歌わない時間

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ピノック『パーセル_オード集』

2009年05月24日 | CD パーセル
Purcell
Come, ye sons of art, away
Welcome to all the pleasure
Of old, when heroes thought it base
Smith, Priday, Amps, Chance, Wilson, Ainsley, George, Richardson
Choir of The English Concert
The English Concert
Trevor Pinnock
427 663-2

1988年録音。68分03秒。Archiv。ピノックのオード集。パーセル5枚組セットの中で、これだけはさきだって単発で買っていたもの。オード3曲それぞれのタイトル邦訳は『来たれ、汝ら芸術の子ら』『来たれ、すべての喜び』『その昔、勇者は故郷にとどまるを潔しとせず』。ピノックの指揮はていねいで、悪くないと思います。合唱は各パート4人ていど、オケもこぢんまりとした人数のはずですが、ピノックはめいっぱい歌わせていますね。

これを買ったのはですねえ、やっぱり狙いは《Come, ye sons of art》でして、ガーディナーので満足してはいたものの、なにしろあれはモダン楽器だし、録音も70年代だし、まちっと新しいのを聴きたくなったんですな。ソリストはスミス(S)チャンス(CT1)ウィルソン(CT2)リチャードソン(Bs)です。わたしはチャンスとスミスどちらもきらいなので、100%満点はつけません。スミスは声が澄んでいなくて、歌い回しにクセがある。チャンスはここではまあ許容範囲ではありますがこの人の歌はどっか図々しくて下品な感じがするのね。なお、CTはデュエットが2曲とソロが2曲ありますが、ソロはどちらもチャンスがとっています。

ほかの2曲のオードはこのCDではじめて聴いたんですが、聴きごたえのある曲であり、演奏であると思います。《Come, ye sons of art》が1694年、《Of old, when heroes thought it base》が1690年でいづれもパーセル円熟期の作であるのに対し、《Welcome to all the pleasure》は1683年とちょっと若い時期の曲なんですが、聴いてるとやっぱりそれがうなづけますわ。やや安定感に欠けるけれども斬新な作風。曲のおしまいがフェードアウトで終わるのが面白い。ここの終わり方はピノック巧く振ってます。

歌い手ですばらしいのはエインズリー(T)。この人は日本ではいまいち知られていませんけど、古楽も近代ものもかっこよく颯爽と歌えるテナーです。

えー、それにしてもピノックという人は、よくいえばていねいなんですが、いつもこう、なんとなくのっぺりとした指揮をする人ですね。まちっと彫りの深い指揮を心がけるとぐっと陰影が増して巧く聞こえたのにと思います。《Of old, when heroes thought it base》などはほかの指揮者──たとえばパロットだとどう振るか、ちょっと聞き比べてみたかったところ。

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