浜岡原発永久停止裁判16回口頭弁論の記録
2015年11月2日(月)雨
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 傍聴抽選のために、雨天により裁判所内の部屋に集合した。
10:40 原告30席分を含め、傍聴席は満席となる。参加者 約70人。
10:57 裁判が開始。
裁判長は古谷健二郎、右陪審は本松智、左陪審は稲岡菜桜、
訴訟代理弁護団計20名の弁護団のうち、今日の参加者は12名
田代博之、大橋昭夫、塩沢忠和、杉山繁二郎、阿部浩基、北村栄、杉尾健太郎、
平野晶規、山形祐生、北上紘生、栗田芙友香、青柳恵仁
被告側は国と中電で21名。
10:57 裁判長;原告側が10月27日に準備書面(13)(14)を提出した。内容の補充レポートがある。書証の提出もある。では、原告で説明を。
10:59 阿部弁護士;
原告代理人阿部です。準備書面(13)について説明します。基準地震動について
第1 地震の科学の限界について。纐纈一起東京大学地震研究所教授は、次のように述べています。
「(原発の場合)、真に重要なもの(施設)は、日本最大か世界最大に備えて頂くしかないと最近は言っています。科学の限界がありますから、これ以外のことは確信をもって言うことができません。」
「アスペリティの位置は研究者によって違いがあり、ほんとうのディテールは現状ではわからない」「ほんとうに中で何がおきているのかには手が届いていない。」と述べています。
第2 基準地震動は予想される得る最大の地震ではない。
3.11後の各地の原発訴訟の決定等について、基準地震動は地震の平均像でもって作られていることがいくつか言及されています。大津地裁平成26年11月27日決定でも、保全の必要性がないとして仮処分申立を却下したものでありますが、新規制基準の合理性について債権者の主張を取り入れています。
また、高浜原発3、4号機運転差止仮処分決定をした福井地裁平成27年4月14日決定では、基準地震動の信頼性について、細かいことをいうより、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が到来しているという事実を重視すべきは当然であると言及しています。電力会社は特殊な事情があったからだと言いますが、しかし、いずれの原発においても、その時点において得ることができる限りの情報に基づき当時の最新の知見に基づく基準に従って地震動の想定がなされたはずであるにもかかわらず結論を誤ったものといえると、基準地震動の設定の方法について疑問を投げかけています。
準備書面7ページでは、地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。」と答えています。基準地震動が最大のものではなく、それからずれる地震はあると。
川内原発仮処分却下した鹿児島地裁決定でさえ、債権者らの主張するとおり、既往地震の観測記録等を基礎とする平均像を用いて基準地震動を想定するに当たって、その基礎データ上、実際の地震動が平均像からどれだけかい離し、最大がどのような値になっているか考慮した場合には、その考慮によってより安全側に立った基準地震動の想定が可能になるものと解される。原子炉施設は、その安全性が確保されないときは福島第一原発における事故に見られるような深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑みれば、上記のような考え方を採用することは基本的に望ましいと、言っています。
8ページは、第3 基準地震動の策定の流れについて書いています。
活断層の調査を行い、原発の敷地に大きな影響を与える活断層を選定し、その活断層が動くことによって発生する地震を「検討用地震」として、それを選定して、その上で「検討用地震」によって原発がどの程度の強さの揺れるかを想定していく。その時に、「応答スペクトルに基づく手法」と「断層モデルを用いた手法」とがあります。中身はここでは述べませんが、「応答スペクトルに基づく手法」も「断層モデルを用いた手法」も、基本的には地震動の平均像に基づいているということです。
