歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

「何がアハヽヽだ。」

2005年07月21日 | 気になることば
『坊っちゃん』の「二」。坊っちゃんと山嵐の初対面の場面。

「人が叮嚀に辭令を見せたら見向きもせず、やあ君が新任の人か、些と遊びに來給へアハヽヽと言つた。何がアハヽヽだ。そんな禮儀を心得ぬ奴の所へ誰が遊びに行くものか。」(新書判『漱石全集第三巻』)

「人が叮嚀に辞令を見せたら見向きもせず、やあ君が新任の人か、些と遊びに来給えアハヽヽと言った。何がアハヽヽだ。そんな礼儀を心得ぬ奴の所へ誰が遊びに行くものか。」(ちくま文庫『夏目漱石全集2』)

「人が叮嚀に辞令を見せたら見向きもせず、やあ君が新任の人か、ちと遊びに来たまえアハヽヽと言った。何がアハヽヽだ。そんな礼儀を心得ぬ奴のところへだれが遊びに行くものか。」(文春文庫『こころ 坊っちゃん』)

新書判全集の引用は字体もできるかぎり原文に従った。新書判全集とちくま文庫との違いは、ここでは、その漢字の字体と仮名づかいのみで、漢字をかなに開いている箇所はない。「些と」の「些」にふりがな。次に文春文庫を見る。ちくま文庫では漢字を使っている「些と」「来給え」「所へ」「誰が」が、文春文庫では「ちと」「来たまえ」「ところへ」「だれが」と、かなに開いてある。