サントリーホールサマーフェスティバル2024「アーヴィン・アルディッティがひらく オーケストラ・プログラム」に行ってきました。
とは言っても、行ってからだいぶ日が経ってしまいましたが、自分の心覚えのために…。今回、プロデューサー・シリーズに登場したのはアーヴィン・アルディッテイ氏。氏の率いるカルテットは今年で創立50周年ということです。この日はクセナキスのオーケストラ曲を2曲も演奏するらしい…しかもアルディッテイ氏のソロもあるらしい…ということで、いそいそと行ってまいりました。
1曲目は細川俊之「フルス(河)」。いかにも細川氏らしい幽玄な響きの曲。弦楽四重奏が人、オーケストラが自然、宇宙と捉えられています。原型はアルディッティ・カルテットのために書かれた小曲で、この曲はカルテットの40周年のお祝いとして書かれたものだそうです。2曲目はクセナキス「トゥオラケムス」。祝祭的な響きをもつ小品。金管楽器のファンファーレから始まるこの曲は武満徹氏の60歳を祝うコンサートのために書かれました。ちなみにタイトルの「Tuorakemusu」とは「武満徹」のアナグラムなのだとか。アルディッティ氏と武満氏の間には絶大なる信頼関係があり、「私にとって武満は、日本の現代音楽界の王」とも語っています。3曲目はクセナキス「ドクス・オーク」。この曲が圧巻でしたね…巨大な音塊が迫ってくるようでした。この曲ではアルディッティ氏のソロも…ソリッドな演奏。この曲はアルディッティ氏に献呈、初演されています。アルディッテイ氏は「クセナキスは、私の若い時期から長い間に渡って一番影響を受けた作曲家」と語っています。最後はフィリップ・マヌリ「メランコリア・フィグレーン」。マヌリ氏は今回のテーマ作曲家です。魔境を探検しているような曲でした。この曲もアルディッティ・カルテットのために書かれていますが、曲の土台となっている弦楽四重奏曲はアルブレヒト・デューラーの銅版画「メランコリア」に着想を得ています。画に描かれている四次魔法陣から派生した数の組み合わせを用いて作品の基本構造を決定したということですが、多彩な音像が次々と現れては消え、現れては消えする摩訶不思議な曲でした…。
アルディッティ氏と音楽家たちとの絆、日本との縁…そういったものが浮かびあがってくるプログラムでした。また、アルディッティ・カルテットが現代音楽の世界で重要な役割を果たしていたことをあらためて認識させられる機会ともなりました。いろいろな意味で創立50周年のお祝いにふさわしいコンサートでしたね…。