11ページに書いています。上坂充・外著「原子炉構造工学」の中に、次のように取りまとめています。「経験的手法である応答スペクトル法にしても理論的な手法である断層モデルを用いた手法にしても、地震動の平均的な特性に基づいて決定論的に策定している。しかしながら、モデル化するうえでの不確かさなどが存在する。例えば、距離減衰式で言えば、地震と観測点のさまざまな組み合わせから求める、震源特性、震源から各観測点までの伝播経路特性、そして各観測点でのサイト特性が影響し、データはばらつく。減衰式自体は、通常回帰式として求めるが、標準偏差等も評価することが重要となっている。このようなばらつきには、大きく二種類あり、一つは自然現象としての本質的なばらつき(randomnessが該当する)、もう一つは、情報不足によって値を一意的に決められないというモデル化上の不確実性(uncertainty)である。したがって、ある限界的な地震動というものを決定論的に求めたとしても、これを超える地震動が敷地に起きる可能性を否定することができない。」と言っています。
断層モデルを用いた手法は強震動予測レシピと呼ばれる方法によって策定されますが、強震動予測レシピの一つに入倉レシピがあります。ここでは省略しますが、このレシピについて、入倉教授が何を言っているかですが、そのことについて、入倉孝次郎氏自身が2014年3月29日の「愛媛新聞」で取材に応じて次のように述べています。
「基準地震動は計算で出た一番大きい揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「あくまで目安値。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、これは地震の平均像を求めるもの。平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。基準地震動はできるだけ余裕を持って決めた方が安心だが、それは経営判断だ。」こういう見解を持っています。
基準地震動に従って耐震設計を行っても、最大の地震に備えたことにはならない。原子力発電所の事故は福島第一原発の事故が示すように一端発生すると国民生活全般に図り知れない被害を引き起こすものであるから、万が一にも起こしてはならないものであり、耐震設計も当然に最大の地震に耐えうるようなものでなければならない。そうであれば、地震の平均像から求められた基準地震動は耐震設計の元とする地震としては不適当というほかない。
被告中部電力は、3、4号機については最大加速度400ないし1000ガルのところ、1200ガルまで耐えられるようにした、ともしているが(被告中部電力準備書面(3)18~19頁)、そもそも基準地震動の誤差がどの程度あるかについての検討、分析が欠けており、1200ガル以上の地震動は起きないという保障はない。以上です。
11:08山形弁護士;
原告代理人の山形です。準備書面(14)について述べます。
第1 新規制基準の問題点について、被告らからは、何ら反論がないところですが、以下のとおり、原告らの主張を追加します。
まず、立地審査指針が採用されていないこと。これまで、原子炉等規制法の下に、それに従って、一連の原発安全「審査指針」類が整備されてきた。その中で最も重要な指針が、1964年5月に原子力委員会が作成した原子炉立地審査指針であった。
同指針には、原発の立地条件として、①大きな事故の誘因となるような事象が過去になく、将来にもあるとは考えられないこと、また、災害を拡大するような事象も少ないこと、②原子炉は、十分に一般住民の居住地などから離れていること、③原子炉の敷地は、その周辺も含め、必要に応じ、住民などに対して適切な措置を講じうる環境にあることを規定していた。
当初、新規制基準案に対しては、立地審査指針をより厳しくし、住民の安全を守る上で有効なものにすべきというパブコメもあった。
しかし、新規制基準は、逆に、立地審査指針そのものを無視したのである。
立地審査指針は、原発立地は、一応過疎地と考えられる地域に限られてきた。しかし、立地審査指針がなくなれば、制度上は、人口の密集した大都市圏に原発を設置することさえ可能となってしまう。極論すれば、自然災害多発地帯であれ、人口密集地であれ、どこに原発を設置しても良いのである。
炉心溶融が生じて放出される放射性希ガスは、フィルタで除去することはできない。希ガス全量が大気中に放出されると、敷地境界の全身被ばく線量は2000~4万mSvの範囲に達するという試算がある。つまり、炉心溶融事故を想定すると、原子炉立地審査指針を到底満足することができなくなることが明らかであるため、既存原発を守るために新規制基準で原子炉立地審査指針を無視することにしたのである。
