昨季は地域決勝にも臨んだHOYO。この大会には中心選手の堀を含む一部の選手が参加しておらず、地域決勝に参加していた選手は堤、中島、原、古賀といったあたりの選手だけ。前日のアイン戦もPK戦負けを喫していたが、大会参加メンバーの大半が新加入選手で、この島根戦では彼らがフィットして連携の良さを随所に見せる。10分に中原のクロスに糟谷がバイシクルシュートを見せてチャンスを作る。地域決勝で目立った選手こそいないものの、糟谷とカマタマーレ讃岐から今季新加入の佐藤のコンビが前半から幾度となく島根ゴールに迫る場面が見られた。16分にはその糟谷のパスに反応して相手DFラインを上手く抜け出した中嶋が浮き球のシュートでゴールネットを揺らす。ギラヴァンツ北九州より新加入の期待のFWが前日のアイン戦に続く得点。早速結果を出した。

 
 昨年の地域決勝でも2試合に出場。
 HOYO中島が中盤でボールを捌く。

 
 HOYOのMF長は前日のアイン戦で中嶋の得点をお膳立て。
 島根戦もフル出場。

 対する島根も試合開始からかなりペースでHOYOボールに食らいついた。中盤から運動量を発揮してHOYOを追い込む。こちらも昨季は中国リーグで山口にあと一歩と迫る戦いを見せた。この大会では、早速宇部ヤーマンから新加入のGK穂積とJFLのV・ファーレン長崎から加わったMF幸野屋がスタメン出場。しかし、前日の讃岐戦は0-5とJFL昇格チームにその差を突きつけられた。その悔しさがあったのか、島根は試合開始から随分アグレッシブだった。HOYOに先制点こそ献上したが、34分には空山が、そして37分には幸野屋がシュートを放ってHOYOゴールを狙う。

 
 HOYO陣内へ突破を試みる島根・MF梁瀬。
 決定機を作ることはできず。

 後半に入ると、島根の息切れが目立ち始め、徐々にHOYOが試合のリズムを掌握。69分には佐藤が堀内からのボールを胸トラップして鮮やかなボレーシュートをゴールに沈める。その直前に決定機をポストに当てていただけに佐藤にとってはようやくのHOYO加入後初得点となった。82分には再び佐藤が決めて3-0とし、勝負を決めた。

 
 讃岐より新加入のFW佐藤が貫禄の2得点。
 シュートを6本放つアピールぶり。

 
 途中出場の古賀が決定機を決められず天を仰ぐ。
 地域決勝1次ラウンドの山口戦では決勝点を決めた。

 前述の通り、HOYOには地域決勝で見た選手のほとんどがいなかった。しかしながら、得点を決めた中嶋、佐藤に加えてゴールを守った船津も北九州から加入したばかり。ベンチには控えGKでこれまた讃岐から加入した河原(奈良育英高出身)がいるなど層の厚さはピカイチではないだろうか。この快勝劇から今季のHOYOの快進撃が見えるような気がした。今季のKyuリーグもダントツの優勝候補なのは間違いない。
 一方、この大会の島根は厳しい2試合となってしまった。ベテランの庄司が39歳ながらまだまだ健在でフル出場で頑張っていたのが印象的だったが、まだまだシーズン始まったばかり。群雄割拠の中国リーグが始まれば山口と共にリーグを盛り上げてくれるだろう。

西日本社会人大会<2>南国高知 VS 三洋洲本

2011年02月14日 | 脚で語る地域リーグ
 なんとか天候が回復の兆しを見せてきた13:00からの第2試合。前の山口-V鹿児島がPK戦までもつれ込んだこともあって、少し遅れて始まったのは南国高知FC(四国4位)と三洋電機洲本(関西1位)の対戦。結果こそ1-0の最小得失点差だったが、終始三洋洲本が圧倒。関西リーグ覇者がまずまずのスタートを切った。

 

 南国高知は個人的にも初見となるチーム。一時期「カットゥーオ」と名付けられた鰹のキャラクターが話題をさらったが、かつては四国リーグで無類の強さを発揮していたこともあり、2001年から2005年シーズンまでリーグを5連覇。地域リーグ決勝大会の常連チームでもあった。近年は讃岐や徳島セカンドの陰に隠れていたものの、その2チームがリーグから姿を消すこともあって、再び全国の舞台を狙うべく愛媛FCしまなみとの2強態勢が予想される。しかし、対する三洋洲本がベストメンバーでなかったながらもこの試合では両者の差が見えた印象だ。

