あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

白銀の世界と フランクル

2013-12-14 11:35:38 | インポート

昨日、今日と雪が降り、朝に白銀の世界をながめることができました。日中には、雪も溶けてしまうでしょうが、すがすがしい気持ちで一日を迎えることができます。

白は、すべての色の始まり。ゼロからの出発を意味するように感じられるからでしょうか。一夜にして世界が白一色に染まることで、これまでの汚れを無にしてくれるからでしょうか。これからの新たなステージを、どんな色でどうつくり変えていくのか。清新な思いで主体的に生きることを求められているような そんな気持ちになるからでしょうか。

死と隣り合わせの収容所生活をおくったフランクルが、著書『夜と霧』〈池田香代子訳 みすず書房〉の中で 美しい自然との出会いを次のように語る一節があります。

……到底信じられないような光景だろうが、わたしたちは、アウシュヴィッツからバイエルンにある収容所に向かう護送車の鉄格子の隙間から、頂がまさに夕焼けの茜色に照り映えているザルツブルグの山並みを見上げて、顔を輝かせ、うっとりしていた。わたしたちは、現実には生に終止符を打たれた人間だったのに……あるいはだからこそ……何年もの間目にできなかった美しい自然に魅了されたのだ。……

また、労働で死ぬほど疲れ果て、わずかのスープの椀を手にむき出しの土の床にへたり込んでいる時に、突然収容所仲間が飛び込んできて、とにかく外へ出てこいと急きたてる場面があります。太陽が沈んでいくさまを見逃させまいという、ただそれだけのために。

……そしてわたしたちは、暗く燃え上がる雲におおわれた西の空をながめ、地平線いっぱいに、鉄〈くろがね〉色から血のように輝く赤まで、この世のものとは思えない色合いでたえずさまざまに幻想的な形を変えていく雲をながめた。その下には、それとは対照的に、収容所の殺伐とした灰色の棟の群れとぬかるんだ点呼場が広がり、水たまりは燃えるような天空を映していた。わたしたちは数分間、言葉もなく心を奪われていたが、だれかが言った。

「世界はどうしてこんなに美しいんだ!」

絶望の淵にあっても、自然の美しさに魅了され、その美しさに心を奪われる人間としての姿に、心を打たれます。フランクルは、被収容者の内面が深まることで、芸術や自然に接することが、(現実の)世界やしんそこ恐怖すべき状況を忘れさせてもあまりあるほど圧倒的だったと語っています。人間であることを否定され、付けられた番号で区分され、ある者はガス室へ送られ、ある者は過酷な労働の中で生死の境をさまよう、生きる希望を見出すことができず生き長らえることのみの 収容所生活の中にあっても、自然と向き合いその美しさに心を震わせる人間でありえたという事実に、深い感動を覚えます。同時に、何の不自由もなく自由に自然と接することのできる自分が、こんなふうに自然と向き合う機会があったのだろうかと自問してしまいます。

改めて その日の朝の雪景色に、一輪の花に、夕方の空に、飛ぶ鳥の姿に向き合いながら、自然と対話するひとときを大切に味わっていけたらと思います。