これは、「ルール違反だから、そのルールを廃止する」という考えによるものであり、これが科学的、技術的な論理に反するものであることは、明らかである。
次に、設計基準事故に共通原因故障が考えられていないことについて。
従前、原告らが主張するとおり、旧基準においても新規制基準においても、異常な過渡変化及び設計基準事故の安全性を検討する条件として、単一故障の仮定をとり、一つの原因で同時に多数の故障が起きる共通要因故障を想定した安全性評価はしないことにしている。
しかし、例えば、原子炉の安全に不可欠な非常用炉心冷却装置(ECCS)の高圧注水系が故障した場合、炉心に冷却水を送るには、低圧注水系を使う必要があるところ、そのためには、原子炉圧力容器がこれに接続する配管の弁を開いて、炉内の圧力を下げなければならない。このとき、弁も故障で動かなければ、炉心冷却システムは働かない。
新規制基準が引き継いだ単一機器の故障のみを前提にした設計は、このようなことが「滅多に起こらない」として無視しているのである。
新規制基準は、既存の安全設備では対応できない同時故障が起きた場合は、電源車や高圧ポンプ車などを持ち込むなど、主として外から人力で対応することにしているが、これらが奏功しなかったことは、既に福島第一原発事故で明らかとなっている。
また、新規制基準は、最悪の場合、フィルタ・ベントで格納容器内の圧力を下げて格納容器の破損を防ぐ一方で、一定量の放射性物質の放出を認めている。
しかし、放射性物質の放出抑制対策をフィルタ・ベントに頼ることは根本的な間違いである。仮にフィルタが機能しても完全に放射性物質を除去できるわけではない。そして、格納容器内の圧力が過大になって格納容器の外部の配管・電源の貫通部等が、破壊されると、放射性ガスは一気に吹き出すことになるのであるから、フィルタは全く役に立たないのである。
最後に、耐震設計審査の問題点について。
新規制基準において、耐震設計審査について規制が強化されたのは、主に次の4点である。
① 活断層などの露頭(岩石や鉱脈の一部が地表に現れているところ)直上に重要施設を設置することを明確に禁じた。
② 断層評価をより厳格にし、後期更新世(12~13万年前以降)の評価が明確にできない場合、中期更新世(40万年前以降)まで遡ることにした。
③ 起電車などを使って、敷地の地下構造を立体的に調べ、より精密に基準地震動を策定することにした。
④ 津波については、基準津波の遡上波を防ぐ、耐震性の高い防波堤や水密扉の設置を義務付けた。
しかし、これらについても、以下のような問題点が残る。
①については、活断層の「露頭」がなければ設置が許されることの合理的な理由がない。また、活
断層の「真上」だけでなく、活断層から一定の距離以内に重要施設の設置を禁止すべきである。
②については、「12~13万年前以降の評価が明確にできない場合」という曖昧な条件ではなく、一律に40万年前まで遡って評価すべきである。
④の津波対策では、波そのものだけではなく、船などの大型漂流物の衝突など考慮されていない。また、水密扉の開閉は自動化まで義務付けるべきである。
さらに、新指針では、基準地震動Ssで想定される地震動や津波の規模を超えるケースに関する言及が一切なくなった。この年以降、「想定外」の地震動や津波が何度も原発の敷地を襲っているにもかかわらずである。明らかな後退と言わざるを得ない。
以上、新規制基準は多くの問題点をあるので、仮に新規制基準を満たしたからといって、原発が安全であるということはまったく言えない。
11:14 裁判長:原告の主張ですが、被告側は?
被告・中電;原告への反論は検討する。
被告・国;現在、予定はない。
裁判長;予定された安全対策工事は?
被告・中電;安全対策工事をしている。
裁判長;工期は?
被告・中電;平成28年9月の工程を持っているが、流動的な側面もある。
裁判長;原告の補充の主張には従前のものもあり、新たなものもある。次回までの反論は?
被告・中電;次回までに提出できるものがあるかどうかを含めて検討したい。
原告・阿部弁護士;新しい論点を付け加えることは考えていない。すでに提出した書面の補充、追加分は考えている。8次訴訟に続いて9次訴訟も考えている。
裁判長;9次訴訟については、いつごろか?
