脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

カタール戦回顧 -オーストラリア戦へ-

2009年06月12日 | 脚で語る日本代表
 カタール戦を終えて・・・

 
 アジア最終予選ホーム最終戦を終えた代表メンバー。
 負傷で欠場の遠藤をはじめ5選手がオーストラリア戦には帯同せず。

 
 闘莉王を筆頭にゴール裏スタンドに労いの挨拶。
 興梠も途中出場でアピールした。

 
 中澤と楢崎のベテランコンビ。
 現在の日本代表チームには欠かせない2人。

 
 久々のお目見え内田は先制点を呼び込む活躍。

 
 このチーム最大の発見にして収穫は岡崎という新エースの誕生。

 
 オーストラリア戦は5日後。
 “消化試合”にしてはいけない。現有メンバーで死力を尽くすべき。
 

凱旋勝利ならず -日本VSカタール-

2009年06月11日 | 脚で語る日本代表
 南アフリカW杯出場を決め、凱旋帰国した日本代表がカタール代表と対戦。試合開始直後にオウンゴールで先制するも、PKで同点に追いつかれ1-1の引き分けで試合を終える形に。次戦のオーストラリア戦に1位突破の命運がかかる。 



 「この試合に勝てなきゃW杯でも勝てないよ」
 試合後、疲弊感漂うゴール裏スタンドからはこういった声が多く聞こえてきた。W杯出場を決定させて初めてのホーム凱旋試合。前節オーストラリアを相手に善戦したカタールが相手とはいえ、きっちり勝っておきたかった。試合前から高まる興奮を全てピッチにぶつけたサポーターには“不完全燃焼”といった幕切れだった。

 試合は開始直後に内田のクロスが相手DFに当たり、オウンゴールを誘発。しかしながら遠藤を負傷で、そして長谷部を出場停止で欠く日本の中盤には迫力は無く、度々押し込まれる展開に。53分には中澤のファウルでPKを与えたことで同点に追いつかれてしまった。

 試合後には、W杯出場決定セレモニーがささやかに行われ、ベンチに入れなかった指揮官はこの日勝てなかったことに対して詫びた。勝てなかったことでセレモニーもいまひとつ盛り上がらなかった。思えばホーム日本でのこの最終予選の試合は4試合で総得点がわずか3得点。岡田監督が掲げる「ベスト4」という目標との如実に現れているギャップにやはり戸惑いは隠せない。

 キリンカップでの圧勝劇は世間の期待感を煽り、そして逆に日本代表に対する目を懐疑的にもしてしまった。アジア最終予選での真剣勝負では勝手が違う。目標のW杯「ベスト4」が現状ではいかに遠いものかということを改めて知った横浜の夜だった。

 しかし、世界は止まってくれない。日本代表は本大会で勝つために突き進むしかない。

タシケントの死闘

2009年06月07日 | 脚で語る日本代表
 日本代表、敵地でウズベキスタンを1-0で下し2010年南アフリカW杯出場一番乗りを果たした。

 これほど先制点のアドバンテージが脆いものだと思った90分間はなかったかもしれない。15分以降、終始ウズベキスタンに攻められ続けた試合。先日のキリンカップと比にならない重圧がTV画面の向こうから感じられた。9分の岡崎のゴールはまさに値千金。中盤の運動力がほぼ果てながらも日本は集中して守り続けた。

 最後まで一番落ち着いていたのはGK楢崎かもしれない。ウズベキスタンのシュートを冷静に阻み続けた。特に枠内シュートへの対応は安心して、というか最後まで信じることができた。もちろんフィールドプレイヤーの選手たちも相手のシュートを体で止め続けた。楢崎もチームの守備を信じていたに違いない。11年前の初出場メンバーでは唯一の残存メンバー。自身4度目となる本大会出場の偉業達成だ。サブメンバーにも同じ奈良県出身の都築が万全を期していた。個人的にも同郷の人間として奈良県出身のGKが揃ってW杯出場を決めたその場にいたということは誇り高い。是非2人揃って南アフリカの本大会メンバーに残って欲しい。

 まだまだ通過点。岡田監督としては本大会ベスト4という目標を明言しているだけに本大会まで抜かりのないチーム強化をして欲しい。やはり最終予選突破よりも本大会での快挙に興奮したいというのが日本国民の本望だ。本大会で結果を出せてこそ、今夜のタシケントでの死闘は伝説になるはずだ。

