歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

批評編はぜんぶ

2010年04月07日 | 本とか雑誌とか
このところ丸谷さんの単行本が文庫になるのが滞っている気がする。もしかして、もう文庫本では出さないつもりかな、とか勘ぐっちゃう。でもエッセイに関しては、ここ数年、確実に質が落ちましたね。『男のポケット』でしたっけ? あのころは最高だったもん。でも文庫で出たら今でも買っちゃうんだけどさ。丸谷さんもう後期高齢者もいいところだもの。無理して連載なんか引き受けないで、悠々とお暮らしになればいいと思いますよ。そして、全20巻くらいの決定版の全集を、文藝春秋かどこかからお出しなさいませ。批評編、エッセイ編、小説編と別れて出たら、批評編はぜんぶ買う。

この人の本でいちばん読み応えがあるのは、中公文庫で出ていた『遊び時間』系統の雑文集や、中短編の評論やら書評やらを集めて並べた本だとわたしは見ているのですが、この手の本は最近出ていませんね。ちくま文庫で出ていた『コロンブスの卵』なんか、素晴らしかったですよ。この本には「徴兵忌避者としての夏目漱石」というのが入っていた。これは漱石の研究論文集にもたしかセレクトされていました。わたし、『コロンブスの卵』は文庫で持っていたんですが、もう十年くらい前にひと月ばかり入院したとき、同部屋になった難病の大学生の男の子にあげちゃった。その後、気がついたらもう文庫は品切れになっていて、けっきょく元版の古本をネット経由で見つけて購入し、今手もとにあるのはそれです。