原告・阿部弁護士;次回の弁論を決めてもらって、それに間に合うように提出したい。
11:16 裁判長;本日はここまで。次回は2016年2月22日(月)11:00より
11:17終了
11:28 地域情報センターで報告集会
司会・高柳昌子;司会の高柳です。田代弁護団長よりお願いします。
田代博之弁護士;
原発再稼働をおしあげようとする政府と自民党の動向は、九州や福井とかで頭をもたげており、看過できない厳しいものがある。政府が太陽光や風力とかにエネルギーを委ねても、原発エネルギーを平成30年までに2割を確保するという。東京の反原発の人たちが、首相官邸前できびしく頑張っている。17社の中電関連の株式会社総会が開かれて、その総会では原発再稼働を早く拡大せよと役員がつるし上げられるという要請も起こっていることとの対応として、憲法改悪の戦争法反対と同時に原発再稼働断じて許さないと、東京の民主勢力が大抗議行動を起こしている。
参加者の中では、福島原発の根本的な発生原因がいまだ解明されていないのに、なぜ原発再稼働を政府はするのかと、激しい声があると伝えられている。
静岡県では、県知事は、県議会で「私の目の黒い内には原発は動く気配はない」「任期中に再稼働は認めない」と公言している。「問題は、使用済み核燃料の保管に関して中電は、原発の収集処理に困惑していて、それにも関わらず再稼働を規制委員会に申請しているのは本末転倒だ」と指摘している。再稼働の状況は何も整っていないと、県知事は公言している。県民の運動が県知事や県議会をゆすぶって、再稼働を抑え込んでいる大きな流れができている。みなさんの署名運動が徐々に県議会を動かしている。
次に浜岡原発の問題について、(今年9月の)菊川市議会では、浜岡原発の再稼働の請願採択はしないと。しかし、同じ菊川市議会が意見書を全会一致で採択した。「市民の理解が認められなければ再稼働は認められない」と明言している。再稼働反対は、単に法廷内の閉じ込められた科学的論争だけでは封じ込めることはできない。法廷を包んでいる静岡県のそれぞれの地方自治体が住民の平和と安全、いのちを守るために、各自治体が議会を通じて再稼働を許すことができないという多数の決議をまとまれば、中電はいくら新規制委員会の同意があったとしても阻止することができる、そういう意味で、裁判所を包む広大な大衆的な裁判闘争をこれからも作り出し、発展していきましょう。
11:35 司会・高柳;次に、今日、準備書面について陳述された阿部弁護士と山形弁護士、お願いします。
阿部弁護士;
今日は、地震と耐震設計のことはよく分かりませんが、人の書いているものを参考にして書いてみました。原発の耐震設計は、過去に起きた地震に基づいて、どこにどの程度の規模の地震が起こるかをまず想定して、地震の規模が決まれば、それによって浜岡原発ではどの程度の地震が起こるかを予測する。最終的に基準地震動Ssと言っている。ところが、どこでどの程度の規模の地震が起きるかは、予測が出来ても、どのくらい正確に予測できるかというと、ほとんど決め手がないような状況だ。地震学者もそこまではなかなか言えない。ある程度、おおざっぱなところは言えても、それで十分かというと、そこまでは言えないと、みんなおっしゃっている。
なぜかと言うと、地震というのは、最近は地震動についていろんな計測器が発達していて、データがある。それは20年30年のことだ。それ以前、歴史が始まって、奈良時代・飛鳥時代から少し地震の記録はある。地球の歴史からみれば、ごく短い間のこと。地震は一万年単位で起きるかもしれない、千年単位で起きるかもしれないし、分からない。人間が全部記録しているわけではない。
だから限られたデータで予測しているにすぎない。普通の建物の耐震設計はだいたいこの程度だよという大ざっぱでいいが、原発は違うのではないかということを我々が一番言いたいところだ。原発事故は万が一起きたらとんでもないことになる。平均的な地震をとって、平均値の上のほうを取って、これで大丈夫だよとはいかないではないかと、書面に書いた。基準地震動が地震の平均像に基づいて作成されているということについては、3・11以降のいろんな決定でも言及されている。彼ら自身も平均的なことだと認めている。