“新鮮”力の台頭 -キリンカップ日本VSチリ-

2009年05月28日 | 脚で語る日本代表
 長居スタジアムでの久々の代表戦、キリンカップサッカー2009第1戦が行われ、南アフリカW杯本大会出場を目前に控えた日本代表はチリ代表と対戦。本田、長谷部と欧州で優勝を経験した選手たちの活躍や岡崎の2得点もあり4-0と快勝した。これで来月のW杯アジア最終予選に備えたスタートを良い形で切ることができた。

 
 

 
 立ち上がり、チリはFWポセドールが何度も日本陣内に攻め込む。
 フィジカルの強い選手で、対応した駒野も苦戦した。

 
 20分、日本のゴールの口火を切ったのは岡崎。
 本田のシュートのこぼれ球を押し込んだ。
 23分には攻め上がった中澤のスルーパスに反応、2点目を奪う。
 嗅覚、ポジショニングともに抜群で大きく先発争いにアピール。

 
 1点目と4点目を生み出した本田。
 オランダで経験を積んだことで存在感がアップ。
 攻撃の核になった。

 
 散らし役の遠藤もチームのバランサーとして貢献。
 52分にはCKから阿部のゴールもアシスト。

 
 違う特性を持ったプレスキッカーが2人揃った。
 ここに中村俊も加われば直接FKの局面はこれから面白いことに。

 
 39分に登場した山田直。まだ18歳とは思えない堂々のプレーぶり。

 
 61分には遠藤に代わって橋本が出場。
 すっかりこのチームでも主力となってきている。

 
 77分、お待たせしましたとばかりに山口智フル代表デビュー。

 
 83分には期待の香川も登場。
 ホーム・長居の大声援を背に体調の悪さを感じさせないプレー。

 
 A代表初キャップを快勝で終え胸を撫で下ろす山口。
 このまま本大会出場を決め、最後までメンバーに残りたい。

 日本代表の好パフォーマンスに沸き返った長居スタジアム。コンディションが整わない様子の相手にもう少し決定機はあったものの、チリを寄せ付けない試合運びは今後の戦いに期待を抱かせてくれた。特に岡崎と本田の存在感は際立ち、山田直や数分の出場だった香川も今後が楽しみなプレーを見せてくれたことは収穫か。新鮮な新戦力の台頭で、今後を決する本番を前に良い出だしとなった。

3人の奮闘に期待!

2009年05月22日 | 脚で語る日本代表
 27日に始まるキリンカップ(チリ戦、ベルギー戦)及び2010年ワールドカップアジア最終予選(ウズベキスタン戦、カタール戦、オーストラリア戦)に臨む日本代表メンバーが26名発表され、G大阪から山口、橋本、遠藤の3選手が選出された。

 

 山口の選出には驚いた。確かに今のJリーグでは最もタフなDFの1人であるし、昨季からの厳しい日程を大きなケガなく安定したパフォーマンスで戦っている選手だ。何しろ約3年ぶりの選出。彼の代表選出を誰が予想しただろう。川崎の寺田が負傷離脱したということも影響したようだ。おそらくバックアッパーのスタンスになりそうだが、日本代表の今後がかかった大きな1ヵ月間だけに、G大阪の闘将にはしっかりといつも通りのプレーを見せてもらいたい。

 

 橋本も岡田体制では常連の1人になってきた感がある。現在のG大阪で彼の主戦場は“右サイドバック”。相変わらずそのユーティリティ性に対する評価は高い。3月のバーレーン戦では途中出場ながら最終予選のピッチに立った。ただ、その器用さから起用され続けているサイドバックではあまり彼の本領は発揮できていない印象。代表では久々に本職のボランチで勝負する橋本を見てみたい。

 

 もはや代表では大黒柱の遠藤。選出は既定路線で彼を欠かしての日本代表の今回のヤマ場は考えられない。そろそろ代表ではPK以外にも直接FKで沸かしてもらいたいところだが、3月のバーレーン戦でも顕著だった守備面での貢献がまた確実に遠藤の評価を上げたのではないだろうか。最終予選の3連戦のどこかで彼のゴールが見られれば嬉しいことだ。

