歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

梨園の敬語?

2011年01月12日 | 気になることば
梨園のかたたちの敬語がちょっとおかしいのではないか。いや、舞台の上で話すせりふのことではなくて、日常話したり書いたりする日本語のこと。それがこの業界ではふつうのことば遣いなのかもしれないけど、一般人のわたしから見るときわめて異様だ。

松竹の歌舞伎情報サイト「歌舞伎美人」には、歌舞伎役者ヘのインタビュー記事がよく載っています。いやほんとはインタビューなんかはしてなくて、だれか担当者が松竹の人から資料をもらって勝手に構成してるのかもしれないけどさあ。でもいちおう、役者が語ったことばをそのまま載せてます、って作りようである。で、先日、片岡愛之助さんへの「インタビュー記事」がアップされていた。「インタビュー・文/千葉望」「構成/栄木恵子(編集部)」とある。千葉望さんや栄木恵子さんて人がどういう人かは知らない。しかし少なくともこの記事の編集者、敬語の使い方がまるで分かってない。こんなのではだめである。

千葉さんないし栄木さん(文責はやはり「構成」の栄木さんにあるのだろうか)によると、愛之助さんは次のように言ったという。〈叔父の仁左衛門に稽古をつけていただいたのですが、叔父は「大川端」のあとの部分はお嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三という3人のアウトローの若者が生きて行く姿なのだから、「今」の僕の感覚で演じたほうがいいとおっしゃって、「大川端」だけ稽古してくださいました。〉以下、ずーっとこの調子である。

愛之助さんはほんとにこう言ったのだろうか。だとしたら梨園というのは実に世間離れしたことば遣いをするところだ。──いや、でもほんとに、こう言ったのかもしれないよ。ああいう藝の世界は、あるていどわれわれ庶民と感覚のズレたところがないと才能を開花させられないところがあるのかも。海老蔵見てても、そうぢゃん?

問題は、やっぱり編集者の敬語感覚の破綻にあると思いますね。梨園の人たちのことば遣いがヘンならヘンで、それに巧く筆を加えて、わたしのような一般人が読んでも違和感のない程度に調整しなければならない。あーあ。これで愛之助の印象、だいぶ悪くなったよ。愛之助さんてひとは上方歌舞伎のエースで、以前から心ひそかに応援してたんだけどなあ。