特定秘密保護法が今月10日に施行された。昨年この法律を巡り朝日新聞などが法案阻止のため自分たちのイデオロギーに都合の良い主張をする学者やジャーナリスト、知識人、芸能人を総動員してネガティブキャンペーンを張ったことを思い出す。今は選挙期間中ということもあって、昨年ほどではないが、施行に批判的な論調は相変わらず喧しい。
こんな時期にある若手の憲法学者がラジオ番組(大竹まことゴールデンラジオ)に出演して、この法律を冷静に分析し、なかなか含蓄のある発言をしていたのには感心した。木村草太首都大学東京の木村草太准教授(34)だ。東京文化放送で大竹まことがパーソナリティを務める番組だが、この番組司会者はアシスタントの町亞星ととも左翼リベラル色が強い。特定秘密保護法は天下の悪法だとでも思っているようだが、木村准教授はそんな番組の意向とは関係なく持論を理路整然と述べている。その発言内容の肝心な部分を引用しておく。
この程度の法律でメディアや市民が過度に萎縮してしまうことが一番怖い。この法律の適用対象は非常に狭い。スパイ活動をしない限りでこの法律で捕まえることはできない。だからメディアや市民はこの法律を気にすることなく取材し報道し表現していい。今イメージだとこの法律が何でも秘密にできる、何でも取材したらアウトになってしまうというイメージで語られている。そのイメージのままだと法律の内容と無関係に市民の自由が萎縮してしまう。これが一番怖いというふうに感じている。
…この法律ができてたとえば外務大臣や防衛大臣にちょっと突っ込んだ質問をするとまずいんんじゃないかという空気にどうもなっている。でも外務大臣や防衛大臣は質問すること自体はこの法律では全然咎められない。すごく限定が掛かっていて漏洩するとわが国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある、漏洩すると安全保障がめちゃくちゃになるような自衛隊の暗号とか通信機器の性能とかというレベルの情報については守りましょうという法律なのだ。
敢えて特定秘密と指定されたものだけであって秘密に指定されただけでは特定秘密にならない。自衛隊幹部の不祥事とか特定秘密にしてもその指定は法律違反で無効になる。それを取材したり報道したりしても裁判所はそんなもの処罰できないというはずの法律だ。
…(この法律を監視する機関が政府とは身内・同類だという批判に対して)第三者機関には限界がある。大事なのは第三者機関ではなくて、安全保障に著しい支障を与える恐れがあるということを裁判所が認めない限り指定をしても無効であるということだ。第三者機関をどうこう言う前に、この最後の大事なハードルがあること、この原則を取材をする側もしっかり理解してほしい。
…法律で縛って裁判所が縛ろうとしても行政が先に進んでしまう懸念はよくわかる。法律の条文を無視したり曲解して物事を進めてしまうな時、市民の側が変なことを許さないぞという姿勢を示し続けるしかない。市民が力をつけるためには強い気持ちと勇気が必要だし、それに加えて正しい知識が必要だ。特定秘密保護法のことを知らないと法律違反だという声が市民から上がってこない。知識を持たないということは市民が自分から武器を放棄するに等しい。ここは冷静に自分の権利のあり方を十分認識して欲しい。
木村准教授が特定秘密保護法を「この程度の法律」と言い放ったのには少々驚いた。彼が何度も指摘するように、「安全保障に著しい支障を与える」場合に限定されたものであるというのがこの法律の本質ということだ。その点をメディアが敢えて意図的に隠そうとしているのではないか。
彼は後半で市民側に「法律の正確な知識を持つ」ことの必要性を強調している。たとえば安全保障に限定された法律だという認識である。しかし、特定秘密保護法を批判する勢力が果たしてどれだけこの法律を理解しているのだろうか。朝日新聞が盛んに喧伝する「自由が失われ戦前のような暗黒時代が到来しかねない」といったプロパガンダは、それこそ「自分の武器」を放棄する行為ではないか。木村准教授の発言で改めてそんな印象を強くした。