グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

獣害を防止することは感染症防止にもつながる。

2020-11-13 17:28:54 | Weblog
​​獣害を防止することは感染症防止にもつながる。

たとえば豚熱や鳥インフルエンザの発生源として考えられうるのは
まずはカラス。死んだイノシシの臓器などを咥え運ぶことで、その
カラスの生活圏のなかでウイルスが拡散することになります。その
ウイルスにふれた小動物たちがこんどは新たなウイルス運搬者とな
って、侵入防止のために張られた網の目をかいくぐり、ウインドレ
スな畜舎にさえウイルスの侵入を許す・・・

などといった鳥類やネズミなどの小動物が鳥インフルエンザや豚熱
発生の原因にもなっているケース[こちら]をとりあげましたが、そ
れに加えてヒトの生活圏へのイノシシやシカ[クマも]といった大型
の哺乳類の侵入も​獣害や感染症発生の原因となります。

ここでかんがえねばならないこと、それはなぜ、なにゆえ山の動物
たちは人家近くに寄ってくるのか・・・ということです。

その答えは簡単です、それはがあるから。

栽培されている農作物であれば、たとえば侵入防止用の電気柵や網
などが設置されているのでしょうけれど、収穫をおわった圃場の放
置状態の取り残しの作物や作物残渣の場合はどうでしょう。

田にはヒコバエ、畑には取り残しの農作物、そして最近では過疎化
で人のすまなくなった家屋に植えられている柿やクリ、さらにはミ
カンなど、食料がいっぱい。このような状態では人家ちかくへ動物
をよびこみ餌付けしているようなものではありませんか。

ということで巷でよく啓発されている作物残渣や放置された取り残
し作物のはなしではなく、ここでは作物全国には膨大な面積がある
とおもわれるヒコバエのはなしをとりあげてみました。田起こしの
時期でもありますし、過去分ですがよろしかったら。



『獣害を防止するためにも田を起こそう』

対策が功を奏して減少しつつある鳥獣による農作物被害。農水省発表に
よるその被害額は こちら ↓。

 鳥獣による平成29年度の農作物被害

  被害金額が約164億円で前年度に比べ約8億円減少(対前年5%減)、
  被害面積は約5万3千haで前年度に比べ約1万2千ha減少(対前年
  18%減)、被害量が約47万4千tで前年に比べ約1万3千t減少(対
  前年3%減)しています。
  主要な獣種別の被害金額については、シカが約55億円で前年度に
  比べ約1億円減少(対前年2%減)、イノシシが約48億円で前年度
  に比べ約3億円減少(対前年6%減)、サルが約9億円で前年度に
  比べ約1億3千万円減少(対前年12%減)しています。

減りつつあるとはいっても、まだまだ大きな被害。動物たちとの良い
関係を保つためにも、獣害はなるべく減らしてていったほうがよい。

そんな獣害の原因ですが・・・ 鳥や獣などの動物を呼び寄せている
一番の原因は、 ひこばえ にある と、10年ほど前から いわれ
はじめました。

ひこばえとは収穫後の作物の切り株や根元から生えてくるイネの若芽
のこと。とくにイネ刈り後の水田に残っている切り株から生えてくる
ヒコバエが要注意です。栽培しているお米や野菜とちがって、放置さ
れているひこばえなら、ヒトは 動物が食べてもさほど気にならない。

こういった 心のすき間に、動物達が忍び寄る のです。

ちなみに

 10ヘクタールの田んぼのヒコバエなら、
 100頭のシカを ひと月養えるほどの餌となる


というデータがあります〔1ヘクタールでは10頭・10aで1頭の
割りになりますよ〕。つまり ひこばえの放置は、ある意味で動物の
餌付けをしているもの
 と 考えなければなりません。

そんなひこばえが生えてくるのを防止するには、収穫後のこまめな耕
運が効果的
です。田を起すことで、株を土中にすきこみ、ひこばえが
生えてくるのを予防するわけですね。

そうすることで 動物たちが集落に近づかないようにする。

ということで今回は、獣害被害の多い集落では田の耕運といった農業
の基本的な作業ををあげて励行することが、まずはなによりの獣
害予防方法となり、それはまた結果的にヒトと動物との良い関係性を
構築することになるというおはなしでした。


晴れ バインダーで刈られた長いままのワラの場合は、大雨などで
  田から流出すれば、排水路を詰まらせることにもなりかねま
  せん。
  水害を予防するという観点からも、田起しは重要になります。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」​