シカについての2005年分の回の再録です。この回を掲載したころ
は山あいの里山での被害が話題になっていましたが、いまや宮崎県の
沿岸部を走る国道付近の田畑でもみかけるようになってしまいました。
まさかこんなに日常的にみかける動物になってしまったとは・・と、
いまさらながらにびっくり。・・・ということで、よろしかったら。
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『日本の山/生態系破壊[2005-06-20分再録]』
山あいの観光地でシカをみかけられたことはありませんか。宮崎の例
でいうと、えびの高原などといった人の多い観光地。そんな場所で、
以前はめったに見れなかったシカの群れとの遭遇の機会が多くなりま
した。
一見ほほえましい光景ですよね。
なんといっても愛らしい瞳をもつシカですから。
しかし、その可愛らしい外見とは うらはらに、シカの成体1頭は体重
が60-70キロにもなるという大食漢の草食獣なんです。
農作物・植林された苗・さらに木の皮を集団で食べ尽くすシカの群れ。
宮崎県南西部における生息密度調査では、目標生息密度の1平方キロ
メートル当たり・5頭に対して、40頭近くの生息が確認されていま
す。
これでは農作物被害はおおきくなって当然ですよね。
また、シカ大繁殖の影響で、霧島屋久国立公園内での 草地を餌場や
巣にして生活している野鳥などの減少が確認され、併せてシカの食害
による稀少野生植物絶滅も報告されてくるようになっています。
このように 餌に対して適応能力の高いシカが増えているのは全国的
な現象。
なかでも被害の大きいのは、東京都。都内に生息するシカは推計2000
頭と10年前の約5倍に増えているといいます。。食害で裸地化した森
林は奥多摩町内の約86ヘクタールにものぼるのだとか[こうなると・
・・奥多摩の森林は、東京の水源地ですから、その影響が気になるよ
うにもなってきますよね]。
こういったシカの森林食害についで、もっとも被害が大きいのは
やはり農業の分野です。そのために柵やネットで畑を囲っている里山
がいかに多くなってきたことか。。
特別な山奥の話ではなく、例えば宮崎県では、幹線県道沿いの田畑に
さえ、柵やネットがあることは見なれた光景になってきました。畑だ
けではありません。牛の飼料畑や[食べないのにシカが遊びで落とす
らしい]シイタケのほだ場も同じ。
被害の大きい地域では、いまや保護されているのはシカではなく、ネ
ットや柵のなかでほそぼそと農業を続けて行かねばならない地域住民
・・といったかんじになっていますよ。
『シカにやられるので、近所でみな畑をやめてしまったら、赤肌の土
地になってしまった。土砂崩れが怖い。』
『山あいで農業で生活しているにもかかわらず、シカの食害のせいで
野菜を買わねばならなくなった。』
と、表情を曇らせているのが現状なのです。
国は野生動物政策を 「保護から管理」 へと転換し、鳥獣保護法を
改定しました。宮崎県では2000年より特定鳥獣保護管理計画を作成。
シカの頭数調査を行い狩猟の規制緩和や害獣駆除で頭数管理を強化中
です。
ということで今回は[昨秋以来のクマ被害がクローズアップされてま
すが]いましたが、ある意味クマよりおそろしいシカの環境被害につ
いてのお知らせでした。
◎ 霧島屋久国立公園内でしかの影響で減少している野鳥には、
宮崎県の希少種であるヤイロチョウや植物ではミヤケイワ
ヘゴやキリシマタヌキノショクダイなどといった宮崎県固
有種も含まれるといわれています。
「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」