川や谷を跨いで泳ぐ鯉のぼりは、テレビによく紹介される。
この町では川縁に立てられたポールの鯉のぼりである。
マオママさん曰く「串刺し鯉のぼり」なのだ。
大川橋の下流から上流に向かって眺めると、遥か東へと鯉のぼりのポールは続く。
通称「曲り渕」といわれている場所で、今では川の状態が変わっているが、私が子供の頃は、森のようになった高い崖の下が深い淵になっていた。
その高い崖の上から椿の葉っぱを口に咥えて足から川に飛び降りるのが面白かった。
鼻に水が入るのを防ぐために、友達が教えてくれたものだった。
ずいぶんお転婆だったが、その頃の川は子供にとっては何よりの夏の遊び場だったから、親たちも何の心配もせずそんな遊びを許していた。
鯉のぼりの泳ぐ空の下で、そんな頃をふと思うのは、少女期への郷愁を鯉のぼりが呼び込んでくれるのかもしれない。