歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

〈The double, double, double beat!〉

2011年02月20日 | 音楽について
イギリスに渡ったヘンデルが、さまざまな事情でイギリスふうなアンセムやオードを書くことになり、その作曲の過程で、パーセルその他の過去の作曲家の作品を参照したであろうことは想像にかたくないところです。かたくない、どころかそういう研究は、素人のわたしが知らないだけで、たぶんもうたくさん出ているんぢゃないかしらん。

これはわかりやすい例だと思いますが、パーセル《King Arthur》とヘンデル《Ode for St. Cecilia's Day》ね。これはぜったい関係がありますよ。どちらもドライデンの詩に曲がつけられてるんですが、トランペットが高らかになって、テナーのソロがいさましく歌い出して、それに合唱がなだれ込む、ってのがどちらにもある。

《King Arthur》では
"Come if you dare," our trumpets sound.
"Come if you dare," the foes rebound.
We come, we come, we come, we come,"
Says the double, double, double beat of
the thund'ring drum.


《Ode for St. Cecilia's Day》では
The trumpet’s loud clangour
Excites us to arms,
With shrill notes of anger
And mortal alarms!
The double, double, double beat
Of the thund’ring drum
Cries, hark! the foes come;
Charge, charge! ’tis too late to retreat!


どちらもナショナリズムをあおり立てるような武張った歌詞だしね。で、共通する〈the double, double, double beat...〉って歌詞のところ、ここの音型が似ているんですよ。《King Arthur》では「ソー(up)ドソドソドソミー」、《Ode for St. Cecilia's Day》では「ソー(up)ドシドシドシドー」。面白いなあ。ヘンデルはパーセルを意識していたに違いない。わたしは《King Arthur》のこの部分、はじめて聴いたときすぐ好きになって、学生のころよく歌ってました。

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