Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 115

2020年09月14日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

好忠集(10世紀後半)曾禰好忠作から

121 なつかしく手には折らねと山がつの垣根のむばら花咲きにけり

379 むばらこぎ※手に取りためて春の野の藤の若枝を折りてつかねん

 ※むばらこぎ 茨の小さい木。

梁塵秘抄(1179頃)に “ うばらこぎの下にこそ、鼬(いたち)が笛吹き猿舞 (かな)で ” とありますので “むばらこぎ ”とは小さい茨のことでしょう。

  

源氏物語(1008)から

第十帖賢木

6.3.6 二日ばかりありて、 中将負けわざしたまへり。ことことしうはあらで、なまめきたる桧破籠ども、賭物などさまざまにて、今日も例の人びと、多く召して、文など作らせたまふ。

6.3.7  階のもとの薔薇、けしきばかり咲きて、春秋の花盛りよりもしめやかにをかしきほどなるに 、うちとけ遊びたまふ。

( 二日ほどして、中将が負け饗応をなさった。大げさではなく、優美な桧破子類、賭物などがいろいろとあって、今日もいつもの人々、おおぜい招いて、漢詩文などをお作らせになる。階のもとの薔薇、わずかばかり咲いて、春秋の花盛りよりもしっとりと美しいころなので、くつろいで合奏をなさる。)

 

先に引用していた白氏文集卷十七 薔薇正開、春酒初熟。因招劉十九・張大・崔二十四同飮( “薔薇(そうび)正に開き、春酒初めて熟す。因りて劉十九・張大・崔二十四を招きて同(ともに)に飲む“)の歌の中の一節、『 階(はし)の底(もと)の薔薇(そうび)は夏に入りて開(ひら)く 』が踏まえられています。

三位中将邸での負態の場面で、季節は「夏の雨、のどかに降りて、つれづれなるころ」に設定されています。ここで、考察すると、” 春、秋の盛りよりも ”とあるので、このバラは一季咲きの「ノイバラ」ではなく、当時貴族の庭先に植えられていた中国の四季咲き薔薇(庚申バラ、月季花)でしょう。

       

花は夏に入り、赤い紅、燃えるように咲いている薔薇といえば、

                      http://iwasaki.shop-pro.jp/?pid=109471154

この薔薇( コウシンバラ )でしょう。

第二十一帖 乙女7.4.4

北の東は、涼しげなる泉ありて、夏の蔭によれり。前近き前栽、呉竹、下風涼しかるべく、木高き森のやうなる木ども木深くおもしろく、山里めきて、卯の花の垣根ことさらにしわたして、 昔おぼゆる花橘、撫子、薔薇、 苦丹※などやうの花、草々を植ゑて、春秋の木草、そのなかにうち混ぜたり。 東面は、分けて馬場の御殿作り、埒結ひて、五月の御遊び所にて、水のほとりに菖蒲植ゑ茂らせて、向かひに御厩して、世になき上馬どもをととのへ立てさせたまへり。

( 北東の町は、涼しそうな泉があって、夏の木蔭を主としていた。庭先の前栽には、呉竹があり、下風が涼しく吹くようにし、木高い森のような木は奥深く趣があって、山里めいて、卯花の垣根を特別に造りめぐらして、昔を思い出させる花橘、撫子、薔薇、 苦丹(リンドウ又はボタンの花※)などといった花や、草々を植えて、春秋の木や草を、その中に混ぜていた。東面は、割いて馬場殿を造って、埒を結って、五月の御遊の場所として、水のほとりに菖蒲を植え茂らせて、その向かい側に御厩舎を造って、またとない素晴らしい馬を何頭も繋がせていらっしゃった。)

 

※苦丹

古今和歌集(905‐914)物名435に「くたに。散りぬればのちはあくたになる花を思ひ知らずもまどふ蝶かな〈遍昭〉」とあります。 「くたに」を詠み込んだ物名歌。又、『童蒙抄』に「苦丹とかく、深山にある草の名也」とありますが、何にあたるかは不明とされています。しかし、花散里の御殿は夏の趣の造りに成っていますから、薔薇はコウシンバラであり、苦丹はボタンではと、それに嵩が大きくゴミになるのはボタンの方かな?と想像します。

