その日彼女はいつになくご機嫌でした。
僕らはいやに明るい今風の居酒屋で食事をしていました。
そこの居酒屋のメニューは焼酎をカクテル風にアレンジして呑ませる店でした。
いわゆる「つまみ」と称するものもサラダだとか、オリジナルな料理が並んでいました。
僕は当時からオヤジ風で、その手の店だと落ち着かなくてあまり行かなかったものですから、生野菜スティックなんぞ食べたことがなかったのです。
僕は食べ物に関する好き嫌いはなかったつもりでしたが、新奇の食べ物には腰が引けるタイプでした。
彼女はメニューの中にアスパラを見つけました。
「おいしいよね」
という彼女に僕は「あんなの気持ち悪いよ」と言いました。
そういうと彼女は俄然張り切りだして
「えー、おいしいし、栄養あるのよ、ホントに食べたことあるの?」
と僕を攻めにかかったのです。
「缶詰に入っていて白くてフニャフニャした奴でしょ。歯ごたえ想像しただけでも食べる気がしないよ。」
というと
「グリーンアスパラなら良いんでしょ?」と言います。
僕はグリーンアスパラの存在を知りませんでした。
僕がそのことを言うと、信じられないといった目をして
「ホントに?」とまじまじと見つめます。
そしてさも可笑しそうに笑い出したのです。
「じゃあ、私が教えてあげる。ホントにおいしいんだから。」
と急にお姉さん口調になって言いました。
僕たちはグリーンアスパラとホワイトアスパラをオーダーしました。
おしゃれなガラス容器に入ったグリーンアスパラを僕は恐る恐る目をつぶって食べました。
その間、彼女がずっと僕を見ているのを意識していました。
「どお?」
彼女が聞きます。
僕は口に拡がるアスパラの青臭さとマヨネーズの味を喉の奥にしまい込むようにして
「うん!悪くない。」と言いました。
「でしょ!おいしいでしょ!」と嬉しそうにしています。
本音を言えば、おいしいと言ったところの気分ではなかったのですが、必死に養生を悟られないようにして、モグモグといつもよりも長く噛んでいました。
「じゃあ、ホワイトアスパラも食べてみる?」
というと僕は「もう今日は勘弁して下さい。」と降参しました。
彼女は勝ち誇ったように、
「私がaniki(仮名)さんの好き嫌いを直してあげる。」と宣言してしまったのです。
僕は「尻尾巻いて逃げっちまおうかな」と逃げる振りをすると
「ダメ!逃がさない!」と僕の腕を掴んで放しません。
僕は「僕もYさんの好き嫌いを直してあげる」と反撃しました。
実際彼女の方が僕よりずっと好き嫌いが多いのです。
でもそのことよりも彼女が僕の腕を掴んで放さない状況の方に僕は舞い上がっていました。
その日の別れ際、僕はいつもと少しだけ違う行動に出ました。
それは僕が彼女に握手を求めたことです。
「今日はどうもありがとう。僕の食べず嫌いを減らしてくれて。」
というと、お酒のせいかほんのりと頬を上気させた彼女が「この次はホワイトアスパラよ。」といって手を握ってくれました。
女の人の手を握るのはその時が初めてではありません。
でも彼女の手は小さく繊細で僕に新鮮な感動を与えてくれました。
「華奢(きゃしゃ)」という言葉があります。
これは人全体で受ける印象を表す言葉だと思うのですが、僕は握った彼女の手からそれを鮮烈に感じ取っていました。
このこと以後、この言葉が僕の女性評価の一つの基準になってしまったくらいに印象深い出来事でした。
好きな人との握手ってどのくらいの時間が許されるのでしょうか。
僕は可能な限りいつまでも握っていたいと思いました。
しかし、政治家が選挙や政治家同士の会談で行われる握手に嫌悪感を抱いていましたから、離すタイミングを測りかねていました。
「こんどはホワイトアスパラだからね」という彼女に対し、僕は「僕もYさんの弱点を探り出してやる!」と言いながら少し強く握り返しました。
「そうそう簡単にみつかるもんですか!」
「いや、すでに目星はついている。」
「え~!なにい?、やめてよ変なもの食べさせるの。」
「ははは、大丈夫。そんなことしないから、じゃあ今日はありがとう」と僕の方から手を離しました。
その間何秒ぐらいあったのでしょうか。
僕には随分長く幸せな時間だったのです。永遠に時が止まればいいと思いました。
今の人達から見れば随分低いレベルでバカに大げさなセリフを吐くなと思う人もいるでしょうがその時の僕の本音に間違いはないのです。
えらく長い文章になりました。
おまえののろけなど聞きたくないと言われる方もいるかも知れないですけど
そういう方は読まないほうがいいです。
て、最後に書いても意味ないか…。
僕らはいやに明るい今風の居酒屋で食事をしていました。
そこの居酒屋のメニューは焼酎をカクテル風にアレンジして呑ませる店でした。
