あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

「新・戦争論」 池上彰・佐藤優 共著 を読んで 

2015-01-09 21:57:33 | 日記
戦争やテロを、この地上から消し去ることはできないのでしょうか。
本を読んで感じたのは、国際的な紛争や対立の背景には、宗教・民族や人種・歴史・国情や地域性が複雑に絡み合い、解決のための道筋が見えない状況があるということでした。
その中でも、宗教の比重が大きく作用しているように感じました。
特にイスラム教においては、スンニ派とシーア派との対立、それぞれの派の中においても穏健派と過激派、原理主義と世俗主義といった対立があり、同一神のもとでの宗教であってもその対立の根が深く複雑であり、理解し合うには余りにも深い溝があるということを感じました。
フランスでのテロも、イスラム教の預言者:ムハンマドを風刺したイラスト記事を批判する過激派が引き起こした 宗教がらみの事件だったとのこと。一つの宗教を盲信することの怖さを痛感します。イスラム国のように原理主義に基づいた国では、同じ考えや信仰を持たない人々は容赦なく抹殺されてしまうという現実があることも、痛ましいことです。オーム真理教の起こした事件とも重なり合うものを感じます。
異なった宗教や考えを許容しようとしない狭小さを、どうやったら寛容に受け入れる考え方に変えることができるのでしょうか。平和な世界を創るために、乗り越えなければならない大きな壁のように感じます。
それに比べれば、日韓や日中の対立の壁は、小さいのかもしれません。過去の侵略の歴史を謙虚に認め、慰安婦のような女性の人権が蹂躙されるような悲劇を繰り返してはいけないと明言し、二度と戦争は起こさないという不戦の誓いを公言することで、未来志向の関係を築くことができるように考えるからです。領土問題は、日本がそういう立場を鮮明にすることで、感情的な対立を乗り越えることができるように思います。その上で国境線を越えて お互いの利にかなった形で漁業権を認め合ったり、資源開発を協同で進めたりすることで、平和的な解決の道筋をつくることが可能なのではないかと思うのです。
東日本大震災の折には、世界中の人々から様々な形で物心両面で温かい支援や協力をいただきました。同じ人間として、災害で亡くなった人々の命の尊さを受け止め、愛する人を失った人々の苦しみや悲しみによりそいながら、差し伸べられた 手の温もり。そこには、宗教や国や人種や民族を超えた 人間としての温かさが満ち溢れているように感じました。それはまた、人間である以上 世界中の誰もが幸せであってほしいと願う普遍的な思いでもあったのではないかと感じました。
人間としての違いに焦点を当てれば、宗教・国・人種・民族・歴史・文化などの違いに目を向けてしまいがちです。でも、人間としての共通のものに目を向ければ、命の尊さにおいても、幸せを求める上においても、世界中の誰もが平等の権利を有していることに気づくことができるように思います。戦争のない世界の実現のためには、人間としての違いを認め・理解すると同時に、人間としての共通の権利を尊重し合うことが 必要条件なのではないかと考えます。
人間としての英知は、お互いの命を尊重し、お互いの幸せを願い、戦争やテロのない平和な世界を創ることに向けられるものであると強く感じます。