                                           

枕草子(1001)148段 

名おそろしきもの。青淵。谷の洞。鰭板 ( はたいた )。鉄 ( くろがね )。土塊 ( つちくれ )。雷 ( いかづち ) は名のみにもあらず、いみじうおそろし。疾風 ( はやち )。不祥雲。矛星 ( ほこぼし )。肘笠雨。荒野 ( あらの ) ら。

強盗 ( がうだう )、またよろづにおそろし。らんそう、おほかたおそろし。かなもち、またよろづにおそろし。生霊 ( いきすだま )。蛇 ( くちなわ)いちご。鬼わらび。鬼ところ。荊(むばら )。枳殻 ( からたち )。炒炭 ( いりずみ )。牛鬼。碇 ( いかり )、名よりも見るはおそろし。

( 名前が怖い感じのもの。青淵( あおぶち )。谷の洞( ほら )。鰭板( はたいた )。鉄( くろがね )。土塊( つちくれ )。雷は、名前だけでもなく、とても恐ろしい。暴風( はやち )。不祥雲( ふしょうぐも )。ほこ星。肱笠雨( ひじかさあめ )。荒野( あらの )ら。

強盗、これはどの部分から見ても恐ろしい。らんそう、ほとんどの人が恐ろしい。かなもち、これもまたどこから見ても恐ろしい。生霊(いきすだま)。蛇いちご(くちはないちご)。鬼蕨(おにわらび)。鬼ところ。荊(むばら)。枳殻(からたち)。いり炭。牛鬼(うしおに)。碇(いかり)、名前よりも、見た形が怖い。)

 

【語釈】乱騒 道長と伊周の争い。 牛鬼 西日本に伝わる妖怪で、主に海岸に現れ、浜辺を歩く人間を襲うとされています。下の絵は1700年画なので、清少納言の時代とは異なると思いますが、参考のため引用しました。

      https://archive.org/details/bakemonozukushie00 hacia 1700 Brigham Young University

 

平中物語(平安時代中期)、うつほ物語(平安時代中期)、落窪物語(900年末)、住吉物語ca,1221) の中に茨の記述は見当たりませんでした。

 

栄花物語(1014)新年の叙述赤染衛門 編から
巻第十一「つぼみ花」

船岡の子の日の松も、いつしかと君に引かれて万代を経んと思ひて、ときはかきはの緑色深く見え、甕のほとりの竹葉も末の世はるかに見え、階の下の薔薇も夏を待ち顔になどして、さまざまめでたきに

「甕頭竹葉経春熟 階底薔薇入夏開」(白居易)を踏まえています。

 

巻第十五「たまのうてな」

この御堂の御前の池の方には、高欄高くして、その下に薔薇、牡丹、唐撫子※1、紅蓮花の花を植ゑさせたまへり。御念仏のをりに参りあひたれば、極楽に参りたらん心地す

【語釈】たまのうてな 立派な御殿。この御堂 阿弥陀堂のこと。

 

※1 唐撫子   

       

カラナデシコ(唐撫子)Dianthus chinensis Linne 別名:セキチク (石竹)

https://yakusoutohana.shop-pro.jp/?pid=136456769 大阪薬科大学 薬用植物園

生薬名:クバク (瞿麦)、クバクシ (瞿麦子)
全草、種子を漢方処方薬、民間薬として利用。むくみのときの利尿に、1日量3~6グラムの瞿麦子に、水0.3リットルを加えて、煎じながら約半量になるまで煮詰めたものをこして、3回に分けて服用します。顕著な利尿作用があり、塩化物の排出量が増加します。「むくみ」のときの利尿に用います。通経薬として、月経不順に利尿剤と同様に服用します。しかし、通経堕胎の作用があるので、妊婦には用いないようにします 

枕草子などにも唐撫子の名が見られることから、平安時代当時、すでに日本に渡来していたと考えられます。江戸時代には栽培が流行し多くの品種が作られました。http://www.e-yakusou.com/yakusou/112.htm から)

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