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動画道③ 痛快な展開『007カジノ・ロワイヤル』

2010年05月23日 22時23分12秒 | Weblog
     
 007シリーズ全作品(22作品)の中で、私の一番好きな作品は、6代目ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグが主演している『007カジノ・ロワイヤル』(2006年イギリス制作)である。確かに、007シリーズは、全作品とも、非常なお気に入りではあるのであるが、このダニエル・クレイグの精悍な演技には、心底感激しているのである。「00(ダブルオー)」という゛殺しのライセンス゛を得る過程の設定であり、これまで演じてこられた完成されたジェームズ・ボンドではない、非常に人間らしい面(弱さや恋愛に純粋な面)が、最も色濃く出ている作品なのである。こんなところに、ニヒルで格好良いボンドではなく、生きること、職務を純粋に全うすることへの悩みを強烈に醸し出している。こんな点が良いのである。また、奇抜なシーンも多くなく、むしろ、これまでの作品の中で、最も現実的な映像展開と言える点が、これまた、ぐっときてしまうのである。
 この作品には、新兵器は登場しない。当然にして、「00」への昇格前からの物語展開であり、完成された「007」ではないためであるが、この点が、非常にリアルな映像に仕上がっていると感じる。冒頭では、敵に雇れている爆弾製造の男を追いかけて捕まえようとするシーンが展開する。これまた、工事現場の鉄柱や巨大クレーンを伝い走りする。最後には、大使館内でプロパンガスを撃ち抜いて大爆発させる。このシーンだけでも、これまで歴代のボンドには出来なかった素晴らしい撮影であろう感じる。そして、マイアミ空港でのバトルも凄まじい。燃料を積んだタンクローリーの中でのバトルは、息を呑む攻防で、非常に緊迫した戦いとなっている。最後には、敵の仕掛けた小型時限爆弾を、敵自身の体に装着し、ふっ飛ばしてしまうという、どんでん返しもやってのける。こんな点は、これまでにない、非常に卓越したバトル・シーンなのである。
 この作品での、大きな見所は、カジノでの静かな、しかも激しい駆け引きの攻防。この戦いには、息を呑んでしまう程の、緊迫感がある。ドライ・マティーニの中に盛られた毒薬で、絶命寸前に追い込まれるが、MI6やヴェスパー(財務省のエージェント女性、゛宵の明星゛の意味、エヴァ・グリーンが演じる)の協力で、九死に一生を得る。「今の賭けで、命を落とすところだったよ」とポーカー・ゲームに戻るなり、敵であるル・シッフルに皮肉たっぷりに言うボンドなのである。この時は、アストン・マーティンDBSに装備されていた薬物判定機材と解毒薬・心臓微細動電圧機が奏功するのである。
 この作品のボンドガールは、ヴェスパー(宵の明星、性愛の女神の隠語)役エヴァ・グリーンである。この女性は、歴代ボンドガール(グラマラスな女性)とは異質であり、スレンダーな知的美人と言える。ボンドと初めて会った時に、お互いの素性や趣味、考え、生い立ちを言い当て合うのであるが、この会話が中々の迫力がある。冷静に相手の状況を観察し、的確に指摘するのである。このやり取りの鋭さには、しびれてしまう。
 最後のローマの旧邸宅が崩落する凄まじいシーンは、実際のものではなく、1/3の実物そっくりな模型を崩落させ、特殊撮影したものであるが、実際の建物が倒壊して川の中に沈んでいくような、迫力を伴った映像となっている。
 今回の作品の主題歌「You Know My Name」をクリス・コーネルが歌うのであるが、歌詞といい、音楽のリズムといい、実にマッチしたものになっている。主題歌に相応しいと感じる。
 これだけの総合的に完成度の高い作品は、歴代作品の中でも、随一であろうと感じる。

