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アートネタなど日々のあれこれ

Continuum 想像の語彙

2023-09-24 14:39:29 | 美術
東京オペラシティアートギャラリーで「野又穫 Continuum 想像の語彙」を見てきました。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。2004年にオペラシティアートギャラリーでの展覧会を見た時からずっと気になる作家さんでした。あの世界の果てを見たような独特の世界観…あれから20年近く経つのですね。今回は個展ですが、展示方法も独特な感じでした。章構成にもなっておらず、時系列も入り乱れ、解説のキャプションもなく…自由にイマジネーションを遊ばせて、ということなのかもしれませんが、作品の世界観そのままに、迷宮のなかをさまようような心地で鑑賞しました。船、風車、気球、そして不思議な建造物の数々。実在するようなしないような光景を描いた作品の数々を見ていると、何とも言いようのない感情が湧き上がってきます…。ユートピアのようなディストピアのような世界は唯一無二。この世のものとは思えないような美しい空に向かって、ノスタルジーとファンタジーが同時に解き放たれていくのです…。

この日は同時開催の「寺田コレクション ハイライト(後期)」も見てきました。東京オペラシティビルの共同事業者でもあった寺田小太郎氏のコレクションです。寺田氏の収集活動は難波田龍起氏との出会いをきっかけに、「東洋的抽象」「ブラック&ホワイト」「幻想絵画」など、独自のテーマによって進められました。展示は難波田父子をメインに、日本の近現代作家の作品ですが、コレクターの独特の世界観がひしひしと伝わってくるような展示でした。静謐、幻想、異界…。寺田氏は野又作品のコレクターでもあり、1980年代から毎年、収集を続けていたそうです。やはり通じるものがあったのでしょうね…。

そして、「projectN 小林紗織」も見てきました。渋谷公園通りギャラリーで開催された「語りの複数性」で作品を見て以来、気になっていた作家さんです。彼女は音楽を聴いたときに浮かぶ色彩や形、情景を五線譜の上に描く「スコア・ドローイング」の作品を制作しています。五線譜の上に楽しげに踊るカラフルなモチーフの数々。見ているだけで心楽しくなってくるような作品は絵楽譜のようでもありますが、小林さんにとっては「ただの音の視覚化ではなく、自分の内側の世界の記録」なのだそうです。自分のなかにある美しい世界が、誰にも知られないまま失われていくことを惜しむ気持ち…絵画も音楽も、あらゆるアートはそうして生まれてきたのかもしれませんね…。


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