雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

本と映像の森59 萩尾望都さん『3月ウサギが集団で』小学館

2010年07月08日 05時46分50秒 | 本と映像の森
本と映像の森59 萩尾望都さん『3月ウサギが集団で』小学館、

 これも白土三平さんの『真田剣流』と同じで、蔵書を整理して「ごみ」と「蔵書」に分類して「蔵書」の側に残った本です。

 1977年2月20日初版の「作品集5」です。
 よく思うのは、たとえば夏目漱石さんとか、宮沢賢治さんとか、「全集」が出るのはあたりまえで、今の家に引っ越すときに「場所ふさぎはやめてね」とN子さんに優しく言われて、泣く泣く売り払った「宮沢賢治全集」などは、初稿から最終稿まで、原稿を修正していく段階も全部掲載されるようになっています。
 
 それに対して、戦後の日本文化を代表するマンガはどうでしょうか?
 評論家の夏目房之介さんの『手塚治虫はどこにいる?』ちくま文庫、によれば、手塚さんは、「鉄腕アトム」にしろ「ジャングル大帝」にしろ、その画風・筆質を何度も変えて、書き直しをしています。
 ぼくは、そういう書き直しも含めて「手塚治虫全集」が出るべきだと思います。

 同じように、もしぼくの生きているうちに「萩尾望都全集」が出れば、全部買いますね、いや訂正、N子さんの許可が有れば、買いたいでーす。

 この「3月うさぎ」の中で、好きなのは、高校受験期の少女「小川むつき」と恋を描いた「毛糸玉にじゃれないで」でしょうか。
 彼女が捨て猫を拾ってきて飼うところは、同感します。
 長女が中学時代から飼った猫・モモや、次女が中学時代から飼ったウサギ・ミント、みんな、大事な家族でした。
 
 むつきは、テストの時に、偶然、むつきの危機を助けてくれた星くん。
 捨て猫のバタを母親が捨てたのに拾ってくれた同級生の星くんに出会ってしまいます。

 むつきと星くんの会話の背景に描かれた英語やロシア語の題名が、いいですね。
 「地球の緑の丘」
 「ヘビ座の心臓」
 ぼくも、すきなSF作品です。

 それと、萩尾さんの素敵な感覚は、やはり「3月ウサギが集団で」のような、筒井隆康さん的なはちゃめちゃSFでしょうか。
 
 あ、なんか。路線がずれてきた。
 次回から、できるだけ正当SFに戻りましょう。

 たとえば、萩尾さんの「11人いる!」とか。
 萩尾さんの「ポーの一族」とか。
 萩尾さんの「スターレッド」とか。

 萩尾さんの「トーマの心臓」や「残酷な神が支配する」も好きなんですけど。
 どこかで機会があれば、詳述します。



 

本と映像の森58 白土三平さん『真田剣流 壱・弐』小学館文庫

2010年07月08日 05時18分36秒 | 本と映像の森
本と映像の森58 白土三平さん『真田剣流 壱・弐』小学館文庫

 白土三平さんの忍者マンガなどの中でも、この「真田剣流」、続編の「風魔」は好きな作品です。
 読むにも手頃ですし。
 傑作だと思いますが「忍者武芸帳」や「カムイ伝」や「カムイ外伝」となると、長すぎて、全体はいまでに3作品とも通読していません。

 この「真田剣流」は、講談の世界の「真田忍者」たちの世界(猿飛や霧隠)を借りて、さらに壮大な豊臣期のフィクションを構築しています。
 主人公は、やはり徳川の命令で豊臣の重臣たちを「丑三つの術」で暗殺していく謎の男「暗夜軒」でしょうか。
 
 舞台を回していくのは孤児で育ての親を暗夜軒に「丑三つの術」で暗殺された、野生の少女・桔梗(ききょう)です。
 彼女の視点で、物語は、久度山の真田屋敷や、謎の「風魔」忍群と展開していきます。
 
 白土さんのサービス精神でしょうか、なんと「宮本村の武蔵(たけぞう)」まで登場します。

 「丑三つの術」の謎を書いた巻物から謎の文章を紹介します。

 二つに引き裂かれた巻物の前半部は、こうです。 
 「身は 野にも
  あらず 白くも
  なし
  だが この一族に
  して土中にあり
  血引きいわにて
  まつ」

 後半部は、こうです。
 「寄生木 風に
  のりて巨木に
  うつらん。
  われらもまた
  吐息にのりて
  行かん…」

 このマンガの連載中に、読者に謎解きを募集したら、1人だけ正解者がいたそうです。
 そうですね、この小学館文庫2巻本の、第2巻34ページまでを読んで、正解を当てたあなたは、えらいです!
 ヒントを書いておくと、「聖徳太子」です。正確に言えば「聖徳太子」ではないのだけど、通常は「聖徳太子」と思い込まれているので。