入倉孝次郎先生という、地震動の予測をするレシピを作った先生がいて、先行する訴訟、静岡地裁でも証言している人ですが、その人が自分の作った強振動の予測方式についてどう言っていたか、さきほど法廷で読みあげましたが、もう一度読み上げます。これが要するに、今日のキモになります。
「基準地震動は計算で出た一番大きい揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「あくまで目安値。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、これは地震の平均像を 求めるもの。平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。基準地震動はできるだけ余裕を持って決めた方が安心だが、それは経営判断だ。」
こう言っている。だから基準地震動と耐震設計はおよそこの程度のものだと認識しなければならない。原発の耐震設計はこの程度でいいのかと。そうではないでしょうと。
福井地裁の樋口裁判長の判決をみても、自分は難しいことに踏み込んで判断する気はないと。これまで基準地震動を超える地震が5回も起きているではないかと。それで十分ではないかと。
ですから我々は細かい科学技術論争をやる能力もないし、泥沼にはまってもいけないと思う。原発の耐震設計はどうかを、裁判官に分かってもらえればいいのかなと思っている。
11:41 山形弁護士;
私の方からは、今回は新規制基準の問題点について主張しました。昨年も一度主張しています。問題点は4つありました。
まず、一点目は、立地審査指針が採用されていないこと。簡単に言うと、新規制基準以前は、原子炉立地審査指針があった。原子炉を設置する場合は、十分に一般住民の居住地などから離れている場所に作るようにという規定があった。実際にその規定が守られていたかどうかの微妙なところがあるが、一応そういった基準があった。新規制基準では、そういう指針の規制をなくしてしまった。その理由としては、その規定をそのまま当てはめると、既存の原発も作られなくなってしまうと。ルール違反を回避するために、そのルール自体を廃止すると。
次に2点目は、設計基準事故に共通原因故障が考えられていないことについて。
単純に、同時に多数の故障が起きることは考えられないと。このようなことは「滅多に起こらない」としている。新規制基準では、同時故障が起きた場合は、電源車や高圧ポンプ車などを持ち込むなど、主として外から人力で対応することにしているが、これらが奏功しなかったことは、既に福島第一原発事故で明らかとなっている。
また(3点目)、新規制基準は、最悪の場合、フィルタ・ベントで格納容器内の圧力を下げて格納容器の破損を防ぐ一方で、一定量の放射性物質の放出を認めている。しかし、放射性物質の放出抑制対策をフィルタ・ベントに頼ることは根本的な間違いである。
準備書面(5)でも主張していますが、仮にフィルタが機能しても完全に放射性物質を除去できるわけではない。そして、格納容器内の圧力が過大になって格納容器の外部の配管・電源の貫通部等が、破壊されると、放射性ガスは一気に吹き出すことになるのであるから、フィルタは全く役に立たないのである。
最後に、耐震設計審査の問題点について。
いくつか耐震設計審査について規制が強化されたのはあるが、充分ではないと。中身を具体的に述べると、(以下のこと)
活断層の「露頭」がなければ設置が許されることの合理的な理由がない。また、活断層の「真上」だけでなく、活断層から一定の距離以内に重要施設の設置を禁止すべきである。「12~13万年前以降の評価が明確にできない場合」という曖昧な条件ではなく、一律に40万年前まで遡って評価すべきである。
津波対策では、波そのものだけではなく、船などの大型漂流物の衝突など考慮されていない。
11:46 司会・高柳;ありがとうございました。参加者から質問や意見をと思いますが、その前に、事務局からの連絡があります。
落合勝二;
今日、満席でした。ありがとうございました。いつものことですが、法廷の中に入った原告の名簿を提出するのですが、私が名簿の原本を忘れてしまったので、名簿にもれなく記入してください。法廷に入った原告の方です。法廷に入らなかった人は書かないでください。
