雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

本と映像の森64 旭爪あかねさん著『稲の旋律』

2010年07月26日 05時07分59秒 | 本と映像の森
本と映像の森64 旭爪あかねさん著『稲の旋律』新日本出版社、2002年4月20日初版、281ページ、定価1800円+消費税

 「旭爪」は「ひのつめ」と読みます。
 現代日本を題材にした小説ですが「書簡体」ということが変わっています。ようするに「手紙」だけで構成された小説と言うことです。

 最初の手紙は、主人公の藪崎千華さんが、自宅の東京都から千葉県まででかけて見もしらぬ人の田んぼに置いてきたペットボトルの中の1通の手紙です。

 30歳になる独身女性の千華さんは、いわゆる「ひきこもり」で見知らぬ誰かに、助けを求めル手紙をかき、それが田んぼの主の独身男性・広瀬晋平が見て質問の返事を書いたことから物語が始まります。
 
 なぜ「稲」かというと、広瀬晋平さんの職業である稲作りから来ているのですが、なぜ「旋律」なのかというと、千華さんがピアニスト志望だったことから来ています。
 
 自然と農業と文化と人間の織りなす、とっても素敵な小説です。

 これが昨年、「アンダンテ」という映画になって、この秋、浜松でも見られるようです。

 基本テーマは「だいじょうぶ」「ころんだっていいんだよ」と。
 この「だいじょうぶ」っていう言葉で、ぼくがすぐ連想したのは、マンガ「日本沈没」です。
 「日本沈没」の基本テーマも、同じ「だいじょうぶ」「他人に助けを求めていいんだよ」ということでした。

 逆に言うと、現代の日本人って、変なプライドばかりが高くなって、他人にSOSが出せる人が少なくなっているからこそ、こういうテーマの小説やマンガが感動を呼ぶと言うことでしょうか。

 おれは、みんなを指導するリーダーだとか、思い込んでいる人ほど、他人に助けてもらうことはできなくて、「助け合い社会」なのもわからなくなっているんでしょうね。
 自分がそうならないように、変質しないように、よく自戒していないと。