図書館で借りてきた講談社の〈現代の文学〉というシリーズの23巻、『瀬戸内晴美 曽野綾子』。ただし昭和48年刊の古いもの。曽野綾子編は「弥勒」「海の庭」「只見川」「一条の光」「落葉の声」「殉死」「夢のタンゴ」「平野さんの松」「星との語らい」。ぜんぶ一度は文庫本で読んでいるはずだが「海の庭」「只見川」「一条の光」は憶えていなかった。まあ読んだといっても20年以上前のことだからね。
「一条の光」はいかにもストーリーテラーとして評判をとったこの人らしい、七章からなる短めの中編小説。各章の中心人物が最終章にふたたび現れて、それぞれの運命がいっきに大きく反転する。まさかこういうオチになるとは。たしかに一度は読んだことがあって、いくつかの短いシーンは読んだ記憶がよみがえってきたけれど、このオチにはびっくりした。人生の不確かさ理不尽さを語らせたら曾野綾子はすごいよー。
「殉死」「夢のタンゴ」「平野さんの松」「星との語らい」は掌編小説集『生命ある限り』からのもの。とくに「星との語らい」はよく憶えている。作家の「私」がパーティで居合わせた熊田トキという元記者である老女──とは言ってもまだ七十前らしいんですけどね。今から四十年前には、六十代後半はもう「老女」だったわけね──を家まで車で送っていく話。このおばあちゃんがかわいらしいのだ。かつてわたしを愛した男たちはたいていもう向うにいる、だからわたしは死を怖れない……。今生きてるこの世ではひとりぼっちで孤独なんだろうけどなあ。孤独な都会を凛として生きてくおばあちゃんの話、てのがあたしゃ好きなんですよ。『生命ある限り』は印象のクッキリしたすぐれた掌編を多く収めていて、曾野さんの作品のなかでも広く読まれてほしいものだ。こちらのページによると数種の版があって、作品に出入りがあるらしい。同じ作品だからと安易に考えて、わたしは文庫ぢゃたしか角川しか持ってない。新潮文庫も買っとくんだった。
「一条の光」はいかにもストーリーテラーとして評判をとったこの人らしい、七章からなる短めの中編小説。各章の中心人物が最終章にふたたび現れて、それぞれの運命がいっきに大きく反転する。まさかこういうオチになるとは。たしかに一度は読んだことがあって、いくつかの短いシーンは読んだ記憶がよみがえってきたけれど、このオチにはびっくりした。人生の不確かさ理不尽さを語らせたら曾野綾子はすごいよー。
「殉死」「夢のタンゴ」「平野さんの松」「星との語らい」は掌編小説集『生命ある限り』からのもの。とくに「星との語らい」はよく憶えている。作家の「私」がパーティで居合わせた熊田トキという元記者である老女──とは言ってもまだ七十前らしいんですけどね。今から四十年前には、六十代後半はもう「老女」だったわけね──を家まで車で送っていく話。このおばあちゃんがかわいらしいのだ。かつてわたしを愛した男たちはたいていもう向うにいる、だからわたしは死を怖れない……。今生きてるこの世ではひとりぼっちで孤独なんだろうけどなあ。孤独な都会を凛として生きてくおばあちゃんの話、てのがあたしゃ好きなんですよ。『生命ある限り』は印象のクッキリしたすぐれた掌編を多く収めていて、曾野さんの作品のなかでも広く読まれてほしいものだ。こちらのページによると数種の版があって、作品に出入りがあるらしい。同じ作品だからと安易に考えて、わたしは文庫ぢゃたしか角川しか持ってない。新潮文庫も買っとくんだった。