11:47 司会;では参加者から質問や感想、あるいは意見を自由に発言下さい。また弁護団から補足があればお願いします。
質問;原告、被告がそれぞれ裁判長のやりとり、どういうことか説明してほしい。
阿部弁護士;
最後のやりとりですか。裁判所の方から、中部電力に対して、補強工事をやっている。防波壁とか耐震工事、フィルタベントの工事もやっているが、その工事の見通し、進捗状況はどうかと質問をした。どういう意図があって質問したかはよく分からない。それに対して、中部電力は工事は継続中だと。平成28年9月に完成の予定であるが、どうなるか分からないと。
後は推測だが、工事が終わらないうちは、再稼働の手続きは先に進まないなと裁判官は聞きたかったかもしれない。
中部電力がさらに主張立証するかどうかについては、するかどうかも含めて検討すると。国はやらないと。他の浜岡原発のことについては、北村弁護士からご報告いただければと思いますが、東京高裁は進んでいないと。本庁の方はここよりは進んでいますが、4号機の申請を上げましたが、審査の一定の見通しも立っていないとのことで、裁判を大至急急いでやるという状況ではない。
大橋弁護士;北村弁護士から、二つの裁判のことを、先にお願いします。
11:50北村弁護士;
名古屋から来ている北村です。浜岡の二つの裁判、一つ、2007年の地裁判決受けて東京高裁でやっている裁判は、3・11後、裁判長がこれはという反応を示していたが、その裁判長が代わって、のど元過ぎればということで、どこも何人か裁判官が出てきていて、形だけの一つ、二つの進行協議をしている。最終的には、浜岡原発が審査を通ればそこから考えると。事実上止まっている状態。
静岡本庁では、原告の主張を終えて、不十分なところを出して、争点整理をしている所だ。
ついでに全国の状況をお伝えしておきます。脱原発全国弁護団があって、全国の原発を立地地域で差し止めようと、いま東通と女川原発をやっている。
時間がないのでポイントだけ言うと、3月に 大きな動きがある。それはなぜかというと、一つは伊方原発、審査があって、松山地裁で、この間の福井のように証人尋問なしで終えようとしている。静岡本庁の方は、裁判官の様子をみると、証人尋問するような感じの雰囲気があり、そうすると、確実に一年以上はかかる。伊方原発は確実に3月くらいに判決があるのではないか。
期待できるのは、高浜原発の大津地裁、実は去年の11月に敗けた判決、仮処分で敗けた判決、中身は勝っていて、基準地震動で、5回のそれを上回る地震があると裁判官が認めた。しかし当時、高浜原発は新規制基準のOKが出る直前で、裁判官が自分で責任をかぶりたくないので、そんなあやふやな基準地震動ではOKしないだろうといって、わざわざ裁判所が差し止める必要はないと。
最後にどんてん返しをした。弁護団は普通であれば、抗告といって上に行ってやるのだが、また同じ裁判官にやらせたらどうかと(2015.1.30大津地裁に第二次仮処分申立て)。中身で勝っているので。それで審査がOKになったので、3月に(判決が)出るので、同じ裁判官で前も言っただろうということで。
最後に、皆さんに注目してほしいですが、福島原発告訴団というのがあり、しばらく前に、東電の中心人物の副社長がこんなひどいことを起こしても刑事責任を問われないのはおかしいと。工場が火災を起こして爆発しても過失責任が問われるのにと、告訴したいと。検察官は3・11後は一生懸命やっていたのに、自民党政権になったり、国や役所の圧力で、検察官は途中で投げた。起訴しないと。しかし検察審査会がこれは起訴すべきだと。そして検察官がもう一度起訴しないと。再度検察審査会が、17人中8人くらいが必要だけど、ぎりぎりで通った。これはものすごく大きなことで、つまり、弁護士が専門家で3人の優秀な弁護士が検察官僚の役割を担って、これまで検事が集めていた全部の資料を使うことができて、そこでいろいろ明らかになっていて、東電は大津波が来ることを知っていたのではないかと言われるが、知っていたどころか、東電は全部計画して書類を出して、秘密資料としてそれを回収して、やりたくないので、専門家で2~3年かけて調査してもらうかなと。そういうところまで全部裏工作でやっていることが明らかになった。これを我々が使えると思う。是非皆さん、福島原発告訴団というHPが更新に次ぐ更新をされていて、面白い情報がたくさん出て、そこから我々の仲間が一生懸命解きほぐしてやるということですので、皆さんご期待ください。