 
 南国高知の攻撃を支えるFW筒井。
 以前は徳島セカンドでプレーしていた選手。

 三洋洲本はGK浅野が負傷で試合のメンバーから外れており、道上が先発出場。新加入選手は見られず、大会登録メンバーもリーグ戦のメンバーと変わらない。地域決勝や入替戦の時とは少しメンバーに変化がありながらも、関西リーグ2年連続MVPの成瀬を中心に連携では常に南国高知に優位に立った。16分、左サイドから稲垣が折り返したところに井上が詰めて難なく先制する。ところがここから追加点が遠い。32分、45分と立て続けに決定的なシーンをエースの梅川が決められない展開が続いた。後半も友定のミドルや途中出場の森川のボレーシュートなど見せ場は作ったが、結局1点止まりだった。それでも地域決勝の時と若干のメンバー変更がありながら、連携面はさすが。かなり攻撃に課題の軸を置いてこの大会に臨んでいるのかなという印象も感じた。

 
 09年、10年と2年連続リーグMVPの成瀬。
 三洋洲本JFL再挑戦のためにも欠かせない選手。

 
 南国高知は三洋洲本の安定した守備の前に沈黙...

 対する南国高知もGK川竹がファインセーブを見せて最後尾からチームの背中を叩く。FW筒井に良い形でボールが入れば決定的な場面を作れたかもしれない。時折見せるカウンターやセットプレーでチャンスを窺うしかなかった。まだリーグの開幕まで時間があるだけに、このスパーリングがどれだけ活きてくるか、今季の四国リーグには注目してみたい。

 
 南国高知の四国覇権奪回へ向けたシーズンが始まった。
 

 

西日本社会人大会<1>山口 VS V鹿児島

2011年02月13日 | 脚で語る地域リーグ
 関西地方には珍しい規模の積雪で、まさかの1日目中止を強いられた西日本社会人サッカー大会。雪も溶けたJ-GREEN堺では12日より、当初の2日目に1日目の予定をスライドする形で大会は行われることに。始動したばかりの8クラブが開幕を見据えた準備戦を繰り広げた。

 

 当初S1グラウンドで行われる予定だった試合はS3グラウンドに場所を移して行われ、第1試合ではレノファ山口(中国1位)とヴォルカ鹿児島(九州2位)が対戦。0-0から直後に行われたPK戦の末に7-6で山口が勝利を収めた。

 

 大阪湾から吹きすさぶ冷たい風と、時折横殴りで降ってくるみぞれのような雨の中で試合は行われた。試合のペースを握ったのはV鹿児島。前半から左ウイングの山田、かつて鳥栖や松本山雅に在籍した栗山を起点にどんどんシュートを放つ。フィニッシュこそ枠を捉えられないばかりでその精度に欠いたが、シュートの意識で勝るV鹿児島が山口を圧倒する形となった。

 
 V鹿児島の新戦力・栗山は突破にシュートに躍動。

 
 山田も栗山と並んでチーム最多の4本のシュートを放った。
 一昨年の地域決勝1次ラウンド(春野)で印象に残っていた選手。

 0-0で折り返した後半、山口はシャイネン福島から新加入の小川、ジェフリザーブズから新加入の高田、そして中村の3人を一気に投入。なんとか1点を狙うべくサイドから攻撃を仕掛ける。
 V鹿児島は63分に栗山がドリブルで持ち込みながら決定的なシュートを惜しくも右に外す。ことごとく枠に収まらなかったチャンスの山。ここは決めておきたかったところ。対する山口も後半アディショナルタイムにDF伊藤が攻め上がってゴールを肉薄するシュートを放つが、わずかに右に外れて試合はスコアレスでPK戦へと突入した。

 
 山口は後半から入った中村が左サイドからチャンスを作る。

 
 ジェフ・リザーブズから加入したばかりのDF高田も後半プレー。
 時折攻め上がるなど印象を残した。

 
 スーパーサブの兒玉が残り15分から登場。
 しかし、決定的な仕事はできなかった。

 
 徳島セカンドからV鹿児島に加入のMF須貝。
 早速スタメンフル出場。

 
 後半アディショナルタイムには伊藤がこのシュート。
 山口の最後のチャンスはわずかにゴール右に外れる。

 そのPK戦は7人目まで突入。V鹿児島の7人目である松下が外してしまうと、山口は田中が決め辛くも勝利した。

 

 

 V鹿児島はクラブが法人化し、正式にJ準加盟の申請を明言するなど今後の注目を集める。かつて選手兼監督としてプレーした前田浩二氏がGM兼ヘッドコーチとしてカムバック。新戦力もこの大会までに6名が発表され、JFLへの挑戦に並々ならぬ意欲で新シーズンをスタートした模様だ。
 対する山口も昨季は地域決勝で悔しい1次ラウンド敗退。中国リーグでは島根や松江の台頭、岡山ネクストの存在など、決して独壇場という訳でもなさそう。今年は地元で国体も控えることもあって、チーム共々勢いに乗りたいところだろう。この試合ではまだ連携面がチグハグだったが、もちろん中国リーグの優勝候補には変わりない。