昨日の新聞を見て,驚いてしまいました。
社会面を開き,屋根に赤いハートが描かれた写真を見た時,以前読んだ記事がすぐに思い浮かんだのです。もしかするとこれは,震災で亡くなった娘さんが,両親を驚かそうとリフォームした家の屋根に描いたハートなのではと……。
写真と一緒に掲載された記事には,【思い出 記事がつなぐ】【あったよ 幸せの証し】という見出しがつき,私が想像した通りの内容が書かれていました。
娘さんは,岩手県山田町出身で,結婚して熊本市に住んでいた西美保子さん(53歳)です。山田町の実家をリフォームするために,両親を熊本に呼び寄せ,単身で山田町に出かけていた折に震災にあい,津波に巻き込まれて行方不明になってしまいました。
西さんは,両親を驚かせようと,屋根にハートの絵を描いたのでした。
ハートが描かれた屋根の行方を家族が捜しているのを知って,その屋根の写真を撮っていたタクシーの運転手さんが写真を家族のもとに送ってくれたのでした。
その写真が,新聞に掲載されていたのです。美保子さんは,そのタクシーをよく利用し,運転手さんも美保子さんのことを覚えていたのだそうです。
屋根いっぱいのあざやかな紅のハートでした。
美保子さんは,このハートにどんな思いを込めていたのでしょうか。
きっと,ご両親への感謝の思いと共に,ご両親がこれからも睦まじく幸せに過ごしていってほしいと願っていたのではないでしょうか。そして,屋根を見て驚く両親の顔を楽しく想像しながら,リフォームに取り組んでいたのではないかと思います。
写真ではありますが,形あるもの・見えるものとして,ハートの屋根が残っていることがうれしく感じました。
この写真を通して,ご両親もご主人も美保子さんの思いを汲み取ることができたことと思います。
それにしても,屋根のハートはあざやかである分,悲しみを湛えているようにも見えます。美保子さんも,笑顔でご両親にこのハートの屋根を見せたかったことと思います。
叶えられなかった思いが,紅色の中にとどまっているようにさえ感じます。
美保子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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