11:58 司会・高柳;ありがとうございました。それでは感想や質問があればどうぞ。
質問;いろいろありがとうございました。様子が分かってきました。当日、文書を出せばおしまいになるところを、わざわざ、弁護士さんが我々の主張はこうなんだと、裁判官に聞かせるということは、傍聴者のみんなに裁判の進行を明らかにしていくと。その意味では、意義づけを何度もやってきたと思う。今日聞いていて実は、高齢者の人も多いのですが、弁護士の方の話が迫力がなくて、聞きづらくて、もっとしっかり大きな声で言ってくれないと、傍聴者に聞こえていない。それはまずい。もっと自信を持って、こうなんだというように言ってほしい。
最後に、被告側が次回の書証で、反論書を出さないと言うのは、やる気がないのかなと。弁護士さんの評価を聞きたい。
12:00大橋弁護士;やる気がないというわけではない。向こうも死活問題なので、浜岡を再稼働をしようと、一生懸命になっている。やる気はあるけど、いま様子をみて、今の段階で進めていいのかどうかと。規制委員会も審査中で、それを待っている。
我々もそれではどんどん早く進めていいのかと。ただ、今の世の中の動きもあるし。今日も、事前に20分~30分と請求しているが、裁判所はある意味ではいやいやながらやっている面もある。15分くらいでという。時間もあるので、終わって進行協議もやらないので、もっと時間を取って、既存の原告の意見陳述もやらせばいいのに、全体の裁判ではそういうものを規制していこうという動きがある。国が来ていて、国は何をやるのだと。本当だったら、あなたの言う通り、法廷のなかで、それぞれが意見をたたかわせて、争点を明確にしていくというのが分かりやすい。伝統的に日本の裁判所は、時間のかかることをやっていない。そういう意味ではここではやっている方だ。それを制限しようとしている。我々はそれに対してたたかっている。まだ浜松の裁判所はそれなりにいい。ただ裁判官がいいというと、それは別だ。次回が2月というのも、なぜだと疑問にもなる。
ただ、さきほど田代弁護士もおっしゃっていましたが、法廷だけでたたかっているわけではない。今日も多くの方が来てくれていて、これが大きな力になる。また署名もやっている。そういうことを含めて、あの手この手を使って、法廷闘争も一つの再稼働をさせないたたかいだ。表面的に事象だけを追っているのでは敗北感を感じられるかもしれないが、必ずしもそうはなっていない。皆さんの力は大きい。また、今日のお二人の、阿部さん、山形さんは紳士なので、おとなしく言っていましたが、中身はそうとう迫力があった。私も横で聞いていて、迫力があった。気迫は外に出ているものだけでなく、内容でも理解をしてほしい。
司会・高柳;それでは他には。
阿部弁護士;新しい弁護士の紹介を。
青柳弁護士;静岡合同法律事務所に入りました弁護士の青柳(あおやぎ)と申します。今年の1月に弁護士になりまして、この弁護団に入れさせてもらいました。頑張っていきたいと思います、よろしくお願いいたします。
司会・高柳;他には。
発言;田代弁護士も、大橋弁護士も、法廷内外のたたかいということをおっしゃっていましたが、浜松では4年前の5月から毎週日曜日の午後の一時間、ずっと署名活動をやってきた。最近でも10名くらいで1時間署名をやって150名を超える署名が集まる。県外の人も含めてその思いにはすごいものがあると感じている。これは11月17日に県知事あてに浜岡原発の再稼働は認めないでほしいと、署名を一次分として提出する予定ですが、その後も、来年の9月の中電の再稼働に向けて、さらに一年間署名活動を続けてやろうと決めている。地域でも駅前でも署名をやっていますので、皆さん方もご参加ください。
また、毎週金曜日、首相官邸前の反原発のレッドウルフさんたちの行動に呼応して、全国でもやっていますが、浜松でも、6時半から7時半の一時間、毎週金曜日に、自主的に、警察にも届けず、自分の意思のある方が集まる。代表者もいませんが、金曜アクションとして「さようなら原発の夕べ」を駅前で、替え歌やスピーチをやったり、雨だろうが、風がふこうが、若い方がずっと休まずに粘り強く頑張っています。