 今回の代表メンバーには浦和の山田直が選出された。18歳とは思えない堂々としたプレーで、先日の遠藤との熾烈なマッチアップも記憶に新しいところ。この5連戦のどこかでサプライズをもたらしてくれそうな気がする。
 ただ、リーグでも好調な渡邉千真や佐藤寿人あたりは個人的にも選出されるのではと思っていただけにメンバー落ちは残念。常連のFW陣がこれ以上に奮起してもらわなければならないのだが。

 とにかく、すっきりとした勝利でワールドカップ本大会出場を決めてもらいたい。そのためにも前述のG大阪3選手の奮闘に期待したい。

結果良しも、内容寂し -日本VSバーレーン-

2009年03月29日 | 脚で語る日本代表
 2010年W杯アジア最終予選2度目のホームゲームとなった日本代表。ここで対するはこの1年で5度目の対峙となるバーレーン代表。
 アウェイで2度の苦汁を舐めている相手に日本は終始押し気味で試合を進め、47分に中村俊のFKが相手の壁に当たりゴール。これが決勝点となり1-0で勝利した。これで日本代表は本大会出場に大きく前進。しかし、攻撃陣は依然相手守備陣を決定的に打ち崩せず、先月のオーストラリア戦からの進捗は見えないままとなった。

 
 
 
 埼玉スタジアムに集まった大観衆が一つになる 大事な試合を迎えた

 
 Jリーグが始まり、各選手のコンディションは上向きのはず

 
 手のうちを知り尽くしたバーレーンを相手に勝利は至上命題

 
 中村俊、長谷部ら海外組が攻守にチームをリードする

 
 前半からボールを支配するもバーレーンを崩せない

 
 ゴールが求められた玉田 思うようにシュートを打てず

 
 バーレーン守備陣の前に潰される日本 ゴールが遠い

 
 田中が果敢に突破を試みる

 
 左サイドから攻撃参加する長友 チャンスには繋がらない

 
 ゴール前のファウルが多いバーレーンを相手に・・・

 
 後半開始直後に得た直接FKを中村俊が・・・

 
 壁に当てながらも華麗に決める!日本先制

 
 少しミスの目立った大久保 攻守の切り替えのスピードには貢献

 
 最後尾では闘莉王がチームを鼓舞 守備は無難

 
 攻撃の組み立てには欠かせない日本の司令塔・中村俊

 
 その陰で最も光っていたのは遠藤の守備 ポジショニングが抜群

 
 76分には長谷部に代わって橋本がピッチに 無難に代役をこなす

 
 出番は少なかったが、要所要所を締めていた楢崎

 
 攻撃よりも守備が印象に残る ゴールを奪わなければいけないのだが

 
 ひとまずの勝利で南アフリカ行きを近づけた日本代表
 しかし、この崩せない攻撃で大丈夫か!?

 玉田をはじめ、FW陣の出来に不安と不満の残る日本代表。引いて守りに徹したバーレーンを決定的に崩した場面は少なく、スタジアムからは大きな溜息が洩れる場面が多かった。中村俊のFKが決まっていなかったらどうなっていたことやら。その辺りは今年の日本代表の大きな課題となりそうだ。

弾けろ!大阪勢3選手 -バーレーン戦を前に-

2009年03月27日 | 脚で語る日本代表
 2010年南アフリカW杯アジア最終予選の日本対バーレーンが明日に迫ってきた。日本代表にとっては、この1年で5回目の対峙となる相手。前節のオーストラリア戦をスコアレスドローに終えてしまった日本にとっては、何としてでも勝ち点3を奪いたい相手だ。
 Jリーグが開幕し、今回の招集メンバーはそれぞれのコンディションが明暗を分けたが、中村俊、長谷部、松井、大久保の海外組をはじめ、G大阪からもお馴染みの遠藤と橋本が合流中。明日の埼玉スタジアムで彼らがどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだ。

 

 チームと共に今季のスタートも好調な遠藤。昨季からの強行日程をものともせず、得意のPKでここまでACLを含めて3得点。そろそろ代表でも久々のゴールが見たいところだ。明日は3ボランチの中央や1ボランチを担う可能性も有り。FKに関しては「入るときは入りますよ」と自信満々の様子。約1ヶ月ぶりの中村俊との連携にも期待。