いわゆる「つまみ」と称するものもサラダだとか、オリジナルな料理が並んでいました。
僕は当時からオヤジ風で、その手の店だと落ち着かなくてあまり行かなかったものですから、生野菜スティックなんぞ食べたことがなかったのです。
僕は食べ物に関する好き嫌いはなかったつもりでしたが、新奇の食べ物には腰が引けるタイプでした。
彼女はメニューの中にアスパラを見つけました。
「おいしいよね」
という彼女に僕は「あんなの気持ち悪いよ」と言いました。
そういうと彼女は俄然張り切りだして
「えー、おいしいし、栄養あるのよ、ホントに食べたことあるの?」
と僕を攻めにかかったのです。
「缶詰に入っていて白くてフニャフニャした奴でしょ。歯ごたえ想像しただけでも食べる気がしないよ。」
というと
「グリーンアスパラなら良いんでしょ?」と言います。
僕はグリーンアスパラの存在を知りませんでした。
僕がそのことを言うと、信じられないといった目をして
「ホントに?」とまじまじと見つめます。
そしてさも可笑しそうに笑い出したのです。
「じゃあ、私が教えてあげる。ホントにおいしいんだから。」
と急にお姉さん口調になって言いました。
僕たちはグリーンアスパラとホワイトアスパラをオーダーしました。
おしゃれなガラス容器に入ったグリーンアスパラを僕は恐る恐る目をつぶって食べました。
その間、彼女がずっと僕を見ているのを意識していました。
「どお?」
彼女が聞きます。
僕は口に拡がるアスパラの青臭さとマヨネーズの味を喉の奥にしまい込むようにして
「うん!悪くない。」と言いました。
「でしょ!おいしいでしょ!」と嬉しそうにしています。
本音を言えば、おいしいと言ったところの気分ではなかったのですが、必死に養生を悟られないようにして、モグモグといつもよりも長く噛んでいました。
「じゃあ、ホワイトアスパラも食べてみる?」
というと僕は「もう今日は勘弁して下さい。」と降参しました。
彼女は勝ち誇ったように、
「私がaniki(仮名)さんの好き嫌いを直してあげる。」と宣言してしまったのです。
僕は「尻尾巻いて逃げっちまおうかな」と逃げる振りをすると
「ダメ!逃がさない!」と僕の腕を掴んで放しません。
僕は「僕もYさんの好き嫌いを直してあげる」と反撃しました。
実際彼女の方が僕よりずっと好き嫌いが多いのです。
でもそのことよりも彼女が僕の腕を掴んで放さない状況の方に僕は舞い上がっていました。
その日の別れ際、僕はいつもと少しだけ違う行動に出ました。
それは僕が彼女に握手を求めたことです。
「今日はどうもありがとう。僕の食べず嫌いを減らしてくれて。」
というと、お酒のせいかほんのりと頬を上気させた彼女が「この次はホワイトアスパラよ。」といって手を握ってくれました。
女の人の手を握るのはその時が初めてではありません。
でも彼女の手は小さく繊細で僕に新鮮な感動を与えてくれました。
「華奢(きゃしゃ)」という言葉があります。
これは人全体で受ける印象を表す言葉だと思うのですが、僕は握った彼女の手からそれを鮮烈に感じ取っていました。
このこと以後、この言葉が僕の女性評価の一つの基準になってしまったくらいに印象深い出来事でした。
好きな人との握手ってどのくらいの時間が許されるのでしょうか。
僕は可能な限りいつまでも握っていたいと思いました。
しかし、政治家が選挙や政治家同士の会談で行われる握手に嫌悪感を抱いていましたから、離すタイミングを測りかねていました。
「こんどはホワイトアスパラだからね」という彼女に対し、僕は「僕もYさんの弱点を探り出してやる!」と言いながら少し強く握り返しました。
「そうそう簡単にみつかるもんですか!」
「いや、すでに目星はついている。」
「え~!なにい?、やめてよ変なもの食べさせるの。」
「ははは、大丈夫。そんなことしないから、じゃあ今日はありがとう」と僕の方から手を離しました。
その間何秒ぐらいあったのでしょうか。
僕には随分長く幸せな時間だったのです。永遠に時が止まればいいと思いました。
今の人達から見れば随分低いレベルでバカに大げさなセリフを吐くなと思う人もいるでしょうがその時の僕の本音に間違いはないのです。
えらく長い文章になりました。
おまえののろけなど聞きたくないと言われる方もいるかも知れないですけど
そういう方は読まないほうがいいです。
て、最後に書いても意味ないか…。
手をつなぐって、握手とかもいいですよね。
手からは気が出ているそうで、そのせいかほっとしたりして。最近は子供とも手を繋がなくなったなー。でもたまーに肩とか揉んでもらうと、気が入ったような気がして調子良くなります。ではまた続きを待っていまーす!
なんか少しずつ幸せを積み重ねていく感じがして見るのが楽しみです。