時間の取れる方は、18時半からの金曜アクションと13時から14時の日曜の署名に、参加いただければありがたいです。このような法定外の粘り強いたたかいが大事かなと思います。
司会・高柳;では、会代表の林先生、お願いします。
2:07;林弘文さん;
今日はご苦労様でした。10月26日、伊方原発3号機の愛媛県知事と伊方町長が再認めることに対して、昨日、それに抗議する集会が松山市で開かれた。伊方原発は伊予灘に面していて、四国4県だけでなく、山口、広島、岡山の人たちも熱心に見守っていますが、13万の署名を集めて提出した。伊方原発を止める会の和田さんから一昨日、メールをもらった。
静岡でも11月17日に県知事に署名を届ける、いま17万の署名を集めている。私の思いですが、県知事だけでなく、県議会議員にも、市議会議員にもアプローチする必要がある。
浜岡原発について、少し宣伝させてください。昨年の1月から編集委員会を作って「浜岡原発交渉記録」をようやくまとめました。大橋弁護士にも届けました。弁護士さんには資料として使ってほしいと進呈しています。原告の方々には一冊1000円で買ってください。これにはこれまで浜岡原発でどんな事故・故障が起こったか、出来るだけ多く盛り込んでいる。196ページのもので、いろんな資料を載せています。
名古屋大学に坂田昌一先生がいました。先生は、研究する場合にどんな害があるかと聞かれて、三つの害があると言われた。「歴史の忘却、固定化、経験主義」。
歴史の忘却は、浜岡原発にも当てはまり、事故のことで言えば、浜岡原発の場合には、圧力容器の内側に網目状のひび割れが起こった。かなり前だった。中電の交渉で、彼らはどういう状態かを説明した。それは、放射能のセンサーが下がったところで、中から水を抜いて、燃料棒を抜いて、そして上から厚い鉄板を3枚降ろして、そこに作業員を下して、それをグラインダーで削る作業をやらした。3分間以内で作業して人海戦術で削り取ったと説明した。気になったので、私は何回も質問した。いや問題ないよと説明をした。
少し前に中電の人にこの問題を持ち出したら、若い中電の幹部の人たちは、こんな事故はなかったと。私は唖然とした。やはり忘れ去られた。記録は重要だ。
たとえば、今の政府は、デマ、関東軍の南京の大虐殺を否定する動きが強まっている。ああいうことはなかったのだと平気で言う人がいる。歴史の事実を忘れてはならない。
過去に、浜岡原発でどういう事故があったのか、どんな欠陥があったのか、多くの人に知ってもらいたい。
最近、県と交渉する時、紙で資料を出すことをしない。ヨウ素131でも、言うから書いてくださいと。昔は紙で資料を提供していた。彼らも自信がないのか。こんなことが起こっている。
12:14司会;ありがとうございました。では最後に、事務局長からお願いします。
落合;大変ご苦労様でした。もうすでにお分かりの通り、浜岡原発は3号炉、4号炉ともに、原子力規制委員会に適合審査申請をしている。4号炉は昨年2月、3号炉は今年6月、再稼働に向けて急ピッチで審査が行われている。来年の8~9月ごろに結果が出るのではと思われる。それは中電が耐震補強、津波対策の工事を完了をさせるとなるので、その後は大変な状況になる。
ところが来年7月は参議院選だ。法廷の内外でのたたかいが求められている。運動を大いに盛り上げていく。先ほどから出ている、再稼働の承認をしないでくださいという県知事あての署名を11月17日に、第一次要請として提出して要請を行う。それと各市への要請をしていく。17日の前日に浜松の市長に要請に行く、浜松の市長は原発容認ですから、面白いことになるかなと思う。
それから、原告をもっと増やしていく。原告1000名とまではいかなくても、次回の1か月前に出さないと意見陳述が出来ない。その時期に出していきたい。よろしくお願いします。
これまで633名、さらに21名が加わり、合計654名です。
それから、次の口頭弁論に備えるために、これはすぐの話ですが、今月の18日に、弁護団・原告団会議を18時から国労会館で予定しています。よろしくお願いします。
質問;浜松市長さんには、大勢で押しかける方がいいですか。
落合;30人くらいは入れると思う。 12:20終了(文責;長坂)