 

 最近コンスタントに招集されている橋本も最終予選でのプレーが見たい。2月のフィンランド戦で惜しいシュートを見せてくれた場面が頭から離れない。遠藤と共にチーム随一の強行日程を戦う男は、調子が決して悪くないだけに出番が訪れることを期待。

 

 無限大の可能性を持つ規格外のプレイヤー、20歳を迎えたばかりの香川にも期待。今回はC大阪でも良い連携を見せる乾がいないが、彼ならやってくれるでしょう。果たしてスタメン起用されるのか。あわよくば貪欲にゴールを奪って欲しい。しかし、バーレーン戦の翌日の愛媛戦(ニンスタ)に出場するというのだから本当に凄い。

 好調の大阪勢3名の選手が最終予選の舞台で大暴れしてくれることに期待!

リベンジ果たせず ~日本VSオーストラリア~

2009年02月12日 | 脚で語る日本代表
 南アフリカW杯アジア最終予選の日本VSオーストラリアの一戦は、0-0の悔しいスコアレスドローに終わった。6万5571人を集めた日産スタジアムは、代表戦史上5番目の5番目の集客数となった。

 

 負けることはなかった。しかし、勝つこともできなかった。試合終了のホイッスルと共にホームゴール裏は、声を無くした。この日迎えたオーストラリアには、2006年のドイツW杯本大会のグループリーグでの逆転負けという大きな借りがある。この日のサポーターは、誰もがそのリベンジを達成しようと、試合前から大きく意気込んでいた。そして完全燃焼ともいえる90分間の声援は、試合後、歓喜でなく悔しさに満ち溢れた沈黙に変わった。

 

 試合前に、約3年ぶりに6万人超えが予想されるスタジアムでは、ゴール裏のサポーター発進で、ウェーブを1周させようという試みが行われた。ところがなかなか成功しない。いつもバックスタンドで止まってしまう。“何とか声援をひとつにしたい”という一心でそれは何度も続けられた。
 正面の遥か向こうには、たくさんのオーストラリアサポーターがゴール裏の一角を占めていた。親善試合とは違うその人数の多さや前述の風景が、この試合の重要さを物語っているようにも思えた。

 
 開門直後、試合前の風景

 試合中のゴール裏の熱気は凄まじかった。誰もが日本代表を勝たせようと声を送り続けた。誰もが勝利を信じていた。そのホームの大声援を受けながら、日本は前半から試合を支配。シュート数でも圧倒するが、最後までゴールが遠かった。中村俊のFK、長谷部、玉田のシュートが枠に収まらない。試合のペースを握りながら、試合は結局ゴールが生まれることなく終了を迎えた。

 
 バックスタンドにはコレオグラフィのためのパネルが席に置かれていた

 岡田監督は、是が非でも勝ち点3を狙うつもりだった。しかし、そのために試合の流れを決定づける選手の投入や配置変更は無かった。選手交代のカードも1枚残っていた。この勝ち点2のマイナスは今後響いてくるだろうか。とにかく次戦のバーレーン戦もヤマ場になってきた。2位以内を狙っての本大会出場は狙えるが、最新のFIFAランキングでは、オーストラリアとの差は10位(27位と37位)。少しずつ差が開く新たなアジアのライバルには、6月17日にメルボルンで土を着けるしかない。

さあ、オーストラリア戦へ

2009年02月04日 | 脚で語る日本代表
 キリンチャレンジカップで日本代表がフィンランド代表と対戦。5-1で快勝した。

 大久保が不在の中、2得点と好アピールした岡崎、3点目を挙げた香川、代表初ゴールとなった安田理など、若手の北京五輪代表メンバーが良い動きを見せてくれた。しかし、“仮想豪州”と言われていた今回のフィンランドはあまり動きが芳しくなく、やはりオーストラリアは全くの別のチームという印象。今日の快勝劇からすれば、来週の水曜日は厳しい戦いになるだろう。満員の横浜の雰囲気が実に楽しみだ。

 先発に名を連ねた遠藤、橋本、途中出場の高木、安田理らG大阪勢も最終予選に向けた良いアピールの場を持った。特に橋本は久々の出場でいきいきした印象を受けたし、遠藤も昨季の疲労や負傷の心配を感じさせてくれなかった。安田理は無回転の強烈なシュートで相手GKのミスを誘い、ゴールも奪った。是非、今年は最終予選突破の中心としてG大阪勢には活躍してもらいたい。

