あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

詩の向こうに

2020-04-06 12:50:52 | 日記
言葉で描かれた 詩の向こうに 見えてくる世界があります。
その世界を覗き込むことによって 新たに自分にかえってくるものがあります。
詩を通して見えた世界と こだまのように自分にかえってくるものを 言葉にしていけたらと思います。

 詩集『こころ』 朝日新聞出版 より

    一心
              谷川俊太郎

 生きのびるために 
 生きているのではない
 死を避けるために
 生きているのではない

 そよ風の快さに和む心と
 竜巻の禍々しさに怯える心は
 別々の心ではない
 同じひとつの私の心

 死すべきからだのうちに
 生き生きと生きる心がひそむ
 悲喜こもごもの
 生々流転の

人はなぜ、なんのために生きるのか という問いかけがあり、
その答えとして 一連の中で
生きのびるためでも 死を避けるためでもない と語りかけているような気がします。

では、なんのために生きているのか と 再度の問いかけがあり、
二連では その答えとして 心の内に矛盾してあるものを 取り上げ、
そよ風の快さに和む心 と 竜巻の禍々しさに怯える心 と答えています。
そして それらは 心を和ませ穏やかにするもの と 心をかき乱し怯えさせるものであり、
決して別々の心ではなく 同じひとつの私の心にあるものなのだと。
そういった相反するものを 人は心の内に抱えているからこそ 生きているのだと強調して
いるようにも受け取れます。

生きることに対する一連での問いに答えるように 三連が書かれています。
死すべきからだのうちに 生き生きと生きる心がひそんでいるのだと。
誰でも 悲喜こもごもの人生を歩みながら その時々の揺れ動く様々な心を抱え
懸命に生きているのだと 読み取れるような気がします。

この詩は、生きることの意味を問いながら 
死は、生きることでたどり着くことのできる最終地点なのだ ということを伝えたかった
のではないかと感じました。
だからこそ 日々の中で そよ風の快さに 空の青さに 花の美しさに 人のあたたかさに
ふれて感じる 和む心を通して 生き生きと生きていきたい。
竜巻の禍々しさに怯えながらも それに屈することなく 前に向かって生きていきたい。
そんな思いを強く感じました。
 
世界中に広がっている新型コロナウィルスによる感染拡大も、竜巻の禍々しさに重なる印象があります。
一日も早い終息と 日常の生の営みの回復を 心から願うものです。