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大海原のソングライン

2020-08-09 22:01:40 | 映画
シアター・イメージフォーラムで「大海原のソングライン」を見ました。

台湾に始まり東はイースター島から西はマダガスカルまで、3年かけて太平洋の16の島国をめぐり、伝統的な音楽とパフォーマンスを記録したという壮大なドキュメンタリーです。ところでソングラインとは何ぞやというと、元はと言えばオーストラリアの内陸に存在する、目には見えなくても声や歌によってつながれた無数の道のことだそうです。この映画ではさらに、太平洋にかつて歌い継がれた道を見つけにいこうとしているのだとか・・・。

映画は台湾の女性の力強い歌声から始まります。南太平洋を取り巻く16の島国、35の原住民族、100名以上のミュージシャン・・「海の民」である彼らの歌、演奏、踊りが豊かな自然の映像とともに次から次へと繰り広げられます。移動が制限されている現状で、この広大な世界を目にすると、思わず眩暈がしてしまいそうです。不思議な楽器もたくさん、どのパフォーマンスも素晴らしかったですが、最も印象深かったのが、片手を失ったミュージシャンの姿。彼は残された機能を使って伝統楽器をみごとに演奏しています。楽器の奏者としては致命的ともいえる状態になっても、意志があれば音楽はできるのですね・・・。

この映画の原題は“Small Island Big Song”ですが、これはかつて同じ言葉や音楽で繋がっていた島々の歌をもう一度集結させるプロジェクトでもあるそうです。映画では別々の島の人々が伝統的な音楽を演奏するのを別々に収録し、ミックスして一つの音楽にするという試みがなされています。ヒップホップのビートにさまざまな伝統音楽やラップを重ねていっていますが、不思議なくらいに違和感がないというかスムーズです。それもそのはずというか、彼ら南島語族(オーストロネシア)は台湾のモンゴロイドを共通の祖先として、枝分かれしていった集団なのだそうです。ヒップホップといっても攻撃的というよりは、開放的な音楽になるのは、海の民ゆえでしょうか・・・。

そんなわけでひさびさに、映像でではあるけれど、大好きな海と音楽を堪能してまいりました。本当に癒されましたよ・・・海も音楽も広くて深い。そして、文字が生まれるから歌があったと思うとやはり感慨深いです。これだけ壮大なものを見せられると、国家という枠組さえ小さく見えてくる気がするから不思議です。一方で、気候温暖化による海面上昇により太平洋の島々が消えつつあるという現実もあります。この豊かな世界が消え去ることがありませんように・・・。

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