 テレビとはいえ、久々に観られたのは「リティ」ことフィンランドの司令塔リトマネン。95年にアヤックスの一員として、来日したときにはグレミオ(ブラジル)をPK戦の末に破って世界一に。さすがに37歳というだけあって、ほとんどメディアも騒ぐことはなかったが、オランダリーグ優勝5回、得点王1回の実績を持つスタープレイヤーをもう一度観られて良かった。昨年、少しだけフルハムに在籍していたが、現在は生まれ故郷のラハチでプレーしている。

 彼らフィンランドが湘南に練習試合で負けていたので、おそらく日本が勝利するだろうという見方で観ていたが、今年の3試合で全て失点を頂いているのは、岡田監督としても納得していないだろう。今年最初の完封試合は宿敵オーストラリアを相手に達成できるなら、これほどの成果はないと思う。

 とにかく、若手のアピールそのままに、来週はオーストラリアをホームでしっかりと叩いておかなければならない。

メツとカタールの憂鬱

2008年11月20日 | 脚で語る日本代表
 15年前の悪夢がつきまとうドーハの地で、日本がカタールを3-0と一蹴。2010年南アフリカW杯に向けて、大きな1勝を上げることができた。

 先週行われたシリア戦の緩さもあって、有識者を中心に試合前から悲観的だった今回のカタール戦。しかし、蓋を開けてみれば杞憂に終わった。90分間、常に日本がイニシアチヴを握る展開に安心して観ていられたのが正直なところであるし、得点を挙げた田中達、玉田を筆頭に前線の歯車が噛み合ってきたのは事実だ。不安視されていた最終ラインも無難に戦い抜いたといえるだろう。

 これで当面試合は無く、来年1月にアジアカップの予選がスタートして、2月にオーストラリアとの大一番を迎えるわけだが、何とかこの良い流れを持続して欲しいのは正直な感想だ。怪我の中村俊らコンディションが思わしくない選手を抱えるだけに、更迭を免れた岡田監督とチームには少しリフレッシュをしてもらいたい。

 さて、シャーデンフロイデとも形容すべきか。結果的に快勝で終えたカタール戦を振り返ると、敵将の今後を心配する余裕すら出てきた。UAEから100万ユーロとも報じられている莫大な違約金を代償に、カタールへやってきたブルーノ・メツに対して、今頃地元メディアがどう酷評すべきか頭をフル回転させているのだろう。
 それもそのはず、既にセネガルをW杯ベスト8に導いた6年前の指揮官のカリスマ性が失われているのは、19日号のエルゴラッソでも特集されていたばかり。日本より1試合消化数が多いにも関わらず、勝ち点4で、2強争いから後退することになった。イスラム教に改宗し、母国フランスを離れて約10年になろうとするかつてのカリスマ指揮官は、この地で中東における自身の監督キャリアに最も華々しい未来を描いていたのだろう。いや、描かされていたのだろうか。とにかく、今回の敗戦を受けて、ドラスティックにその進退さえも懐疑的になってきたといえる。

 カタールは現在、観光産業を中心とした国策にスイッチを試みており、石油や天然ガスなどの資源に依存した経済体制を危惧している。ハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニーが現在の首長に就いてから13年間、3度のスポーツにおける国際大会を成功させ、彼が掲げる国内運動競技発展の集大成をこのメツ率いる代表チームに託している。今回、試合が行われたアルサッド・スタジアムも綺麗に整備されたサッカー専用スタジアムで、15年前に日本代表が悲劇を味わったアルアハリ・スタジアムと比べると遙かに立派だ。続々と国内でプレーする外国人選手を帰化させてまで、世界に羽ばたこうとするカタールサッカーの希望が、今回の日本戦で潰えた訳ではないだろうが、メツに懸けられた期待を考えると、国民の失望は察して余りある。

 中東の地に魅せられたメツと、彼を使って、サッカーでも自国の力を誇示していきたいイデオロギーに距離が生まれつつあるカタール。半年後に日本でもう一度対戦する際には、もうメツはおらず、それに代わって世界的な知名度を誇る指揮官がベンチに鎮座しているのかもしれない。