<!-- 「007 カジノ・ロワイヤル」 -->

動画道② 時代劇コメディの原点「てなもんや三度笠」

2010年05月23日 01時46分23秒 | Weblog
           
 この「てなもんや三度笠」は、最高に良くできた時代劇コメディだったのである。時代劇風のお笑いコメディ番組では、この「てなもんや三度笠」に勝るものは、存在しえないのではないかと感じる。
 昭和37年(1962年)5月6日に開始し、昭和43年3月31日まで、約7年にわたり放送された長寿番組。全309回の平均視聴率が、東京で26.6%、大阪で37.5%を記録、最高視聴率は64.8%にまで達した、驚異的コメディ番組。制作は大阪の朝日放送。提供は大阪・堺の前田製菓。主演だったあんかけの時次郎役の藤田まことが、「俺がこんなに強いのも、当たり前田のクラッカー」というフレーズが全国的に大流行し、前田製菓は全国に知られる菓子メーカーとなった。
 この「てなもんや三度笠」の始まりは、前田製菓のCMの後、鐘の音が響くと辻堂から、主人公・あんかけの時次郎(藤田まこと)が登場。「あっしは泉州は信太の生まれ、あんかけの時次郎。義理に強いが人情に弱い・・・」と定番の決り文句を言っている途中に原哲男が登場、2人のかけ合いが始まり、「俺がこんなに強いのも、当たり前田のクラッカー」と締めると、オープニングテーマが流れ、「てなもんや三度笠」が始まるのである。
 旅人の珍道中なので、野次喜田の珍道中的な面白みがある。主演は、あんかけの時次郎(藤田まこと)と小坊主・珍念(白木みのる)。この二人に、財津一郎等の役者が加わり、面白いストーリーが展開するのである。この番組では、必ず、要所に当時の流行している歌手が特別に出演することも、人気のひとつだった。水前寺清子、美川憲一等が時代劇の格好で登場し、観客の大きな拍手を受けるのである。また、お笑いのてんぷくトリオ(三波伸介他)も出演する等、豪華なコメディ陣にて進行する画期的な番組であった。
<逸話> 
  • セットに考えられないほどの多額の費用を掛けて臨んだ為に、放送作家や俳優の苦労は並ではなかったと伝えられる。「視聴率は取れて当たり前という時代だったので、当時のギャラは初任給よりも少ないんじゃないか」と、藤田まことが後にコメントを残している。また、ゲストに鶴田浩二に来てもらった際、藤田が「鶴田さんのギャラはなんぼですか?」と聞いたら、スタッフに指1本出され「これだけや!」と言われた。つまり、藤田の1年分という事で、愕然としたという。
  • あまりの人気に「映画版」が何本も作られたが、映画製作中にTVシリーズが休みになるわけではなく、藤田まこと等の役者陣は映画とテレビとの掛持ちで、おそるべき忙しさであったという。
  • 1967年3月19日放送、第255話「上野の戦争」の官軍と彰義隊の砲撃戦シーンでは2トンの火薬が使用されており、カメラが衝撃で何度もブレている。
  • 東京からの出演者も多く、東西タレント交流のきっかけにもなったが、現在の様に航空機も発展しておらず、さらに新幹線が出来るまで(当時は工事中)は、特急列車での移動しかなく、東京・大阪間は早くても6時間30分はかかった。
  • 制作局のABCは当時TBS系列だったが、その後MBSとのネット交換により、テレビ朝日系列(当時は、NETテレビ系列)にネットチェンジしている事から、テレビ朝日が開局30周年記念番組の中で、系列局制作の過去の番組として紹介したことがあった。なお、その番組の中では、MBS制作の『ヤングおー!おー!』(NETテレビ系列→テレビ東京(当時は、東京12チャンネル)系列→TBS系列)も紹介していた。
  • 藤田まことは後年、前田製菓のセサミハイチのラジオCMに出演し「当たり前田のセサミハイチ。最近は、これですわー」と言っている。本番組のパロディである。 

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